守田敏也さん講演録 17〜 泣けるほどに美しいトルコ 原発建設予定地

守田敏也さん講演録 〜 泣けるほどに美しいトルコ 原発建設予定地

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【旅の後半。トルコ原発建設予定地訪問】

チェルノブイリとフクシマ」は、世界の人々の間に共通に記憶された非常に大きな事故であり事件です。この悲劇を通じて、世界の方向を変えようという・・そういう思いを持って、ドイツからトルコに向かったので、身体のコンディションは悪かったのですが、テンションは上がりっぱなしでした。
トルコでは初めにイスタンブールで講演させてもらって、翌日にシノップという原発建設予定地に行きました。
黒海に面したところに予定地があるのですけれども、とてもきれいなところなのですよ。「なんでこんなきれいなところに原発を押し付けようとするのだろう」と思うと、何だか腹立たしさを越えて、涙が出てきてしまうというか、そんな思いにさせられるところでした。

ちょうど東西にひろがるトルコの大地の真ん中あたりの黒海側で、海に少し突き出した小さな半島があるのですが、そこの森林を刈り取って、原発を作ろうとしているのです。ちなみに黒海を隔てた対岸にあるのが、今、大変なことになっているクリミア半島です。

予定地の周りは広々としたきれいな牧草地帯です。牛がゆったりと放牧されています。最近、僕は少しだけ牧畜のことも研究していて、これはみなさんに話しても受けないかもしれないことなのですけれど、素晴らしいウンコがいっぱい落ちているのですよ(笑)。牛というのは、ちゃんとした良い草を食べていると、いいウンコをしてくれるのです。牛舎で飼われていて、草ではなくて穀物を与えられている牛は、ビチャビチャの臭いウンコをするのです。お腹の状態がよくないのですね。これに対して自然の状態に近い形で、ちゃんと野山を歩いて、自分で草を食べている牛のウンコは、ころんとしてるのです。そういうのがいっぱい落ちていて、そのことでも、ああ、いいところだなあと思いました。
 
原発予定地に一番近いところは、今は保養地になっています。リゾート地ですね。夏はたくさんの方が避暑に訪れるのだそうです。
周りは漁村でもあって、瀟洒な船が走っています。入江を掘り下げることをしていないので大きな船は入れない。小さいサイズの船で、ゆったりと漁を続けてきているのです。向こうの漁民の方たちは気が良くて、手を振ったら必ず船の上から振り返してくれます。
この半島は自然の宝庫でもあります。川もちょうど半島の付け根あたりに流れ込んできていて、たくさんの栄養分を運んでくるのだそうです。そのため動植物がすごく豊かなのです。この地域をずっと歩いていても泣けましたね。こんなにいいところに、自分の国である日本が原発を持ってこようとしているのかと考えると感傷的になってしまいました。
 
この日のことがあって、のちにイズミルという都市に移っての講演の後に僕は感極まってしまって「シノップを僕の故郷と思って闘います」って言ってしまったのです。
そうしたらそしたらみなさん、ものすごい拍手をしてくれました。シノップでの講演のときも、最後に人々が立ち上がってスタンディングオベーションをしてくれました。「日本人は熱いぜ!」みたいに感じてくれたようなのですが、僕からしたら、トルコ人のほうが圧倒的に熱くて、あてられてしまったようにも思います(笑)。まあ、そんな、今、振り返っても心が熱くなるような交流をしてくることができました。
続く・・