6年目の311東電福島原発<本澤二郎の「日本の風景」

6年目の311東電福島原発<本澤二郎の「日本の風景」(2291)

東芝3号機核爆発に蓋する政府と東芝
 6年目に入った東電福島原発爆破事件に大きな変化は見られない。一帯は依然として危険がいっぱいだ。一般人は危なくて近寄ることもできない。真相を伝えられないマスコミに東北の民のストレスは、たまる一方である。特に3号機の核爆発を未だにメーカーの東芝は沈黙、無関心を決め込んでいる。社会的責任を投げ捨てている。政府は水素爆発だと嘘をついたままである。

<3年に1度しか視察しない首相>
 筆者の記憶では、この3年有余に安倍首相が、東電原発現場を視察したのは、ただの1度である。これはおかしい。国民の生命財産を守る最高責任者が、危機の現場から逃げている。
 国民の命よりも自分の命が大事と考えているのだ。
<嘘を自ら証明>
 東京五輪獲得の場で、福島は問題がない、とわめいた安倍である。「ブロック」「アンダーコントロール」と繰り返した。完全に放射能は封じ込めた、制圧したと世界に向けて発信した。
 ならば何度でも原発事故の現場に立って、関係者を激励する場面があって当然だろう。しかし、安倍は現地をいつも素通りして、現場から逃げている。ということは、現在も危なくて近寄れない、と内外に発信していることになる。
<検察何している!>
 本当にけしからんのは、検察である。検察もまた、東電を怖がって捜査を開始しない。これまた不思議である。
 せめて野党は、検察や法務当局に執拗に要求すべきところである。これも寡聞にして聞こえてこない。新聞テレビも要求していない。三井からNHKに天下った籾井が、現場をコントロールしているらしい。籾井を恐れるNHK記者と編集幹部の無責任にもあきれるばかりだ。
<安倍311会見でも露呈>
 東電福島から逃亡してきたような安倍は、311向けの記者会見を前日に行った。報道によると、歯切れのよい発言は、当然のことながらなかった。
 「ブロック」「アンダーコントロール」という歯切れのいい言葉を聞くことなど出来なかった。ならば現状の厳しさを率直に説明すればいいのだが、それもしなかった。無責任な会見となった。
原発再稼働には必死>
 彼は「原発は欠かせない」と開き直った。ドイツのメルケル首相は、311の教訓を即座に政策に生かした。原発ゼロへと舵を切った。
 原発現場に足を踏み入れない安倍である。原発の恐怖を知っているに違いないが、それでも原発至上主義を踏襲する。
 安倍ら極右の悲願は日本核武装であることは、衆目の一致するところである。既にそのためのプルトニウムは山のようにある、それでも?まさかアメリカやロシアの核兵器大国に足を並べたい、との野望なのか。
 原発再稼働に公明党創価学会も追認しているのだから、これはもう悲劇の連鎖にのめりこんでいるのだろう。
<中間貯蔵施設はお先真っ暗>
 除染廃棄物が山のように積まれている。これの最終処理どころではない。その前段階の中間貯蔵施設の用地も暗礁に乗り上げている。当然であろう、了解する地権者などいるわけがない。
 なぜ東電の敷地内に保管しないのか。廃炉の先行きもどうなるのか、だれもわからない。常識的に見て30キロ圏内に人は住んでならない。
<5年経ってもまだ復興!>
 「今後5年間が復興」と安倍は訴えた。ということは「過去5年間は復興という言葉の遊びで、何も進んでいなかった」ということなのだろう。
 棄民という言葉を思い出してしまった。

 確かに原発を受け入れた住民に大きな過失があった。しかし、なんらの情報も知識もない農漁民に正しい判断を求めるほうがおかしい。札びらに屈してしまった住民に責任はない。
 責任は、上げて東電にある。東電を後押しした政府・霞が関にある。検察の追及は、ここに向けられるべきなのだ。
<子供の健康は回避>
 報道から、安倍の口から福島県内の子供たちの健康についての言及がなかった。これもふざけた311会見であろうか。
 チェルノブイリの教訓は、5年後に子供たちの甲状腺がんの多発が報告されている。子供のいない戦争首相にとって、そこまで目が向かなかったのだろう。
<中曽根・ナベツネ責任>
 静かに5年前を振り返ってみると、原発を国家戦略の基本に据えた政治活動をしてきた中曽根康弘、それを必死で、原発安全性を吹聴宣伝してきたナベツネ読売の政治責任は、重い。
 後者は、賭博・麻薬漬け巨人軍の最高責任者として話題を振りまいている。前者は息子をつかって、慰安婦問題に蓋をする不正義に汗をかいている。二人は、311にどう向き合っているのだろうか。
2016年3月11日記(政治評論家・日本記者クラブ会員)

追記  東電社長の嘘発言
 東電社長の広瀬は、3月11日現地でのあいさつで「5年前の津波で、東電の過信とおごりは木っ端みじんとなった」と発言、地震による原発破損による崩壊という真実を、改めて隠ぺいしてみせた。地震発生後の2か月後にメルトダウンを認めた東電の嘘体質は変わっていない。