謝罪」と「記憶」をごっちゃにしてはいけないのです

謝罪」と「記憶」をごっちゃにしてはいけないのです

安倍晋三くんが、このたびの従軍慰安婦問題に関する合意について
「私たちの子や孫、その先の世代の子供たちに謝罪し続ける宿命を背負わせるわけにはいかない。
 今回、その決意を実行に移すための合意でした。
 この問題を次の世代に決して引き継がせてはならない。
 最終的、不可逆的な解決を70年目の節目にすることができた。
 今を生きる世代の責任を果たすことができたと考えています」
…と言うたそうです

この晋三くんの言葉を聞いて、なんだか気分が軽くなった…と感じた人がいるなら

その人は晋三くんと同様に「謝罪」と「記憶」とをごっちゃにして、

「負の歴史の記憶」まで引き継がなくてもよい…と、都合良く解釈しているんではなかと思います


まず、「謝罪」について言いますと…というか、このtweetがそれについて端的な指摘をしてくれてますので

紹介しますと…↓
「子孫に謝罪させない」というのは実にエモーショナルでミスリーディングなレトリック。謝罪が求められる主体は先の大戦の責任者(存命なら)だし、法人としての日本政府であって国民一般ではない。国民に「責任」があるとすれば、二度と戦争しない・させないこと、負の歴史含め記憶し続けること。(←ひとさまのtweetより)
…ということで、何度も言うてきてますが、

日本の市民の一人一人が謝罪を求められていたわけではない…ということは

しっかり押さえておきたいところです


そして、晋三くんが「この問題」と言ったその問題とは

慰安婦の方々が日本政府に対して「謝罪と賠償」を求めていたコトを指すのでありまして

今回、不思議なことに韓国政府は当事者である元慰安婦の方々に意見を聞くこともなく

政府間で勝手に合意をしてしまったようですが、

それでも今回、日韓の政府間で合意したのはこの件についてだけ…でありまして

今回の合意によって「日本軍性奴隷制度」という「負の歴史」そのものが消えてなくなるわけでもありません

(→そんなん、当たり前の話…)


つまり、このtweetにあるように日本側は過去の「総理大臣の手紙」で約束した通り

この「負の歴史」を記憶し後世に伝えていく義務を負っているのでありまして

この義務はその履行なしに消滅することなどあり得ません


すなわち「謝罪」と「記憶」はまったく別のことでありまして

「謝罪」しなくてよくなったんだから、「記憶」もしなくていいんだ…と受け止めて

気持ちが軽くなった…としたら、それはアナタ(と晋三くん)の勘違い…ということでよろしいかと思います





※補足で…

以下のtweetは、ぼくがフォローしてる人のものですが、かなり残念なトコがあるので

ちょっとばかりツッコんでみたいと思います
岸田外務大臣慰安婦問題は、当時の軍の関与のもとに、多数の女性の名誉と尊厳を深く傷つけた問題であるということは、従来から表明してきたもの」(NHKhttp://bit.ly/1R4Fklg  軍の関与を日本政府として再確認した。

しかも岸田大臣は「当時の軍の関与のもとに、という認識は、従来から(安倍政権が)表明してきたもの」と駄目押しまでしている。会談直前に「合意なら評価する(合意しなかったら、わかってるな)」と米政府から公開の恫喝を受けた結果とはいえ、外相がここまで踏み込んだ表現を使うとは予想外だった。

え~、日本軍性奴隷制度に関して日本政府が「日本軍の関与」を認めてきたこと…と、

「多数の女性の名誉と尊厳を深く傷つけた」としていることは

これまでもたびたび(形式的には)くり返し表明してきたことでありまして

(→「総理大臣の手紙」にも、それはちゃんと書いてあるしね)

「外相がここまで踏み込んだ」というわけではございません

(現に今回の「合意」では日本は従来の立場をほとんど変えていないですしね…)


では、日本政府が従来の立場をほとんど変えないのに、

なぜに韓国政府が突然それを受け入れ「合意」をすることになったのか…と言えば

それは「アメリカからの強烈な圧力があったから」としか考えられないところ

このtweetは今回の「合意」が「アメリカ政府から日本政府への強い圧力」の結果導かれたもの…という、

受け止め方をしている点で、一部ネトウヨくんたちとおんなじ捉え方になってるのがかなり残念です


ちなみに、引用されているニュースの記事はこれですが…↓
岸田外相 「画期的な成果 日韓は新時代へ」(NHK:12月28日)

