怖い絵展。。。想像によって恐怖が生まれ、恐怖によって想像がはばたく
友人に誘われて、兵庫県立美術館の「怖い絵展」を観に行ってきました。
いやはや・・このポスターからして十分怖いです。。
*この展示会は残念ながら、神戸会場と東京会場のみのようです。
ネットからいくつか絵をご紹介しましょう
「死の島」
舟が棺を乗せて島に向かっています。島にはこの棺を埋葬するための穴があり、つまりこの島は墓地だということです。ドイツで評判になり、ヒトラーもこの絵を持っていたそうです。
「オデュッセウスに杯を差し出すキルケ―」
ギリシャ神話に登場する魔女?キルケ―は、やって来たお客に飲み物を勧めます。
後ろの鏡には、英雄オデュッセウスが・・。
どこが怖いの?
この神話では,キルケ―から飲み物や食べ物をもらった者は豚に変えられてしまいます。豚が3匹いるのがわかるでしょうか?
まぁこの辺は、神話の世界で、物語のように読み解くことができますが・・
もっとも怖いと思ったのはポスターにもなったこの絵。
これはある歴史の一場面を描いた絵。事実に基づいた絵なので怖いのです。
「どうして?」
何のための目隠しでしょうか。彼女は16歳。
中野京子先生の解説を・・。
この絵には一度見たら忘れがたい力がある。主役の圧倒的存在感で成功する舞台のようにジェーン・グレイの清楚な魅力が画面の全てを決している。
残酷な運命を前に怯えるでなく、怒るでなく、周りの悲嘆に動揺するでなく、覚悟を決めて死につこうとしている少女。その儚い一輪の花白い花のごとき姿、散る寸前のにおい立つ美しさに胸を打たれずにおれない。手探りしている首置台に触れれば、司祭の力を借りて身を伏し、処刑人の大きな斧の一撃を受けるのだ。
下に敷かれた藁は夥しい血を吸い取るためのもので、首が転がるさまをも想像させ、戦慄させる。処刑の理由は反逆罪。ヘンリー8世の姪の娘として生まれたばかりに政争に巻き込まれ、望みもしない王冠を被せられたあげく、わずか16歳で死なねばならなかった。王冠をかぶっていた時期はさらに短い。悲運のジェーン・グレイの異名は「9日間の女王」(中野京子の作品解説による)
「レディ・ジェーン・グレイの処刑」
死刑執行人の表情。
こういう場面で、彼はどう思っているでしょう。残酷な役目を押し付けられて、この役もたまったものではありません。死刑廃止論者ですが、冤罪の他に、死刑執行人の残酷な仕事によるストレスも考えてみるべきだと思います。
全体像です。
怖い絵は怖がらせるのを目的に描かれた神話や地獄、魔物、また「死」を扱ったものなどがありましたが、人間の残酷な面を思い知らされたものも多々ありました。
本当に「怖い」のは、人間の内に潜む残酷な心なのかもしれません。
戦争になって、人を殺すことが目的になってしまうと,残虐の限りをし尽くす人間の有り様も本当に怖いものだと思います。