田中龍作ジャーナルさんのサイトより
http://tanakaryusaku.jp/2013/02/0006625
<転載開始>
2013年2月4日 19:33
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デモ隊に出発を促す警察官。右隣りで不信の目を向けるのは俳優の山本太郎さん。=3日、大阪城公園 写真:田中撮影=
 昨年11月13日、警察の大捕物があった。大阪市此花区民センターで「瓦礫焼却の住民説明会」を開いた時のことだ。
 住民説明会は午後7時からだというのに、警察は5時にならないうちから区民センター前で大挙待ち構えていた。その数は制服、私服あわせて100人以上。
 5時を過ぎると動きが急になった。狙いをつけた人物が会場に入る度に警察は、「●●(例:田中)が入ったぞ」「あいつだ」と指差し呼称した。
 最初に逮捕されたのがHさん。2番目がMuさん。3番目がUさん。4番目がPさん。それぞれ「瓦礫焼却の反対」「関電包囲」「大阪市役所前テント監視」「大飯原発の再稼働阻止」などで先頭に立つ人物だった。
 1人に対して警察官20人で襲いかかった。逮捕者の姿形が見えないほど大勢の警察官で取り押さえたのである。
 逮捕容疑は「建造物侵入」だった。だが区民センター職員は警告どころかアナウンスさえ一度もしていない。だいいち、不特定多数の住民が自由に出入りする施設に「建造物侵入」が当てはまるのだろうか。深夜、早朝ならともかく午後5時過ぎである。―以上、逮捕された当事者と目撃者の証言にもとづく。
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「やくざの方が胸を張って生きているぞ」。デモ隊が大阪府警前に差し掛かるとモジモジ先生の追及は厳しさを増した。=本町通り 写真:田中撮影=
 下地氏は11月13日の住民集会では難を逃れたが、それから約1か月後の12月9日に逮捕される。10月17日に大阪駅構内を歩いて通過したことが、「威力業務妨害」や「不退去」にあたるというのである。警察は2ヵ月近くも経ってJRに被害届けを出させたのだ。
 下地氏は研究室が警察の家宅捜索を受け、大学准教授の地位も危うくなった。
 大阪城公園での集会に参加していた女性(大学非常勤職員・40代)は、肩を落としながら次のように語った。「一連の逮捕劇以降、大阪では直接行動がしづらくなった。特に瓦礫焼却反対運動の中心を担ってきた母親たちが街頭に出づらくなった」。
 警察による弾圧の効き目である。誰しも生活がある。逮捕され職を失えば家族を養えなくなる。母親であれば子供の面倒を見られなくなる。
 下地氏は警察の政治的意図を許さなかった。暗黒国家になると思ったからだ。デモが始まるとマイクを握り沿道の人々に訴えかけた―
「私は歩いていただけで逮捕されました。大阪府警はとんでもない警察です」
「公安3課は無実の人間を逮捕して20日間も勾留する犯罪者集団です」
天下り先の企業には媚びへつらい、無実の市民を拉致監禁するのが大阪府警です」……大阪府警不当逮捕を追及する言葉は尽きることがなかった。
 大阪城公園を出発したデモが終点の大阪市役所近くに差し掛かった頃、高校生の男女二人がデモに飛び入り参加した。
 「ツイッター不当逮捕を知った。(原発がらみの問題で)警察が何か変な動きをしていることを薄々感づいていた。抗議に参加したいと思っていたところ偶然デモに出会えたので飛び入った。嬉しい」。高校生(男)は興奮気味に語った。
 警察発表に依存する新聞・テレビが報道しなくてもSNSで事態を知った若者が抗議に加わることもある。世の中は警察の思い通りにはならない――。真冬の大阪の街頭に、一筋の光が差し込んできたかのように見えた。~おわり~
《文・田中龍作 / 諏訪都》

<転載終了>