報ステのイスラム国事件の「検証」と捏造 - 復活した「政府関係者」

報ステイスラム国事件の「検証」と捏造 - 復活した「政府関係者」

http://pds.exblog.jp/pds/1/201503/06/19/c0315619_16492011.jpg昨夜(3/5)、報ステの小特集で、イスラム国に拘束された後藤健二の解放交渉について「検証」する報道があった。「検証」という看板は真っ赤なウソで、実は政府側がアリバイ工作のために捏造したフィクションを尤もらしく演出してデリバリーしただけにすぎない。イスラム国事件については、時間が経つほどに真相が隠され、政府の失態や不作為を繕うためのウソで置き換えられ、それが「事実」としてマスコミ報道で固められて、国民が信じ込まされる過程が続いている。周知のとおり、イスラム国事件については、2/10から政府の検証委の作業が始まっていて、4月に報告書を提出する予定になっている。ちょうど現在がその中間地点で、4月に発表する「検証」のアウトラインが固まった時期なのだろう。4月の「検証」内容はこうなりますという、予告を政府がマスコミを使ってやっている。4月に出す報告の事実説明について、国民がそれを意外に思わないように、あれ、おかしいな、話が前と違うじゃないかと波風が立たないように、スムーズに納得了解するように、一ヶ月前となる3月の時点で単純化したstoryを刷り込み、観念の下地を作っているのである。きわめて周到で狡猾な隠蔽工作だ。手が込んでいる。昨夜、惠村順一郎は、「こういう報道番組の検証によって、一つ一つ薄皮を剥ぐように一連の経過が分かってきますよね」と言った。

http://pds.exblog.jp/pds/1/201503/06/19/c0315619_16493353.jpg昨夜の報ステの「検証」報道の中身に疑問を感じた視聴者は、この惠村順一郎のコメントにも不審な臭いを感じたことだろう。惠村順一郎は朝日で外務省の担当をやっていた経歴がある。4月からは(突然の)番組降板の身で、出直しの境遇で業界で生きていかないといけない。ここで外務省に恩を売るのは悪くない処世だろう。昨夜の報ステの「検証」は、誰が誰に取材して明らかになった事実なのか、裏付け情報を全く表に出さない「検証」報道だった。例によって、「関係者の取材で明らかになった」という説明だけだ。おそらく、例の、1/21の時点でマスコミにリークしたあの外務官僚が、またここで復活登板しているのに違いない。テレ朝などのマスコミが、こうやって、裏付けの証明を明確にせずに「取材の結果」として「事実説明」を並べても、大衆はそれを疑うことはしない。マスコミの報道だからと、その威光と信用を根拠に簡単に信じ込む。けれども、私のような無名の市民が、どれほど情報を整理分析して論理的に推理を組み立てても、裏付け証拠のないデマだと罵倒され、唾を吐かれ、陰謀論だと侮辱されて袋叩きにされる。昨夜、Twでネットの反応を確認したが、誰からも、この「検証」を捏造だと指摘する声が上がっていなかった。大衆は忘れやすい。マスコミ報道に弱い。前後の矛盾に気づかない。そしてセンチメントに流される。

http://pds.exblog.jp/pds/1/201503/06/19/c0315619_16494473.jpg昨夜(3/5)の報ステの「検証」報道で、最も重大な捏造ポイントだったのは、誘拐犯(イスラム国)による妻へのファースト・コンタクトが12月3日だった点だ。この事件を普通に追いかけていた者は、妻へのメールが11月から届いていたという認識を持っているはずだ。1/22の朝日の記事がネット上に残っていて、「妻あてに昨年11月~今年1月、後藤さんの拘束を伝え、身代金を要求するメールがイスラム国関係者から送られていたことが政府関係者への取材でわかった。妻は相手側と約10通のメールをやりとりして、後藤さん本人の拘束が間違いないことを確認した」とある。私がこの事件でずっと引用していた毎日の1/21の記事は、今はネットから消されているが、「昨年11月に『イスラム国』側から後藤さんの家族に約10億円の身代金を要求するメールが届いていた」と書いていた。週刊ポストの1/26の記事では、「後藤氏の妻の携帯電話に約10億円の身代金を要求するメールがあったのは昨年11月初旬だった。本誌は11月中旬にいち早く、『後藤氏失踪』の情報を入手し、取材に動いた。当時、外務省関係者に接触すると、身代金交渉を行なっていることをはっきりと認めた」とある。1月下旬、後藤健二が殺害される以前の時点、マスコミ報道とわれわれの理解は、イスラム国が11月に妻にファースト・コンタクトしたというものだった。

