「福島原発事故・放出されたセシウムと今後の危険」小出裕章氏5/5NY記者会見(内容書き出し)

福島原発事故・放出されたセシウムと今後の危険」小出裕章氏5/5NY記者会見

日本には現在54基の原子力発電所がありますが、
一番最初の原子力発電所が動き出したのは1966年のことでした。
その原子炉は日本が作った原子炉ではなくて、イギリスから購入したコールザーホール型という形の原子炉でした。
その後日本は次々と原子力発電所を建てたのですが、その全ては米国のジェネラルエレクトリックとウエスティングハウスという巨大原子力メーカーが作った原子炉を全て、自分の力で作ったのではなくて、導入して今日まで来ました。

そして日本では日本の国家が原子力をやると決めて、
その周りに電力会社、巨大な原子力産業、マスコミ、学会、裁判所というものも全て一緒になって、巨大な組織を作って原子力をこれまで進めてきました。

日本の政府や原子力を進める人達は、日本の原子力発電所は「絶対に安全で大きな事故など決して起こらない」と主張してきました。

マスコミも、それを国民にそのまま伝えたが為に、多くの国民は「原子力発電所は安全なんだ」というように信じ込んできてここまで来てしまい、そして昨年、3月11日に、とうとう大きな事故を経験することになりました。
 
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しかしみなさん方も分かってもらえるでしょうが、原子力発電所は機械です。
事故や故障を起こさない機械はありません。
そして機械を動かしているのは人間です。
人間は神ではありません。必ず間違いを犯すというものですら、
いつか大きな事故が起きるという事は仕方のない事なのです。
もちろん私自身も原子力発電の事故など決して望みませんでしたけれども、やはり事故は起きてしまいました。

日本は、原爆を経験した国です。
米国が1945年に広島と長崎という町に原爆を投下して、
二つの町が一瞬にして壊滅してしまうという事を経験しました。

それを受けても日本はなお、原子力をやりたいとここまで進めてきてしまったのですが、去年の3月11日に世界の地震国である日本で、大きな地震が起こりました。
その地震マグニチュードは9.0と言われていますが、その地震が放出したエネルギーは、広島の町を壊滅させた、原爆が放出したエネルギーに比べて3万発分といわれるほどの巨大なものでした。

そのため原子力発電所は大変危機的な状態になり、
まず発電所は原子炉の核分裂反応自体を止めました。

ですから原子力発電所は自力で発電するという力はその時点で失われました。

その場合に原子力発電所は外部の送電線を通して電力を受けるという、そういう約束になっていましたが、外部の送電塔も地震のために倒壊してしまって、外部からの電力も発電所の構内に来なくなりました。

その場合に備えて発電所側は構内にディーゼル発電機を複数用意していて、
電気を供給できると予定していました。

しかし、1時間後に、今度は巨大な津波発電所を襲って、
ディーゼル発電機を全て動かない状態にしてしまいました。

原子力発電所は運転を一度してしまうと、原子力発電所の炉心といわれている部分に大量の核分裂生成物という放射能物質が蓄積してしまいます。
それ自身は自分で熱を発生し続けるという性質を持っていますので、
その熱を冷やすことができなければ、炉心は溶けてしまうという事になります。

炉心を冷やすためにいは水を循環させる必要があります。
水を循環させるためにはポンプが動かなければいけません。
ポンプを動かすためには電気がなければいけません。
しかし、その電気が一切なくなってしまったのです。

そのため、次々と炉心が溶けていってしまいました。
その過程で燃料棒の被覆管というところに使っているジルコニウムという金属が水と反応して、大量の水素がそこから出てきました。

その水素が原子炉建屋の内部で爆発して、建屋を吹き飛ばしてしまったという事になりました。

そのため大量の放射性物質が環境に撒き知ら割れてしまうという事になりました。

日本政府がIAEAに報告している報告書によると、
福島第一原子力発電所の事故で大気中に
放出されたセシウム137の量は1万5000テラベクレルとされています。

広島原爆がまき散らしたセシウム137の量は、89テラベクレルですので、
それに比べると170発分に相当することになります。
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その他、今聞いていただいたのは大気中に放出されたセシウムですが、
海へも大量のセシウムが放出されてしまっています。

大気中に放出されたセシウムの方は大気の循環に乗って世界中に汚染を広げています。
米国にも福島第一原子力発電所放射能が届いていますし、
ヨーロッパにもすでに汚染が届いていることが分かっています。

