映画「マルクス・エンゲルス」

映画「マルクス・エンゲルス」を観た。
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学生時代、『共産党宣言』はななめ読み、『資本論』やこの手の難しい本はスルー。
この二人にはほとんど縁がなかったが、貧富の差の拡大した今の世の中、再度見直したい二人である。

高名なデザイナー、ウィリアム・モリスもこの二人の後を追いかけた・・
実はモリスは「マルクスの正統な後継者」とある本で知って驚いた。

モリスもマルクスエンゲルスもみんな裕福な家に生まれている。
そんな彼らが・・金持ち優遇の世の仕組みに疑問を持ち、貧しい人達を助けるための理論にのめりこんだ。
裕福な身分に甘んじていることもできたのに、
弱者に寄り添って考えられるか否か??

これは感性の問題なのだろう・・。


映画の冒頭は貧しい人たちの薪ひろいの場面から始まる。
貧しい人たちが暖を取るため、あるいは落ちている薪を売って食べ物に換えるため
森に落ちた枝を集めているのだ。
ところがそれを馬に乗った官憲が襲撃する。
「木材窃盗取締り法」ができたためだ。
逃げ惑う農民を容赦なくサーベルで叩きのめし、中には撃ち殺す官憲も・・。

落ちている枝くらい、ただで拾わせてあげたらいいのでは?と思う。
しかし、産業資本家によって、森の木は落ちている枝一本さえも彼らのものとなり、
生活に困って枝を拾う者は悪法によって罰せられ、時に殺される。
あまりに酷い。
所有とは何か?を考えさせられる。

若いマルクスは「ライン新聞」の記者として、この醜悪な「木材窃盗取締り法」を
新聞で批判する。黙って見過ごすことができないのがマルクスなのだろう。


一方のエンゲルスは、父親が共同経営しているマンチェスターの紡績工場の息子。
が、この工場は女子工員を安い賃金で長時間働かせているようだった。
父親のセリフがまるで竹中平蔵
「このくらいの条件で働いてもらわないと利益が出ない」とはっきり言う。
「あなた方は貧乏になる権利がある。」「貧乏をエンジョイしてくれ。」「成功した者の足をひっぱるな!」(←これは竹中平蔵の言葉だけど、この場面でも使える!)

女子工員の一人が怒って出ていくと、貧民街まで後を追っていくエンゲルス
エンゲルスも経営者ではあるが、父親が不当な労働条件の下で働かせることを快く思っていなかったのだ。
どこまで事実か不明なれど、実際、貧民屈の女子工員と階級差を越えて結婚して、同志として長く連れ添ったようだ。エンゲルスの誠実さを思う。

この若き二人が出会うべくして出会い、『共産党宣言などの名著を著していった。
二人の友情は長く続き、マルクス亡き後は、エンゲルスが彼の著作などをまとめた。

日本では格差社会が広がって、弱者が生きにくい世の中になってきた。
こちらもまた、マルクス・エンゲルスの考え方を見直す時かもしれない。
本来、「社会主義」とは「共産主義」のことではなく、「社会民主主義」のこと。
西欧は、日本やアメリカと違って底辺に社会民主主義思想が流れている。
その思想の源流には、マルクスエンゲルスがいる。

<あらすじ>
若きマルクスエンゲルスの友情は世界の未来を大きく変えた…
永遠の名著『共産党宣言』(1848)が誕生するまでの激烈な日々を描く歴史的感動作

1840年代のヨーロッパでは、産業革命が生んだ社会のひずみが格差をもたらし、貧困の嵐が吹き荒れ、人々は人間の尊厳を奪われて、不当な労働を強いられていた。20代半ばのカール・マルクスは、搾取と不平等な世界に対抗すべく独自に政治批判を展開するが、それによってドイツを追われ、フランスへと辿りつく。パリで彼はフリードリヒ・エンゲルスと運命の再会を果たし、エンゲルスの経済論に着目したマルクスは彼と深い友情をはぐくんでゆく。激しく揺れ動く時代、資本家と労働者の対立が拡大し、人々に革命的理論が待望されるなか、二人はかけがえのない同志である妻たちとともに、時代を超えて読み継がれてゆく『共産党宣言』の執筆に打ち込んでゆく――。