ラジオ・フォーラム 2月2日 小出裕章ジャーナル文字起こし

2月2日 ラジオ・フォーラム「小出裕章ジャーナル」文字起こし

2013年2月2日に放送された「ラジオ・フォーラム第4回」番組での「小出裕章ジャーナル」の内容を文字起こし致しました。
【主なお話】
「手抜き除染と今後の影響について、除染作業で今後も発生し続ける汚染廃棄物をどうすればよいのか」
【パーソナリティー
湯浅誠(ジャーナリスト)
【電話出演】
小出裕章京都大学原子炉実験所助教
▼ラジオ・フォーラム
http://www.rafjp.org
▼文字起こしは以下。
◆湯浅
ここからの時間は、京都大学原子炉実験所助教小出裕章さんに登場していただきます。
小出さん、よろしくお願いします。
さっそくリスナーの方から、こんな質問が寄せられているんですね。
え〜、福島第一原発周辺の除染作業で、取り除いた土や枝葉、洗浄に使った水の一部を、現場周辺の川などに捨てる手抜き除染が横行していることが明らかになりましたが、これは地元住民たちにどのような影響があるのでしょうか?というご質問なんですけれども。
◆湯浅
ま、これ、連日ニュースになっていましたが、まずそもそもまあ除染というものの中身と意味というものをまずまあ手抜き云々の前に確認していきたいんですけれども。
◆小出
はい、ありがとうございます。
それが大切なことだと思います。
◆湯浅
ですよね〜。
そもそも除染とは何かというところからお願いしてよろしいでしょうか
◆小出
はい、え〜、除染というのは文字通り、汚れを除くと書くわけですけれども、汚れというものの正体は放射能なわけで、放射能を消すということは、人間にはできないのです。
つまり、汚れを除くということは、基本的にできないことなのです。
で〜、私たちに出来ることは、今ここにある汚染を、隣の場所に移すであるとか、集めてとにかく隔離をするとか、そういうことが唯一出来ることなのです。
え〜、それで人々の被ばくを減らそうというわけですから、人々が生活している場所にある放射性物質を、とにかく集めて生活をする環境から隔離をするということが、今言われている除染ということの中身です。
◆湯浅
はい、具体的にはですね、地域の中には、家もあれば川もあれば山もあれば林もあればなんだと思うんですけど。
その、除染作業というのは、具体的に何をやることを指すんですか。
◆小出
え〜、皆さんもちょっと想像していただきたいのですが、今現在の汚染というのは、湯浅さんが今おっしゃってくださったように、もうすべてが汚れてしまっている、家も道路も、え〜、いわゆるまあビジネス街があればそこも、そして山も畑も田んぼも林もとにかくみんなが汚れてしまっているわけで、その汚れのすべてをどこかに集めて隔離するということは、もともと出来ないのです。
え〜、何か日本の政府は除染をすれば人々が今汚れている場所に帰れるかのように宣伝をしているわけですが、実際にはそんなことは到底できない
で〜、それでも被ばくを少しでも減らしたいというのであれば、汚れてしまった家の屋根を掃除するとか、人々が歩き回るまあ道路、あるいは庭先とかですね、そういうところの汚染だけは、少しでも集めて、え〜、隔離をしようということをやってきたわけです。
え〜、でも、まあ非常に限定された効果しかまずはありませんので、え〜、除染によってきれいなるという風にまずは私は思わないほうがいいと思います。
◆湯浅
ふぅん、報道なんかでも出てましたが、あの小学校の校庭の土をこう剥ぎ取って、校庭の片隅に集めるとか、屋根をこう洗浄機で水ぬぅで洗浄するとか、ま、そういったことだけども。
これはまあ、要するに屋根の上にあった放射能を、その地上に降ろす、あるいはまあ校庭の全面に薄く広がっていたのを、固めて、え〜、校庭の隅に持って行くっていう、いわば移染ですよね。
◆小出
そうですね。
汚れを移動させるという意味の移染が正しい言葉遣いだと思います。
◆湯浅
はい、ということであって、まあそれによって別に減らせるわけじゃないんだと。
◆小出
そうです。
◆湯浅
残念ながら、人間の力では、え〜、放射能を減らすということはできないんだということですね。
◆小出
はい、おっしゃる通りです、はい。
◆湯浅
そうなりますと、手抜き除染と、割とその衝撃を持って受け止められたりしたわけですが、これは結局どういう影響を及ぼすことになりますかね。
除染そのものの意味がそうだってことになると。
◆小出
はい、基本的にその除染というものは出来ないで、移染でしかないというのは、今、湯浅さんがもう話してくださった通りなのです。
ただし、そうではあっても、う〜ん、少しでも人々の被ばくを減らすべきだという意味では私もそうだと思いますし、え〜、小学校の校庭であるとか、幼稚園の園庭であるとか、子どもたちが集中的に時を過ごす場所の土は私は必ず剥ぎ取らなければいけないと思っています。