岸田外務大臣は今回の日韓外相会談について、訪問先の韓国・ソウルで記者団に対し、「歴史的、画期的な成果であり、日韓関係は未来志向の新時代へと発展する」と述べ、成果を強調しました。
この中で、岸田大臣は「今回の合意により、慰安婦問題が最終的かつ不可逆的に解決されることを確認した。このような合意ができたことは歴史的、画期的な成果であると考える。これにより、日韓関係は、未来志向の新時代へと発展すると考える」と述べました。
そのうえで、岸田大臣は、共同記者発表で慰安婦問題について「日本政府は責任を痛感している」と発言したことについて、「慰安婦問題は、当時の軍の関与のもとに、多数の女性の名誉と尊厳を深く傷つけた問題であるということは従来から表明してきており、歴代内閣の立場を踏まえたものだ。これまで責任についての立場は日韓で異なってきたが、今回の合意で終止符を打った」と述べました。~

さらに、ソウルの日本大使館の前に設置された、慰安婦を象徴する少女像について、「韓国政府として適切に解決されるよう努力し、その結果、ソウルの日本大使館前から適切に移転されるものと認識している」と述べました。

このほか岸田大臣は、中国が慰安婦問題を巡る資料について、韓国などに呼びかけて共同でユネスコの「記憶遺産」への申請を検討していることについて、「韓国が申請に加わることはないと認識している」と述べました。そして、岸田大臣は、記者団が「慰安婦問題は、これまで何度も韓国側に蒸し返されてきたが、今回の合意で本当に最後の解決になるのか」と質問したのに対し、「きょうの外相会談でも、ユン外相と膝詰めの協議を行い、直接、韓国政府としての確約を取り付けた。両国首脳間の合意であるということも強調したい」と述べました。
過去、日本政府が「画期的」と自称したことが、真に「画期的」であったためしはなく

このような(勝手な)自画自賛こそ、今回の合意の欺瞞性を物語っているとぼくは端的に受け止めています


また、岸田外相は

日本大使館前の慰安婦像の撤去

・韓国は将来にわたって、日本軍性奴隷制度に関して「記憶遺産」登録を申請しない

…等、これまた「勝手な認識」を示してはりますが

このような「勝手な認識」を披露できるのは、今回の「合意」が

日本の言い分がほぼ全面的に通ったことからくる高揚であるとも感じます


では、このあたりのことについて、海外での報道を少しだけ見てみましょう…
慰安婦合意:英紙「日米の勝利」…(朝鮮日報:2015/12/30)

 ~英国紙ガーディアンは「韓国が慰安婦関連で合意したのは、日本と米国の勝利」との見出しで、「いわゆる慰安婦論争に関する韓日間の歴史的な合意は、安倍晋三首相にとって重要な成功であると同時に、北朝鮮や中国の脅威に対抗して北東アジア(韓国・日本)同盟の構築を促してきた米国にとっても間接的な成功だ」と評価した。また、「『両国間の新たな時代を切り開こう』という安倍首相のメッセージに対し、朴槿恵(パク・クンヘ)大統領は『今回の合意で両国間の信頼を築き、新たな関係を切り開くことを希望する』と回答した」「朴大統領の反応は(日本に)比べると明らかに冷ややか(notably cooler)だった」と書いた。~
ぼくも今回の「合意」は、どう贔屓目に見たって「日本側の言い分が最大限通ったもの」だとしか思えません

(とすると、「合意」を迫るアメリカの圧力が日韓どちらにより強くかかったのか…が
 すぐにわかると思います)


さらに…
「少女像移転が前提」との報道を「ねつ造」と批判=韓国当局者(朝鮮日報:2015/12/30)

【ソウル聯合ニュース】韓国政府当局者は30日、旧日本軍の慰安婦問題をめぐり、韓国が設立する財団に日本が10億円を拠出する前にソウルの日本大使館前に設置されている少女像を撤去することに韓国が前向きな反応を示したとの日本メディアの報道について、「完全なねつ造」と強く批判した。~
このような報道を併せて考えてみると、今回の「合意」は「最終的解決」どころか

「新たな火種」をつくった…としか、ぼくには思えません




※もう別にどうでもええんですけど、従来の立場からほとんど一歩も出てないにもかかわらず

今回の「合意」に怒っている、もはや悲しいとしか言いようがないネトウヨくんたちのことを少し…
リテラ(12/29)慰安婦日韓合意でネトウヨが「安倍、死ね」の大合唱! でも安倍の謝罪は二枚舌、歴史修正主義はさらに進行する http://fb.me/7KPLPbGXQ
今回の「合意」でも気に要らん…と言うのは、

もはや「慰安婦制度なんかなかったんだ(≒ただ戦地に売春婦がいただけだ)」と

主張してるとしか言いようがないんですが、かかる主張が許される?のは

世界広しと言えども、この日本だけ…という客観的事実に

彼らはいつまで抵抗するつもりなんでしょうか…

(まさか、そんなコトが海外で通用する…なんて、思てないよね?)

