安倍首相の敵を作り煽る手法は戦前と酷似

安倍首相の敵を作り煽る手法は戦前と酷似

 安倍政権によって日本は既にファッショ政治に入っていてそのエンジンは出力を上げつつあります。
 8日の記事安倍首相にあおられて 韓国憎悪に向かう日本の世論」でお伝えしたとおり、安倍首相が主導している「韓国制裁:韓国をホワイト国から外す」ことに国民の64~68%が賛成し、内閣支持率は一挙に60%に上がりました。
 
 いきなり輸出を規制された韓国側は撤回を求めて、民衆がソウルの日本大使館周辺で安倍政権を糾弾するデモを展開したり、日本品の不買運動や日本への観光旅行を抑制するなど、反発は強まる一方です。当然の成り行きで日本の受けるダメージは決して小さくはありません。
 誰がどう考えても愚かなことなのですが、安倍政府がそれを先導し国民の過半数が支持するのであれば、対立は熱くなる一方で収束に向かうことはありません。
 
 日刊ゲンダイが「敵を作り煽る手法は戦前と酷似 今必要なファシズムの研究」と題してこの問題を取り上げました。
 同紙は、「愛国心をたき付け、他者への憎悪を扇動し、延命のためにポピュリズムを最大限利用する。国民を狂気に巻き込み、巧妙に束ねていくのがファシズムの手法である」と述べ、ヒトラーの言葉「大衆は、本能に従う獣のようなものである。決して、理性的な判断は行わない熱狂的な大衆のみが操縦できるのである」を紹介しています。
 
 五野井郁夫高千穂大教授氏は、「安倍政権はこの6年半余りで国民を単視眼的思考に染め上げ、異論を封殺する雰囲気をつくり上げた」として、「ヒトラーこの手法を巧みに使い、民衆を扇動した」結果、「かつてのドイツ国民は国家が滅びる最悪の事態になるまで、止まることができなかった」と述べています。
 
 結びのところで「国民はゆでガエルそのもの」という言葉が出てきますが、これは徐々に水を暖めていくと中のカエルはそのことに気付かずに、気付いた時にはもう動けなくなっているという悲劇を述べたものです。
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敵を作り煽る手法は戦前と酷似 今必要なファシズムの研究
日刊ゲンダイ 2019/08/08
阿修羅文字起こしより転載
 いよいよ、世界中が無茶苦茶になってきた。
 安全保障上の輸出管理で優遇措置を適用する「ホワイト国」から韓国を除外する政令が7日、公布された。発動は28日だ。安倍首相が血道を上げる韓国叩きへの反発は燃え盛る一方で、韓国市民は対韓輸出規制の撤回を求め、ソウルの日本大使館周辺で「安倍政権を糾弾する」と大書された横断幕を掲げてデモを展開。
 
 安倍政権の一連の動きを元徴用工訴訟をめぐる「貿易報復」と受け止める文在寅政権は「我々は二度と日本に負けない」と一歩も引かない構えで、対抗措置のひとつとして24日に更新期限を迎えるGSOMIA(軍事情報包括保護協定)の破棄をチラつかせている。日米韓の安全保障上での連携に支障が生じる懸念があるが、韓国の世論調査会社「リアルメーター」が約500人を対象にした調査(7日実施)では、破棄賛成が47.7%に達し、反対の39.3%を上回った。文在寅政権の強硬姿勢に世論の同調が広がり、戦後最悪といわれる日韓関係は報復の応酬の様相を呈している。
 
 安倍が媚びへつらう米国のトランプ大統領による中国叩きもエスカレート。トランプが要求する産業補助金の撤廃や知的財産権の保護などを習近平政権が丸のみせず、対中貿易赤字削減のために求めた農産物の大量購入も不十分だとして、制裁第4弾の来月1日発動を発表。対中輸入総額5400億ドルのほぼすべてに追加関税を課すのに飽き足らず、中国を25年ぶりに「為替操作国」に認定した。トランプの圧力に屈したFRB米連邦準備制度理事会)が0.25%の利下げに踏み切った効果は吹き飛び、米ダウ平均株価は急落。米国発の世界同時株安を招き、マーケットは大混乱に陥っている。「米国第一主義」に凝り固まり、来年の大統領選に向けた人気取りしか頭にないトランプは、イラン問題でも暴走を続ける。
 
内政しか見ずおっぱじめた宣戦布告なき戦争
 政治評論家の本澤二郎氏が言う。
「安倍首相の韓国叩きも、トランプ大統領の米国第一主義も本をただせば、選挙目当てに過ぎない。内政しか見ていない日米がおっぱじめた宣戦布告なき戦争に他国を巻き込んでいるようなもので、誰も得しないのは明らかです。安倍首相の異様な韓国叩きの根っこにはアジア蔑視の歪んだ歴史認識があり、トランプ大統領が仕掛けた米中貿易戦争は通商摩擦ではなく覇権争いなのです。米中貿易戦争によって世界経済は減速し、欧米は利下げに動いていますが、異次元緩和を6年4カ月も続ける日本は打つ手がほとんどない。10月に消費増税を控える日本経済はどうなってしまうのか」
 