え〜、そして問題は、それをどこかに隔離をきちっとしなければいけないと、いうことなわけですけれども、手抜き除染というものは、隔離をするのではなくて、むしろその汚染を拡げてしまうというようなことをやってきてしまったということなんですね。
◆湯浅
バラ撒いてしまうということですね、川に。
◆小出
はい、そうです。
水で流したりですね、川に落としてみたりですね、むしろ隔離ではなくて拡散をしてしまっているわけで、え〜、意味が無い以上にやってはいけないことをやってしまっているということです。
◆湯浅
う〜ん、なるほど。
まあ、要するに除染は、移染だけども、手抜き除染というのは、い〜いわば拡染ですね。
放射能を拡散しちゃってるんだということですね。
◆小出
そうですね、はい。
◆湯浅
集めた落ち葉をまあ川に流しちゃうとかですね、ということになると、まあ川を伝って、え〜、それが広がっていくわけですが。
◆小出
そうです。
汚染が広がっていくわけですから、もともと汚染の無かった下流のほうにですね、汚染が無かった場所があるとすれば、そちらのほうに汚染が移っていってしまうわけですし、え〜、最終的には海にまた汚染が流れ出てしまうということになってしまいます。
◆湯浅
ん〜、そうすると途中で川から水を引いているいる水田の稲なんかにも影響が出る恐れなんかも。
◆小出
もちろん、もちろんですね、汚れたものを新たに川に落とし込んだわけですから、その分だけの汚染は、その水を使っている地域に汚染としてまた上乗せされてしまうということになります。
◆湯浅
ん〜、それのその〜人体に対する影響ってのは、何らかの形でこう確認出来るものなんですかね。
◆小出
あの〜、事故直後に枝野さんがしきりに「直ちには影響が出ません」というようなことをおっしゃっていたわけですが、直ちに出ないということは、え〜、その裏を言えば、長期に渡ったときを考えれば影響が現れるでしょうという意味なんですね、はい。
その意味というのは、私はまあ基本的にはガンだと、思っていますが、え〜、あらゆる被ばくは危険ですし、え、特にまあ既に科学的に証明されているという意味ではガンが増えてくると、いう形の影響が出てくると思います。
◆湯浅
ん〜、先ほどおっしゃったその移染先ですよね。
◆小出
はい。
◆湯浅
今はまあ校庭の片隅にあったり、自治体の中の仮置き場にあったり、まあそういうところにあるわけですが、そこの放射能は高くなってしまっているわけで。
◆小出
そうですね。
◆湯浅
これを、じゃあ人間の力で減らせない以上は、どこかに持って行って集約して、まあ影響を低く抑えないといけないと、いうことになるわけですが、これについては。
◆小出
私はその放射能のまあお守りをするという仕事を40年ほどやってきているのですが、その私の原則から言うと、放射能は出来る限りまとめて、集中的に管理をするというのが正しいと思いますし、え〜、あちこちにその手抜き除染のような形でバラ撒くのは、もう基本的に間違えているし、集めたものも、どこかに集中的に責任をもって管理出来る場所に集めるべきだと私は思います。
で、その場所ということなのですけれども、今日本の政府のほうは、各県に一つずつでも置き場を作って、中間貯蔵とかいう言葉でまあ埋め捨てにしてしまおうとしているわけですが、え〜、汚染というものの正体は、もともと東京電力福島第一原子力発電所の原子炉の中にあった放射性物質なわけで、東京電力のれっきとした所有物なわけですから、東京電力に返すというのが私は原理的にいいだろうと思います。
で〜、本当のことを言えば、福島第一原子力発電所の敷地に返すのがいいのですが、今あの場所は、え〜多数の労働者たちが放射能相手に戦争を戦っている場所ですので、その場所に新たに放射能を持ち込むというのはたぶん出来ないと思います。
で、私の提案は、福島第二原子力発電所という広大な敷地がすぐ南にありますので、そこを放射能のゴミ捨て場にするということが正しいだろうと思います。
え〜、それぞれの県で引き受けてしまうのではなくて、東京電力に返すというような方策を探ってほしいです。
◆湯浅
ん〜、かなりの量にのぼると思うのですが、福島第二原発の敷地で吸収出来る…。
◆小出
分かりません。
それはもうどこまで丹念に集めるかということなわけですけれども、福島第二原子力発電所の敷地はかなり広大な敷地ですし、え〜、東京電力はまた福島第二原子力発電所を再稼働させるというようなことを言っているわけですね。
え〜、周辺の何十万、何百万の人たちにこれだけの苦難を押し付けながら、自分だけは無傷でまた原子力発電所を再稼働させるというようなことは、私は正しいと思いませんので、まずは福島第二原子力発電所放射能のゴミ捨て場にする、それでも足りなければ、また次の手段を考えると、いうやり方がいいと思います。
◆湯浅
ん〜、なるほど。
小出さん、ありがとうございました。
◆小出
いいえ、ありがとうございました。
◆湯浅
以上、小出裕章ジャーナルでした。
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