首相夫人の昭恵氏が、安倍支持派の「韓国嫌い」を宥めるためか、靖国神社に参拝したとFB記事を上げているが、案の定コメント欄には「裏切られた」「軍の関与なし」「英霊を貶めた」等の罵倒が並ぶ。http://on.fb.me/1mMyqpB
この時期に「靖国参拝」を宣伝する首相夫人…(まさに「内助の功」ってやつですかね?)




※…と、胸くそ悪くなるようなネタを披露してしまいましたので

最後に、ぼくが国内のメディアで見つけた「まっとうな意見」を紹介して

このエントリーを終えたいと思います

慰安婦」問題合意…被害者の苦しみ置き去り 沖縄の支援者は厳しい批判(沖縄タイムズ:2015年12月30日)

 日韓両国の外相が日本軍「慰安婦」問題の決着で合意した。だがその過程に、人権を踏みにじられ苦渋の戦後を歩んだ被害者の声は聞こえてこない。沖縄にもかつて140カ所以上の慰安所があったとされ、元「慰安婦」の支援に取り組んできた関係者からは「日本の謝罪は一定評価できる」との見方がある一方、「臭い物にふたをした稚拙な政治決着」「被害者の苦しみを置き去りにしている」と厳しい批判が出ている。

 西原町に住む女性史研究家の浦崎成子さん(68)は「日本政府は公の場で当事者の声を聞いていない。『慰安婦』がどういうシステムだったかも明確にしないまま決着とするのは、女性の人権に対する冒涜(ぼうとく)でしかない」と憤る。日本が拠出する10億円の根拠も不明と指摘。「1995年に『償い金』として出されたアジア女性基金との関連を含め、何をしようとしているのか全く見えない」と投げ掛ける。

 「慰安婦」や「軍夫」の問題に取り組むNPO法人沖縄恨之碑の会代表の安里英子さん(67)も「被害者が戦後70年、血と涙で訴えてきたことをこれで終わりにして、もう二度と蒸し返してくれるなという意図が見え見え。それを受け入れた韓国政府にも失望する」と強調し、続ける。「日本が犯した最大の人権侵害を薄っぺらい支援策で覆い隠すのは、さらなる犯罪に他ならない」

 一方、2012年の「沖縄戦と日本軍『慰安婦』」展で実行委員長を務めた高里鈴代さん(75)は「軍の関与を認め、政府の責任を明確に言った点では一定評価する」と語る。ただ「被害者が納得するかは別で、問題は決してこれで終わらない」と指摘。歴史教科書に「慰安婦」問題をしっかり記述するなど、今後の対応を注視する考えだ。

沖縄県内に慰安所145カ所 「朝鮮ピー」と呼ばれ差別

 沖縄では、民家や病院、集会所などに140カ所以上の慰安所がつくられたとされる。沖縄戦や女性史研究者らが関係者への聞き取りや陣中日誌などを基に1992年に「慰安所マップ」を作成し、120カ所の慰安所を確認。その後も数は増え、2012年に那覇市で開かれた「沖縄戦と日本軍『慰安婦』」展実行委員会の追跡調査では約145カ所に上っている。

 性犯罪は潜在化しやすく、人数など被害の詳細は不明な部分も多い。朝鮮半島から連行された日本軍「慰安婦」として、1975年に初めて被害を証言したのは渡嘉敷島に配置されたペ・ポンギさんだ。ペさんは戦後も沖縄で暮らし91年に亡くなったが、それと前後して韓国に「慰安婦」問題に取り組む韓国挺身(ていしん)隊問題対策協議会が発足。さらに元「慰安婦」のキム・ハクスンさんが名乗り出て日本を提訴するなどしたことで、問題が全国的に大きく動き始めた。

 「慰安婦」たちは軍人や住民から「朝鮮ピー」の蔑称で呼ばれ差別された。沖縄戦中は、首里城地下の第32軍司令部壕にもいたという証言が数多く残されているが、仲井真県政時代に司令部壕の説明板から「慰安婦」の文言が削除され、県の対応に批判が高まった。