http://pds.exblog.jp/pds/1/201503/06/19/c0315619_16495536.jpgそれが、いつの間にか12月3日に改変され、菅義偉の会見や国会での答弁で公式化され、マスコミもその日付で「事実」を確定させていく。1月末から2月初、政府とマスコミが出す事件の説明と見解は刻々と変わり、イスラム国との接触の時期(when)を、日を追って後ろに遅らせてゆき、前に示した時間情報との矛盾を説明しない不自然さに満ちていた。ここで一つ、読者に面白い情報を提供したいが、2/24の朝日の紙面(36面)に、イスラム国事件を「検証」した特集がある。2/10の政府の検証委が立ち上がって2週間後の記事で、これも政府がマスコミ(朝日)を使って世論対策したものだ。特集面(36面)の中見出しに「11月下旬『拘束』とメール」「後藤さんの身代金も要求」とある。記事にはこう書いている。「『夫を拘束した』。昨年11月下旬、フリージャーナリスト後藤健二さんの妻のもとに英語で書かれたメールが届いた。後藤さんが10月下旬にシリアで行方不明になり、約1ヶ月のことだった。だが、このメールは差出人が定かではなかったことから自動的に『迷惑メール』に分類され、妻の目には留まらなかった。12月3日、2通目のメールが届く。これも迷惑メール行きとなったが、今度は妻は開封した」。政府と朝日の辻褄合わせに苦笑してしまう。要するに、こうやって、11月にメールが届いたというリーク説明(真実)と、12月3日という政府が公式確定した日付(虚構)との矛盾を調整しているのだ。噴飯な官僚のアリバイ工作を朝日が必死で支援しているのである。

http://pds.exblog.jp/pds/1/201503/06/19/c0315619_165049.jpgもう一つ、昨夜の報ステの「検証」の隠蔽工作として見逃せない点は、誘拐犯(イスラム国)からのメールの受信を3回のみだと説明したことだ。12月3日に最初のメールが届き、身代金を払う意思があるか尋ねてきた。本人の秘密確認の返信をしたところ、12月19日に返事が届いて、本人の拘束が間違いないものとなった。続いて1月5日に約20億円の身代金を要求するメールが届き、妻とコンサルタントが値引き交渉の返信を送った、としている。事件直後の1月下旬の報道では、相手側と10通のメールをやりとりした説明になっていた。その事実認識が変えられ、3回だけのやりとりになった。他の7回のメール交信分が捨象されている。おそらく、4月の「検証」報告書でも、この報ステで放送された「事実説明」が骨格となり、メールの受信は3回で、返信も3回だったという総括になるだろう。その頃には、10通のメールをやりとりしたという記事はネットから削除されているに違いない。事実と記憶の書き替えが行われている。そして、政府は交渉には直接タッチせず、後藤倫子とコンサルタントに任せ、12月24日に外務省の人間が自宅を訪れ、「身代金は払わない」ことを伝えたという話にした。これもかなりウソがある感じがする。12月24日の外務官僚の訪問は、実際には、このミッションの関係者のクリスマス・パーティではなかったのか。そもそも、「妻」だの「後藤夫人」だのと政府とマスコミは言うが、後藤倫子はJICAの大物職員で、れっきとした外務官僚なのである。一般の専業主婦とは違う。

http://pds.exblog.jp/pds/1/201503/06/19/c0315619_16501464.jpg政府がイスラム国と直接接触せず、間にコンサルタントを入れ、メール返信も妻からの文面の形式にしたのは、全て後からの責任逃れのためであり、日本の官僚らしい手口だ。無論、相手側はそれを日本政府からの返事だと思っているし、妻とコンサルタントが単独で返信しているなどとは考えていない。妻の方も、最初から外務省の中枢に連絡し、協議して指示を仰ぎ、言われたとおりの文面を返している。まさに重大な外交事件の当事者になっているのに、個人が勝手に政府の指示以外の返信をできるはずがない。妻の一存で、身代金の値引き交渉など荒唐無稽もいいところだ。誰がそんな非常識な話を信じるのか。今回の報ステの特集は、事実を捏造して隠蔽工作しつつ、同時に安倍晋三を批判する点が特徴だった。フランスの対応を大きく前面に出し、メール交渉を政府が引き取り、政府が直接にイスラム国と交渉して身代金を払って人質を救出した成功を評価し、言外に、日本もフランスのようにすればよかったとメッセージを発していた。朝日らしい報道であり、そこに見えるのは外務官僚の思惑である。この特集を企画しテレ朝に制作させたのは、1月末からの安倍晋三の巻き返しで粛清され、失脚してマスコミへのリークを途絶させた当の外務官僚だ。この外務省幹部は、身代金を払って後藤健二を取り戻そうとしたのである。11月から12月にかけて、官邸(安倍晋三)に掛け合い、身代金を払う仏西型の解決を模索していたのだ。が、安倍晋三に見殺しを強く指示され、それを断念したのだった。

4月の「報告書」では、無論、フランスがどうのこうのという部分は入らないだろう。身代金を払わない方針を妻に伝えたという件も、安倍晋三や官邸の関与は触れず、政府全体としてその方針で臨んだという話にするだろう。


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