しかし、濃密な汚染を受けてのはもちろん福島第一原子力発電所の周辺なのであって、その周辺に住んでいる約10万人の人々が、現在強制避難という形で、自分の故郷を奪われています。
おそらく長い年月にわたってもう帰ることができません。

日本は自分の国を法治国家だと言ってきました。
法律があるので犯罪を取り締まって安全な国だと主張してきた国です。

もし、それが本当であるなら、日本の国が自分で決めた法律を守ることは最低限の義務だと私は思います。

日本にはもちろん放射能や被ばくに関する法律が沢山ありました。
米国にもある通りです。

たとえば普通のみなさんは1年間に1ミリシーベルト以上被曝をしてはいけないという法律がありました。
また、その他には放射線の管理区域から物を持ち出す場合には1㎡当たり
4万ベクレルを超えているようなものは、どんな物でも持ち出してはいけないという法律もありました。

もしそれらの日本の国が決めた法律を厳密に守るとするならば、
およそ2万平方キロメートルの範囲を放射線管理区域に指定する。
つまり無人地帯にしなければいけないというほどの汚染を受けてしまっています。


それは日本の全土のうちの5%を超えてしまうほどの広大な面積で、
そんな事は到底できないと日本の国は判断して、そういう汚染地に人々を取り残すという決定をしてしまいました。

海へ流れた放射能は今現在海をどんどん汚染させている筈だと思いますが、
福島原子力発電所に近くにいる漁民たちは、今現在量を自粛して魚を獲らないようにしています。

でも漁民も何時までも漁を自粛することもできないでしょうから、
いずれ高濃度に汚染された魚が食卓に上がってくるでしょうし、
汚染はどんどん世界に向かって拡散していっていますので、
世界中の食卓に汚染された食べ物が出てくるだろうと私は心配しています。

あと、これからは今後どうなるか?という事を一つお伝えしたいと思います。

福島第一原子力発電所で今危機にある原子炉は1号機から4号機までの4つです。
1~3までは、3月11日に運転中でした。
4号機は定期検査中という事で原子炉は止まっていました。
そのため原子炉の炉心の部分にあった燃料も全て抜かれていて、
使用済み燃料プールというプールの底に全て沈められている状態で事故にあいました。

4号機の原子炉の炉心には548体の燃料集合体が普段は入っていてそれで運転されているのですが、
その燃料も含めて使用済み燃料プールの中に1331体のすでに燃えた燃料が沈められていました

その使用済み燃料プールの中に沈められている燃料の中に入っているセシウム137の量は、
少なく見積もっても広島原爆の5000発分に相当しています。

そのプールは昨年の3月15日に原子炉建屋が爆発した時に
すでに損傷をうけて傾いてしまっているという事が分かっています。

そのプールが、もし今後破損したり倒壊したりしてしまうようなことになれば、
燃料の中に含まれている大量の放射性物質がこれからまた大気中に噴出してくるという事を私は心配しています。

その福島第一原子力発電所の周辺では、起きています今現在でもたびたび毎日のように余震というものが起きています。
 
その大変な危険性というものを東京電力自身も認識していて、
東京電力は事故が起きた直後から4号機の使用済み燃料プールが倒壊しないように、補強工事というものを施したという事になっています。

でもその工事をする現場は放射能で大変汚れた現場で、
労働者たちがゆっくりと仕事をするという事が許されるような場所ではありません。

一体どこまで、その工事というものがきちんとできたのか、大変心配していますし
そのプールが倒壊するような大きな余震が今後起きないでくださいと、今願い続けているという、そういう状態です。

もし、この使用済み燃料プールが壊れてしまうような事になれば、
燃料の中に含まれていた放射性物質が飛び出してくる。
つまりこれまでに放出された放射性物質の10倍を超えるような放射能が飛び出してくることになると思います。

1~3号機というのは運転中でした。その炉心はすでに3つとも溶けてしまっていたことが分かっています。

ただし、その溶け落ちた炉心がいったいどこにあるのか?という事すらいまだに分かりません。

事故を起こしたのが火力発電所であれば、事故の現場に行って、それを調べることもできますけれども、原子力発電所の場合には、放射能がありますので、
現場に行ってみることもできない、見ることもできないというそういう状態にあります。

これから、いったいどこにあるか分からないその放射性物質
何とか閉じ込めよう、環境に出ないようにしようとする長い長い戦いが待っています。

こんな事故は人類がかつて一度も経験したことのない事故になっています。
本当にどんな事が出来るのか、私自身にも分かりませんが、
何十年、何百年という期間にわたって、これから放射能とのの闘いが続きます。

ありがとうございました。終わります。



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