娘さんは7本指のピアニスト

だいぶ日にちが経ってしまいましたが、東京の友人の続きです
ワタル君にピアノの楽しさを教えた娘さんの指は7本。
生まれつき左手の2,3,4指欠損、5指が変形している「末端低形成症」という障害を持っています。
生まれたとき、左手の真中3本の指をお腹の中で落としてしまったのだとか・・。
替わりに指になれなかった真珠のような丸い粒が三つ。


友人は食べ物の大切さを教えてくれた人、
妊娠中も食事には気をつけていたはずなのに、
それでも、こんなこともあるのです。

もっとも、子どもは生まれる前に、両親を選んで生まれてくると言う説もあるので
娘さんは彼女のところに生まれてきたかったのでしょう。
その説によると、障害もまた娘さんが選んだこと。

人間がこの世に生まれてくるのは、魂を向上させるため・・・
だから、障害も自分の「魂向上プログラム」の課題として選んでいるのだそうです。

娘さんは、05年のピアノパラリンピックで奨励賞を受賞。
ニューヨークの国連本部でも演奏し、「ひるおび」にも出演したことから
7本指のピアニストとしてかなり有名?に。
なので、「夏衣(かい)ちゃん」と本名で呼ばせてもらいます。
友人は障害のある手を見ても動ずることなく
「障害もありのまま受け止めて、ありのまま育てよう。」
「やりたいことは思い切りさせてあげよう・・」
と、夏衣ちゃんをのびのびとやりたいことをやらせて育てたようです。

友人のモットーは「楽しむこと」 (「楽しませること」)
壁のいたずら書きも、「こっちの壁ならもっと書けるよ~」なんて言うお母さん。
はさみも包丁も持たせ、折り紙や切り紙工作を一緒に楽しみ、
夏衣ちゃんはしだいに手先のことが得意になっていきます。

ピアノも、幼稚園から帰ると、毎日楽しそうに弾いている姿に、
思わず「ピアノを習う?」と聞いてみると・・・。
「うん、習うよ」
先生は3本の指がない夏衣ちゃんに普通にレッスンをされたとのこと。

私が、夏衣ちゃんのピアノを初めて聴いたのは夏衣ちゃんがまだ小さいころ・・。
・・その頃から、とても楽しそうにピアノを弾いてくれたのを思い出します。

先日は、難聴の私にもわかる曲を、と・・モーツアルトトルコ行進曲を・・。
これは 今頃になって私がこの曲の練習を始めたからです。
難聴になると、メロディもわからなくなりますが、今弾いている曲なので、彼女のピアノのすばらしさもよくわかりました。

二本しかない左の指で・・どのように弾くのかしら?
そんな疑問を持っていたので、夏衣ちゃんの指使いにびっくり!

指替わりの三つの粒(というより、指のない部分)を器用に使って、丁寧に、速く、正確に、そして力強く弾くのです。ピアノの音色は、感動そのもの。7本しか指がないというハンディを、全く感じさせない、流れるように美しいピアノの演奏でした・・。

ピアノの一音一音を丁寧に完璧に弾きこすのは、やはり、お母さん譲りなのでしょう。
納得がいくまで描きなおし続けた彼女の絵にかける執念を思い出しました。


たくさん練習しているの?と尋ねると、
好きなこと、やりたいことが色々あるので、ピアノばかりではないようでしたが・・、
ピアノが大好きだからこそ、これだけ頑張れたのだろうな・・と思います。

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<7本の指でピアノを弾くことについて・・>

夏衣ちゃんは自分の7本の指を「自分の個性」と考えている。
7本で弾くための指の工夫を自分で考えながら6歳から黙々と練習を重ねてきた。
でも、夏衣ちゃんのピアノは7本指で弾くからすごいのではない。
「障害者が弾くピアノ」というレッテルは外して聴いてほしい。
7本指で弾いているとは、とても思えない完成されたピアノの演奏だから・・・
現に、ピアノのコンクールは健常者に交じって参加して、ちゃんと入賞している。
ただ、その演奏に至るまでの努力を思うと、やはり胸が熱くなる・・・。


彼女を大きな愛情で包んで育てられたご両親の存在も大きい。
いつも夏衣ちゃんに寄り添いながら・・・「楽しむこと」を忘れないで・・乗り越えれば、その先にもっと大きな楽しみがあるわよ」と、言って励ましたそうだ。
 障害も個性と割りきり、「努力する」ことも「楽しむ」ことで、乗り越えてこられたんだなと思う。

そういえば・・・高校で習った孔子の言葉にもこんなのがあった。
「子曰く、これを知る者はこれを好む者に如かず。
               これを好む者はこれを楽しむ者に如かず。」
 現代語訳
「よく知っている人もそれを好む人には勝てない、       
                  それを好む人もそれを楽しむ人には勝てない。


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こんなにすごいピアニストなのだけれど、会ってみると、優しい笑顔の素敵な少女。
今も、愛猫のぷーを抱っこしてにこにこしている夏衣ちゃんを思い出します

今は音大で、作曲の勉強をしているともこと。
これから、どんなふうに成長されるのかもとても楽しみです。

障害者にも健常者にも感動を与えてくれる夏衣ちゃんのピアノですが、
彼女のことを知りたい方は、こちらを!
夏衣ちゃんの書いているブログ?です
www.kobayashikai.com/ - キャッシュ
7本指で旅するピアノの世界、小林夏衣のオフィシャルホームページです。私は音楽を 楽しむ力は誰にでも平等に備わっているのだ、とわかったときから人生で一番大事 なのは楽しむことだと思うようになりました
  

✿いつも長くなってしまってすみません。
 最後までお読みいただきありがとうございました。