福島の子ども達を救え小児科医ネットワーク/山田真

 
福島の子ども達を救え小児科医ネットワーク
NPJ代表 梓澤和幸

 

  6月19日(日)、福島市のホリスティカかまたで、原発放射能のことで悩むお父さん・お母さんと子ども達の健康相談会が開かれた。子どもたちを放射能から守る福島ネットワークと全国小児科医ネットワーク(20名の医師、当日は11名参加)による医療や避難、食事などの相談会であった。 500人をこえる親と子どもの参加があった。

  12時から、相談の途中の時間を割いて記者発表があり、母親代表の丸森さんと医師山田 真さんのスピーチがあった。丸森さんによると、子ども達の体に異常が起きている。鼻血が出る、甲状腺が腫れる、今までにないだるさを訴える、入退院の繰り返し等である。母親達が地元の小児科医に受診するが、このくらいの線量(報道では毎時1.5マイクロシーベルト。実際はもっと高いころ、たとえば3ないし5マイクロのところもある)では、体に放射能を原因とする異常は出ないはずだというのが医師のリアクションだ。母親のストレスが原因で、子どもに影響が出ると言われる例も少なくない。だが、とにかく子ども達には今までにない変化が起こっている。

  丸森さん達は、必死で相談にのってくれる医師を探した。そして、森永ヒ素ミルクの子ども達を新人ドクターの頃に診療し、ヒ素ミルクによる身体への影響を突きとめた医師の一人である山田さんたちに行き当たった。最近、低線量医療被曝の研究をしていることもわかり、丸森さんの相談にのってくれ、福島の子ども達を救え 小児科医ネットワークが結成され、この日の相談会となったという。

  山田医師は語る。「子ども達の体にかつてなかったことが起こっている。低線量の継続被爆は、医療の世界で経験がないことだ。森永ヒ素ミルクのとき、乳幼児の体にミルクを通じてヒ素が摂取されるということは、新しい医療体験だったけれども、これも新しい医療体験である。ならば私たちは事実をみなければならない。」 山田医師は、マスメディアのインタビューに答え 「福島のものを食べようキャンペーンが地元で起きているが、子どもには福島の野菜を食べさせてはいけない」 と静かな口調ながらはっきりと語っているのが印象的だった。

  相談会の会場は、200人ほど入る大きなホールだったが、避難・退避相談コーナーもあった。

  北海道、新潟、山形等福島の県外へ子どもを退避させたいという動きはずいぶんあるようだ。子どもたちをまもる福島ネットワークの人達によると、福島県当局は、県外への子どもの退避に協力的ではなく、学校で相談すると校長が思いとどまるよう父母を強く説得する事例もあるという。子どもを育てている父母の親世代、周辺地域との葛藤もある。政府や地方自治体が「県外退避も有力な選択肢の一つ」と公に表明することが急がれる。

  会場には、マスメディア各社の取材陣、遠くはジャカルタから来たというアルジャジーラの取材陣の姿もあったが、共同通信以外、全国ネットでは報道されなかったようだ。これでいいのか。
http://www.news-pj.net/genpatsu/2011/0620.html


 

被曝した福島の子供たちが東京で健康診断

http://image.news.livedoor.com/newsimage/6/f/6fb3a5139e0df75cb064051d7c044904-m.jpg
医師らの問診を受ける母と子供たち。長いケースでは40分にも及んだ。(23日、港区芝公園。写真:筆者撮影) 写真一覧(2件)
 子供の体調を心配する母親の思いが東京まで足を運ばせた。東電・福島第一原発の事故により被曝した子供たちのための健康相談会が23日、港区芝公園で行われた(主催:こども福島情報センター)。

 母親と子供たちを福島から招いたのは「アースデー東京タワーボランティアセンター」。母親に手を引かれた子供18人(ゼロ才~8才)が医師の問診を受けた。

 母親たちの心配は尋常ではない。事故発生以来、3か月以上経つが、事故収束のメドは立たず、原発からは絶えず放射性物質が撒き散らされているのだから。文科省が校庭の放射線の許容量を20mSv/年としたことも親たちの不安と怒りを掻き立てた。

 不安は溜りに溜まっているのだろう。問診は短くて15分、長い母子は40分にも及んだ。

 福島市内でも最高レベルの線量が測定される小学校に子供(小3)を通わせる母親に話を聞いた―

 「目の下のクマが気になる。先月末に鼻血と下痢があった」。母親は問診前、我が子の体調をこのように話した。

 小児科医の問診を受けること、20分あまり。母親は目を赤く腫らしていた。「医師からは『(福島に)戻るな』と言われた。『住み続けると19才までに発ガンする可能性がある。早ければ1年後に発症する』と言うことだった」。

 すぐにでも避難したいところだが、この母子には簡単に福島を去れない事情がある。夫(父親)は地方公務員で家のローンが残っているからだ。

 家族ぐるみで他県に移り住めば収入はなくなる。夫が福島に残れば、家族は離れ離れになる。「もう絶望的」、母親は肩を落とした。多くの家庭は同様の事情を抱えている。

 健康相談会を終えた医師(3人のうち2人)が記者会見を開き、次のように述べた――

 黒部信一医師(小児科)「福島の子供たちはハイレベルの放射線を浴びているので、皆避難させたいが、転出先でストレスが溜まると病気になりやすくなる。福島から来た子供は放射能を浴びている、などといわれのない差別を受けることもある」。

 山田真医師(小児科)「毎日、不安のなかで生きていくのはストレスが大きい。長期は持たない。不安とストレスのない地で生活した方がよい。子供らしい生活ができた方がいいと(母親たちに)アドバイスした」。

 前出の母親は医師の勧めを受け入れることにした――

 「夫を残して自分たちだけ逃げるのは心苦しいが、子供を守るために決心した。先生(医師)が背中を押してくれた。住み慣れた福島を離れなければならない。誰を恨めばよいのか」。

 原発はひとたび事故が起きれば、夥しい数の人々を不幸のどん底に突き落とす。海江田経産相や政府のお歴々は簡単に「再稼働」を口にするが、被曝者を救うことの方が先ではないのか。子どもの未来を考えない国家に将来はないのである。