小出裕章さん 飯能講演会 2012.3.24 第2部質問コーナー(1)

2012年3月24日 飯能市市民会館で行われた、
小出裕章氏講演会の第2部質問コーナーです。

<質問の内容>
●リスクと避難-現在の状況で東京で育児をするリスクと覚悟・避難するべきか?

分かる事は被ばくをする事でどれだけの危険を負わなければいけないかという事。
1年間に1ミリシーベルトの被ばくをするという事は、
それによって2500人に1人が癌で死ぬという危険を覚悟すること。
子どもの場合には平均的な人に比べて4倍も5倍も危険が高い.
赤ん坊の場合には1ミリシーベルトの被ばくをさせてしまうと
500~600人に1人はいずれ癌で死ぬ危険を負わされるという危険度です。
もし、1ミリシーベルトじゃなくて、10倍の10ミリシーベルトの被ばくをすることであれば、その10倍の危険を負わなければいけない。
つまり子どもであれば、50人か60人に1人がいずれ癌で死んでしまうという
そういう危険を受け入れる事が出来るかできないかという、そういう量です。
(※高校の一クラスに1人って感じ・・・)
(※これが木下黄太さんがいうロシアンルーレット・・・)
ただしそれは1年間に1ミリシーベルト、あるいは10ミリシーベルトといった時の量をわたしは言っている訳で、
それが2年3年4年5年と続いていけば、それをまた順番に上乗せされて受けるという事なんですね。
それが私が皆さんにお伝えできる、どれだけの危険があるかという、
リスクがあるかという答えです。

では、そのリスクを避けるために、避難をした方がいいのかどうなのか?という事になってしまうと、申し訳ありませんが、私にはわからないのです。
逃げるという事は大変な重荷を背負う事になると思います。
生活を、要するに捨てる。あるいは自分の命の源であった大地を捨てるという、
農民や、酪農家畜産家にとっては、そうなってしまうわけで、
その重荷というのは、多分一人ひとり全員違うんだと、思います。
やはりお一人お一人に判断していただかなければ、いけないとおもいます。

それも家族全員で逃げるという場合と、男親は生活のために被ばく地に残して、母親と子供だけ逃げるという時の重さというのは、やはり、その人たちに判断していただかなければいけないものだと思います。

みなさんが悩んで、切実に、この質問をわたしにして下さっているという事はもちろんわかります。でも、一人ひとりの方がご自分の重荷というのを測って、決めていただくしかないと、いうのが私の答です。


●いざという時に逃げるべきかどうか?
 今後非常事態が起こった場合小出さんの意見をいち早く知るにはどこに連絡したらいいか?


今後起こることの危険は、私は先程二つあると聞いていただいたつもりです。

一つは溶けてしまった炉心が、どんどん防壁を突き破って、地下にのめり込んでしまって、それが地下水に接触して汚染を広げるという、その危険が一つです。
ただそれは、ジワジワジワと進行していく。海を汚して、じわじわと食べ物を汚すという、そういう、危険に結びついていくんだと思います。
ですから、そちらはまだ、いざという時になってどうするべきかという、
緊急性を持って判断を迫られる事は無い方です。

もう一つの危険は、
4号機の使用済み燃料プールというのが、今、壊れたまま、宙ぶらりんのようになっているのですね。
東京電力ももちろんそれを知っていて、かなり早い段階で耐震補強工事というものを施したという事になっています。傾いてしまった使用済み燃料プールの下に、沢山の鉄柱を並べて、それ以上壊れないようにするという事をやったと言っているのですけれども・・。あの現場はものすごい被ばく環境で、そこで作業者が仕事ができるというような状態ではなかったのです。
ですから、どこまでちゃんとした耐震補強工事が出来たか不安を感じています。
もし、これから大きな余震が起きて使用済み燃料プールが崩壊するような事になれば大変だと、危惧している訳です。
そして、あのプールの底には使用済み燃料が広島の原発に比べて、
約4000発分に相当するぐらいの放射能があるのです。
これまで大気中に放出された放射性物質は、日本政府の公表によっても170発分。
そういうものに比べてなおかつ10倍というような放射性物質
むき出しに環境に出されてしまうという可能性がある訳です。

ですから、「大きな地震が起きないでくれよ」と、私は今願っていますが、
もし、起きてしまえば、これまで以上の放射能が東京にも飛んでくる可能性はあると思います。

みなさんが注意をしなければいけないのは、
福島第一原子力発電所の周辺で、大きな地震が起きたか起きないかという、その事です。

もう、毎日のようにあの辺で余震が起きていますので、私は毎日ヒヤヒヤしていますけれども、
本当に大きな余震が起きた、という事が分かった時には、
避難も含めて皆さんも準備を始めた方がいいだろうと思います


東京まで放射能が飛んでくるには、多分、半日から一日ぐらいの猶予はあると思いますので、その時間のうちに決断をして、
風下に入らないようにするという事です。大切なことは。

距離が離れていても風下に入ったらおしまいです。
充分に気象条件等に注意をしながら、逃げていただくしかないと思います。

私に連絡が取れるかどうかという事で言えば、取れないと思います。
私は、もしそんな事になっていれば、きっと、自分のできることのために、走り回っていると思いますし、ご質問を受けるような余裕は、多分ないだろうと思います。
ただし、私にできる限りの発信はし続けるつもりです。
マスコミ、あるいはネット上の情報というのを注意してみていただければいいと思います。


●1号機では圧力容器にも格納容器にも穴が開いているという事だが、その水は何処へ行っているのか?

