【パリ発】「デモは国家的暴力で封じ込め」 アベ政権が段取り(田中龍作ジャーナル)

【パリ発】「デモは国家的暴力で封じ込め」 アベ政権が段取り

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「緊急事態は警察国家化だ」。国家警察の機動隊に「通せ」と叫ぶデモ隊。= 22日午後4時頃(日本時間23日未明)、バスティーユ広場出口 写真:筆者=
 「難民、移民を制限するな」。いわゆる左派系の市民1千人が22日、パリの大通りでデモをかけた。
 テロ事件を受けた国家非常事態宣言により、デモ集会は来年2月まで禁止されているが、市民たちはご法度を破って政府に抗議したのである ―
  
 バスティーユ広場に集った人々はシュプレヒコールを上げていた。
「すべての国境を開放せよ」
「移民にもフランス人と同じ権利を与えろ」
空爆して人を殺して我々はそんなことちっとも望んでいないぞ」・・・
 フランス革命(1789年)の狼煙(のろし)が上がったバスティーユ牢獄跡で、人々は政府批判を合唱した。
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棍棒でデモ隊を容赦なく殴る機動隊。棍棒は次の瞬間降り下ろされた。= 22日午後4時過ぎ(日本時間23日未明、パリ市内 写真:筆者 =
 集会が始まって30分ほどすると参加者は、大きな塊(かたまり)となって、デモに出発しようとした。
 たちまち国家警察(パリ警視庁ではない)の機動隊が、広場の出口を塞いだ。
 だが若者は機動隊の脇をすり抜けて大通りに出た。機動隊は重装備のため若者の足には追いつけない。
 機動隊は横断幕を持って歩くデモ参加者に襲いかかった。棍棒で打ちすえ、催涙スプレーを浴びせた。ここでも足の速い若者が機動隊の脇をすり抜けた。
 こうして機動隊の隊列は崩された。年配の参加者は露払いの終わった大通りを粛々と歩いた。
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デモ隊に催涙スプレーを浴びせる機動隊。まともに浴びると目に激しい痛みを覚え、呼吸困難となる。= 22日午後4時過ぎ(日本時間23日未明、パリ市内 写真:筆者 =
 デモ隊は2~3キロ先の共和国広場までたどり着いた。だがここから先には行けなかった。
 国家警察がオペラ座やビジネス街にまでデモ隊を進ませなかったのだ。機動隊は輸送車を置き、道をほぼ完ぺきに塞いだ。デモ隊は封じ込められた。
 地中海に展開する原子力空母シャルルドゴールは、23日から、IS支配地域への攻撃態勢に入る。
 高まる緊張は、戦争に反対する市民を弾圧する口実を与える。
 南シナ海の緊張に乗じて「こじつけの非常事態」を宣言し、デモ集会を禁止する。それでも異議を唱える市民は、国家の暴力をフルに使って封じ込める ―
 安倍官邸はフランス政府の対応を参考にしながら段取りをしているだろう。
 

【パリ発】「対IS有志連合」日本も引きずり込まれる

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ISへの攻撃を本格化させれば、フランス国内で警戒にあたる兵士の数も増やさねばならなくなる。=21日、パリ・リヨン駅 写真:筆者=
 英国のキャメロン首相が23日来仏し、オランド大統領と会談、ISへの空爆に向け軍事協力することを表明した。
 BBCによれば英国はフランス軍に情報提供する他、『給油』を手伝う。
 キャメロン首相は12月後半にもISへの爆撃を可能にできるよう議会の承認を取り付けたい、としている。
 米国のオバマ大統領はフランスがテロ攻撃に遭ったその日(13日)に声明を出した。「これはフランスだけへのテロ攻撃ではない。世界の全人類への攻撃である」と。
 これで英・仏・米による有志連合ができたことになる。
 英と仏はそれほど親密ではない。英はブレア元首相以降、仏はサルコジ大統領以降、米国に従順な国家となっている。
 有志連合の音頭をとったのは米国であることは疑いようがない。
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フランス国防省。軍事施設に許可なくカメラを向けてはならないのは常識だ。撮影画像を消去させられたが、バックアップを残していた。=24日、パリ市内 写真:筆者=
 日本も安保法制が施行されれば、同盟国が攻撃を受けた場合、同盟国と共同で軍事行動することになる。
 本記事2段落目の『給油』に脊髄反射された方も少なくないのではないだろうか。新安保法制では、爆撃に向けて発進準備中の同盟国の戦闘機にも給油できるのだ。
 戦線が拡大し泥沼化すれば、日本も引き入れられる可能性は高い。アベ首相はむしろ積極的に参加したがりそうだ。
 「有志連合」は、いかにもアベちゃんが酔いそうな言葉だからだ。
 今回のテロ事件で89人もの死者を出したバタクラン劇場前で花を手向けていた市民に聞いた。3~4時間前、キャメロン首相とオランド大統領がここで献花している。
 南仏生まれパリ育ちの女性(60代)は「(ISの)報復がありますから怖いですね。叩かれたら叩き返すでは何も解決しない」と顔をしかめた。
 国民の不安をよそに政治家は、戦争に向けて前のめりになっていく。
  ~終わり~
    
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読者の皆様。フランスでいま起きていることは、近く日本で起きることです。アベ首相がやたらと「テロ対策」を口走るのは、その伏線です。日本を暗国の独裁国家にしないためにも、フランスの現状を押さえておく必要がある