 一方、トランプの標的にされて防戦に回る中国は「保護主義と闘う」「自由貿易を堅持する」と国際秩序の維持を訴えるが、足元では共産党独裁丸出しの強権を振るっている。逃亡犯条例改正案に端を発し、香港で9週間も続く市民デモに北京は怒り心頭。国務院(内閣に相当)の香港マカオ事務弁公室の報道官は「中央政府の巨大な力」を過小評価すべきでないと警告。「火遊びする人々は火によって滅びる」と呪詛のような言葉を吐き、習近平政権は人民解放軍の投入を含む介入を示唆し始めた。
 
 理念なき報復合戦、民主主義の弾圧、憎悪を煽り、分断の政治の先にあるものは歴史が雄弁に語っている。愛国心をたき付け、他者への憎悪を扇動し、延命のためにポピュリズムを最大限利用する。国民を狂気に巻き込み、巧妙に束ねていくのがファシズムの手法である。ハッキリしているのは、トランプも、トランプにすり寄って盟主気取りの安倍もトチ狂っている。いま必要なのは、ファシズムの研究だ。歴史には必ず教訓がある。
 
ナチスの国連脱退も対韓制裁も「95%」賛成 
〈今日の世界は、トランプ大統領の誕生、イギリスのEU離脱、移民排斥をうたう政党の勢力拡大と、ポピュリズム大衆迎合主義が蔓延しています。ある意味で、ヒトラーが政権を獲得し、第二次世界大戦が勃発した1930年代とよく似ています〉
 元東京都知事で、国際政治学者の舛添要一氏の新著「ヒトラーの正体」(小学館新書)に記された一文だ。まさに、いまの日本にも当てはまるのではないか。安倍は「令和の時代に新たな未来を切り開く」とドヤ顔だったが、令和という時代は未曽有の混乱と戦乱の時代になる予兆である。
 
 ヒトラーが独裁体制を手にしたのは武力によってではない。当時、最も民主的だったワイマール憲法の下、緊急事態宣言を2回発令して報道や言論の自由を停止し、全権委任法を成立させて独裁体制を完成させたミュンヘン一揆の失敗を経てナチスを再建してから8年、民主主義を支える選挙を経て実現したのである。第1次世界大戦で敗れたドイツはベルサイユ条約によって多額の賠償金を科せられ、市民はハイパーインフレに困窮。そこに再登場したヒトラーは、アウトバーン建設などの公共工事で雇用を拡大し、インフレの抑え込みに成功。国民の熱狂的支持と崇拝を獲得していった。
 ヒトラーは「わが闘争」で大衆心理について〈弱いものを支配するよりは、強いものに身をかがめることをいっそう好むのである〉と語り、側近にもこうした言葉を残しているという。
大衆は、本能に従う獣のようなものである。決して、理性的な判断は行わない」
熱狂的な大衆のみが操縦できるのである
 
 つまり、無気力状態の大衆はコントロールできないが、熱狂的な状況をつくり上げれば思いのままに操ることができるということ。ベルリン五輪を「民族の祭典」に仕立て上げたのが、まさにそれである。反ユダヤ主義については、「人は目に見えぬ敵だけでなく、はっきりと目に見える敵を必要とするのである」と言い切っていた。ウソを重ねて2020年開催の東京五輪を招致し、「新憲法施行」を言い出して、韓国を敵視する安倍のやり口そのものなのだ。ナチス国際連盟脱退の賛否を問う国民投票で95%を超える賛成票を集めた。「ホワイト国」からの韓国除外をめぐり、経産省が実施したパブリックコメントに95%超が除外賛成の意見を寄せたというのは偶然なのだろうか。
 
国家滅亡まで止めることができなかったドイツ
 高千穂大教授の五野井郁夫氏(国際政治学)は言う。
「あいちトリエンナーレの『表現の不自由展・その後』が中止に追い込まれた騒動によって、この国から表現の自由が奪われつつあることが改めて浮き彫りになった。安倍政権はこの6年半余りで国民を単視眼的思考に染め上げ、異論を封殺する雰囲気をつくり上げました。その結果、安倍政権を支持する極右勢力はラウド・マイノリティー(声高な少数派)にもかかわらず、あたかも多数派のように見える状況が出来上がってしまった。ヒトラーもこの手法を巧みに使い、民衆を扇動したのです。そうしてポーランドに侵攻して第2次世界大戦に突っ込み、戦況悪化でヒトラーは自殺。無条件降伏を余儀なくされたドイツは連合軍に分割占領され、国家の形を失いました。かつてのドイツ国民は国家が滅びる最悪の事態になるまで、止まることができなかった
 
 この国の歯止めはかかるのか。もはやかからないのか。それは一人一人の意識次第だろう。
「経済はガタガタ、外交はガチャガチャの安倍政権を有権者過半数が支持しているのは、ファシズムの罠にハマっているからです。官邸に忖度する大メディアがファクトをきちんと報じないため、つくられた世論に乗せられてしまっている。秋の臨時国会で安倍首相は最終目標である憲法改正の発議に持ち込み、米国と戦争のできる国へ突っ走ろうとするでしょう。この国は平成の終わりに返り咲いた安倍政権によって左前に拍車が掛かり、令和はいよいよ沈没に向かっている。国民はゆでガエルそのものです」(本澤二郎氏=前出)
 
 ファシズムは1日では完成しない。じわりじわりと浸透し、隅々まで覆い尽くす恐ろしさに目を向ける時だ。