原子炉というものは、いついかなるときにも冷やしておかないと壊れてしまうと言う事を今日初めに聞いていただきました。

放射のがある限り、その放射能が猛烈に発熱をしている訳ですから、
冷やさなければ終わり。
ですから一年経った今も、とにかく冷やそうって言って、水をどんどん入れている。
原子炉の炉心という部分にも入れているし、格納容器というところにも入れている。
でも、もうすでに圧力容器という巨大な圧力がまはそこが抜けてしまっているわけだし、
格納容器という放射能を閉じ込める最後の防壁であるその容器も、
実はもう、あっちこっちに穴が開いてしまっているのですね。

だから、どんどん水入れなければいけないのだけれども、入れた水はどんどん漏れている。
原子力発電所の敷地の中に、10何万トンもの汚染水が溜まっていると言われてきました。

じゃぁいったいどこに溜まっているのか?というと、
ジャージャー水を入れたのが漏れて、あちこちに流れていっているわけですね。
たとえば原子炉建屋の地下であるとか、タービン建屋の地下であるとか、
そういう地下の構造物と言われているところに汚染水が溜まっていると、政府と東京電力が言ってきたのです。

そういう構造物はみんなコンクリートでできているんです。
水が漏れないように出来るコンクリートは無い。
つまり、コンクリートの中に汚染水が溜まっているという事は、
どんどん漏れているという事なんです。

ある時に、ピットという部分で、海面より上の部分にピットの一部がでていて
そのむき出しになったピットから、滝のように汚染水が流れ落ちているというのを見つけた事があって、慌ててそこを「何とか塞がなければいけない」といって、
マスコミやなんかでも大きく取り上げました。

それで、ようやくそこは塞いだんですが、実はほとんどの構造物は地下にある。
原子炉建屋の地価、タービン建屋の地下、トレンチもピットも本当は全部地下にある。それがみんな割れて、そこらじゅうから漏れている。

たまたま
見えたところだけ塞いだってダメだ。
私は敷地に溜まっている汚染水をどんどん安全な場所に移さなければいけないと主張して、そのための方策を3月の段階で提案をしました。
私の提案は巨大タンカーを連れてきてそれに移せという、提案でした。

巨大タンカーは10万トンとか20万トンの原油を入れる能力がありますので、
そこになんとか核汚染水を移すと、そういう提案をしました。
そうすると
、政治家の方も口をそろえて、「それは必要だからやります」といったのですけれど、結局何にもやらないまま、汚染水はいまだに、どんどん漏れていってしまっているという状態にあります。
水は必ず入れなければなりません。
入れなければいけないけれど、入れたものは海へ流れていってしまっているという、そういう状態になっています。
岩手県野田村の木くずを日高市にある太平洋セメントが受け入れるという事で意見が分かれています。
100ベクレル以下であっても受け入れを拒否する自治体があるのはなぜですか?
100ベクレルというのが本当は危険な数値なのか、それとも受け入れる側が恐れすぎているのか。


被ばくに関しては安全量は無いのです。
ですから1kg当たり100ベクレルという、そういう放射能であっても、安全なわけではないのです。
たとえば、食べ物の事で言えば、今現在1kg当たり500ベクレルというのが暫定規制値といわれています。
お米でも、それを下回ればいいという数字です。
4月からは100ベクレルという、今数値で示した、それは瓦礫のことですけれども、
食べももの1kgあたり100ベクレルというような基準にこれからなるのです。

では1kg当たり100ベクレルのお米は安全か?と言えば、安全ではないのです。
福島第一原子力発電所の事故が起きる前に、
日本のお米というのは1kg当たり0.1ベクレル程度しか、汚れていなかった。
100ベクレルというのは、その1000倍の汚染をもう、許すしかないという、そういう基準値なのです。

それを焼却するような事をすれば、何百倍何千倍と濃縮された焼却灰がでてくる訳ですから、もちろん注意して取り扱わなければいけないのです。
焼却工場で働かなければいけない人々は、普通の労働者です。
私のように元から放射能を取り扱うという事を覚悟して、
放射能業務従事者というレッテルを甘んじて受け入れて仕事しているのではない人たちが、普通の現場で働いている訳です。
だから、1kg当たり100ベクレルであったとしても、私は注意をしなければいけないと思います。
●国ががれきの広域処理にこだわる理由は何でしょうか?
 何故被災地に焼却炉を建てないのか理解できません。

私も理解できません。
放射能を取り扱う時の原則というのは、放射能はその場所でなるべくコンパクトに隔離するというのが原則です。薄めてはいけないというのが放射能に向き合う時の原則です。
今、日本の国がやろうとしているのは、汚染したがれきを全国にばらまいて、
それぞれの焼却施設で燃せえと言っている事ですから、もともと原則に反しています。
そして、出てきた焼却灰はそれぞれの自治体で、勝手に埋めてしまえと言っている訳ですから、
それも原則に反しています。

私は放射能を取り扱う原則にのっとれば、どうやればいいかと言えば、そこに書いてある通りです。
要するに、
汚染したがれきのある現地に専用の焼却施設を造って、そこで焼くと、そして出てきた焼却灰も、集中して管理をするというやり方がいいだろうと思います。

なんで国がいつまで経っても、それをやらないのか、大変私も不思議におもっています。