「ただ乗り」アメリカにとっておいしい在日米軍基地をトランプが手放すはずがない

「ただ乗り」してんのはどっちだ!

アメリカの大統領が誰になろうが…というか、アメリカの大統領を選ぶのはアメリカ市民…であり

日本に住むぼくには関与できる問題でもなく、また、関与する理由もないと思ってたので

アメリカ大統領選挙(の指名争い)については、ほとんど触れてきませんでしたけど

その候補の1人が言うてることが、あまりにも「真逆」なのでちょっとだけ書いてみます


このたび、共和党の大統領候補指名を獲得することになったトランプという人が

「(日米安保で)米国は日本を守るのに、日本は米国を守らないっていうのは不公平だ」

だから、在日米軍駐留経費は全部日本に持たせるべきだ…

それができないなら、在日米軍を撤退させるぞ…と

いわゆる『安保ただ乗り論』なるものを展開して、アメリカ国内でけっこうウケてるようです


一般論として、ぼくは、「独立国に外国の軍隊が恒常的に駐留してる」…というのは

いろんな意味でおかしな話である…と思てるところ、

それを留保するほどの特殊事情が日本(とアメリカ)にあるとは到底思えないので

日本にアメリカ軍が駐留するのは、大反対…というか絶対反対で

ゆえに、もし、アメリカ軍が何らかの理由で日本から出て行ってくれる…と言うのであれば

それはまったくもって大歓迎!…という立場であります

(だから、そういう可能性をほのめかしてる点においては、この人に「期待」する気持ちがないわけではありません)

けれども、そこに至るこの人の「前提認識」が、あまりにも現実離れしてる…というか、

もっと端的に言うと、ウソばっかり…なので、その点についてはキチッと反論しておきたいと思います


まず、「日米安全保障条約」は「アメリカが日本を守るため」のもので、在日アメリカ軍は「日本防衛のために」存在すると思ってる人が日本にもたくさんいてると思いますが、条約上の文言にどない書いてあろうと、そんなことは「まったくの幻想」です


在日米軍基地に限らず、アメリカの在外基地はアメリカにとって「前線基地」であり、

基地の前方展開による「敵国封じ込め(あるいは、敵国けん制)」が、

アメリカの安全保障に有効」であると考えるからこそ、アメリカは在外基地を設けているんです

(その他にも、海外での武力行使に利用できる…という「アメリカにとっての利点」もあるし
 前線をアメリカから遠ざけて、アメリカ本土を防衛する…という利点もあるでしょう)


この点、在日米軍の主要部隊やその任務についてみてみると…
在日米軍の主要部隊である在日米海兵隊の第三海兵遠征軍は…自らの任務を「アメリカ太平洋軍司令官に前方駐留・展開兵力を提供することで、平時活動や安全保障協力活動を行い、有事や緊急事態への対応を支援し、戦域および国家の戦略を支援する既存の作戦計画を迅速に遂行できる態勢を整えています」と説明しており、日本防衛などは任務として全く触れていない。 そもそも在日米軍は米太平洋軍司令官の指揮下で、その担当区域(東は米本土西海岸から西はインド西部国境まで、北は北極から南は南極まで)全般に展開されるために、前進基地として日本に駐留しているに過ぎないためだこの理由から在日軍司令官には指揮権がなく、在日米基地の管理業務が任務なのである。(『「日本は気前がいい」 米国防総省』(ニュースソクラ)より
…ということになってて、そこには「日本防衛」という観点は出てきません


また、過去のベトナム戦争イラク戦争などを振り返ってみても

在日米軍基地が「日本防衛のために機能した」と言うよりは、

アメリカの(侵略)戦争のために機能した」と言うべきであり

そういう「客観的事実」を見ても、在日米軍基地が「日本防衛のため(だけ)」に存在している…と言うのは誤認識なので、日本がアメリカに「気兼ね」するような理由はありません


それどころか、逆にアメリカは「国内で基地を置くよりも安価で」基地の運営ができる…という理由からも

在外基地を設けているのでありまして、そのなかでも特に安上がりなのは日本…です↓

国防総省がアジア・太平洋の地域安全保障戦略についてまとめた報告書「東アジア・太平洋地域に対する米国家安全保障戦略」(1995年2月)…では、「同盟国との経費分担計画のおかげで、我が軍を米本土に置いておくより前方展開を維持している方が米納税者にとって実際には安く付く」(報告書24頁)といずれの同盟国に対する「安保ただ乗り論」も否定すると共に、日本については「断然日本は、あらゆる同盟国の中で最も気前の良い受入国支援を提供している」(同25頁)と評価(『「日本は気前がいい」 米国防総省』(ニュースソクラ)より

すなわち、「在外基地を置くことによって『自国の安全保障』にただ乗りしてる」のは、

他ならぬアメリカ…でありまして、トランプの言うてることは、「真逆(のウソ)」です


また、アメリカ国内においては、様々な事情で、基地を置けない…とか、訓練ができない…というような場合でも

日本(沖縄)でなら、どこにでも基地を置けるし、どこでだっていつだってやりたい放題に訓練できる…という、

アメリカ軍にとっての「利便性」も無視できないもので、

在日米軍(基地)を撤退させたら、困る(損する)のは日本…ではなくてアメリカの方です

(ちなみに、今、アメリカの方から出ている「在外基地の分散」の話は、
 おもに戦略的な理由から語られているもので、そこに「基地所在国の市民のため」という視点はありません
 だって、そんな視点があるなら、住民を追い出して基地をつくる…なんてコト、できるはずないもんね)


…と、いろいろ書いてきましたが、もし、この人がアメリカ大統領になったら

ホントに在日米軍撤退という道筋が見えてくる…というのであれば

ぼくはその1点だけをもって、この人を歓迎したい気持ちがないわけではありません

…と言いつつ、この人がホントに「アメリカにとっておいしい在日米軍基地」をなくす…なんてことを

するわけがないのでありまして、この人が大統領になれば、

日本に今以上の負担(=思いやり予算)を要求してくることは間違いないと思います