この機会に、日本軍慰安婦問題を徹底して学び直そう

この記事のURL: http://blogs.yahoo.co.jp/henatyokokakumei/39240679.htmlさまの記事から転載させて戴きます。
 
澤藤統一郎

この機会に、日本軍慰安婦問題を徹底して学び直そう

http://article9.jp/wordpress/

8月5日、朝日新聞慰安婦問題での吉田清治証言を誤りと認め過去の16本の掲載記事を取り消すとして以来の朝日批判が喧しい。これに、池上彰への記事掲載拒否問題が油を注いだ。

朝日への口を揃えてのバッシング。総批判、総非難の大合唱である。あたかも、一羽のムクドリが飛び立つと、あとのムクドリの大群が一斉に同じ方向に飛び立つという、あの図を思い起こさせる。もちろん、朝日批判に十分な理由はある。これに加わるのは楽だ。

しかし私は、何であれメディアの付和雷同現象を不愉快に思う。ジャーナリストとは、所詮はへそ曲がりの集団ではないか。他人と同じ発想で、同じように口を揃えることを恥とすべきだろう。

とりわけ、吉田清治証言撤回を、日本軍慰安婦問題全体が虚構であったような悪乗り論調を恥とすべきだ。吉田証言の信憑性の欠如は、20年前には公知の事実となっていた。たとえば、吉見義明の「従軍慰安婦」(岩波新書)は1995年4月の発行。巻末に、9ページにわたって参照文献のリストが掲載されているが、吉田の著作や証言はない。もちろん、本文での引用もない。

吉田証言が歴史家の検証に耐え得るものでなかったことについては、貴重な教訓としなければならない。しかし、他の多くの資料と証言とが積み重ねられて、日本軍慰安婦問題についての共通認識が形成されてきた。いまの時点で、吉田証言に信憑性がなかったことを言い募っても、歴史の真実が揺らぐわけではない。

この機会に、日本軍が一体何をしてきたのか、その歴史を見直そう。日本軍の慰安所は、いつからどのようにして設置され、どのように運営されていったのか、どのようにして慰安婦は徴集されたのか、どこの国の軍隊にもあったものなのか、そのような立場におかれた女性がどのような行為を強いられたか、戦時どのような運命を忍受したか、そして戦後どのような人生を送ったのか。さらに、今、世界はこの問題をどう見ているのか。国際法的にどのように問題とされているのか。

以下が、国連自由権規約委員会における対日審査最終所見(本年7月25日)の「慰安婦」関連部分の日本語訳(wamホームページから)。

〔14〕委員会は、締約国(日本政府)が、慰安所のこれらの女性たちの「募集、移送及び管理」は、軍又は軍のために行動した者たちにより、脅迫や強圧によって総じて本人たちの意に反して行われた事例が数多くあったとしているにもかかわらず、「慰安婦」は戦時中日本軍によって「強制的に連行」されたのではなかったとする締約国の矛盾する立場を懸念する。
委員会は、被害者の意思に反して行われたそうした行為はいかなるものであれ、締約国の直接的な法的責任をともなう人権侵害とみなすに十分であると考える。
委員会は、公人によるものおよび締約国の曖昧な態度によって助長されたものを含め、元「慰安婦」の社会的評価に対する攻撃によって、彼女たちが再度被害を受けることについても懸念する。委員会はさらに、被害者によって日本の裁判所に提起されたすべての損害賠償請求が棄却され、また、加害者に対する刑事捜査及び訴追を求めるすべての告訴告発が時効を理由に拒絶されたとの情報を考慮に入れる。委員会は、この状況は被害者の人権が今も引き続き侵害されていることを反映するとともに、過去の人権侵害の被害者としての彼女たちに入手可能な効果的な救済が欠如していることを反映していると考える。

締約国(日本政府)は、以下を確保するため、即時かつ効果的な立法的及び行政的な措置をとるべきである。
(i) 戦時中、「慰安婦」に対して日本軍が犯した性奴隷あるいはその他の人権侵害に対するすべての訴えは、効果的かつ独立、公正に捜査され、加害者は訴追され、そして有罪判決がでれば処罰すること。
(ii) 被害者とその家族の司法へのアクセスおよび完全な被害回復。
(iii) 入手可能なすべての証拠の開示。
(iv) 教科書への十分な記述を含む、この問題に関する生徒・学生と一般市民の教育。
(v) 公での謝罪を表明することおよび締約国の責任の公的認知。
(vi) 被害者を侮辱あるいは事件を否定するすべての試みへの非難。

以上の文脈で語られる「強制」に関して、ことさらに狭く定義しておいて「強制性を否定する」論法に惑わされてはならない。軍の管理のもとにおかれた女性たちが、戦地で「自由」であったはずはない。吉田証言の類の「慰安婦狩り」の事実があろうとなかろうと「強制」は自明であろう。

とりわけ自ら慰安婦として軍に強制されたと名乗り出た人々の証言は重い。それが法廷でのことであればなおさらのことである。本年3月に高文研から出版された、「法廷で裁かれる日本の戦争責任」は、その集大成として貴重な資料となっている。

同書は、「従軍慰安婦」、強制連行、空襲、原爆、沖縄戦などの日本の戦争責任を巡る50件の訴訟について、各担当弁護士が解説したものである。

第Ⅱ章 「従軍慰安婦」は、以下の8本の解説記事。
※韓国人従軍「慰安婦」訴訟を振り返って
※関釜朝鮮人従軍慰安婦」・女子挺身隊公式謝罪訴訟
※フィリピン日本軍「性奴隷」裁判
※オランダ及びイギリス等連合国の捕虜・民間拘留者(「慰安婦」を含む)損害賠償訴訟
※台湾人元「従軍慰安婦」訴訟
※中国人元「慰安婦」訴訟と山西省性暴力被害者訴訟
※中国人「慰安婦」第二次訴訟 最高裁判決と今後の闘い
※中国人「慰安婦」訴訟・海南島事件

多くの外国人女性が、日本軍にどのように人格も人権も蹂躙されたかが具体的に描かれている。
膨大な証言が積み上がっての「日本の戦争責任」なのだ。吉田証言があろうとなかろうと。
(2014年9月4日)