無声映画を活弁で・・小津作品「東京の合唱」

友人の主催するムーザサロンにて、小津安二郎監督28歳時の作品 『東京の合唱(コーラス)』を観てきました。
   「無声映画活弁で楽しむ会」が始まったのは、ムーザの主催者片山ふえさんと、「京都の文化を映像で記録する会」理事長の濱口十四郎さんとのご縁がきっかけ。
右端が主人公の岡田時彦岡田茉莉子のお父さん)、左端の子役は、7歳の高峰秀子        
1931年の作品。 
この頃の映画は無声映画。(反対はトーキー(発声映画
無声映画でありながら、普通の映画のように鑑賞させていただけたのは・・
「7色の声の持ち主」と称される瓢亭遊花さんの活弁付きだからです。
この方が、遊花さん。↓
和服の似合うしとやかな女性・・と思いきや、なんと・・・男性、女性、子供の声まで・・
登場する映画俳優全ての声とナレーターをたった1人でこなされます!
私たちは映画のスクリーンを見ながら、登場人物が話しているかのごとく、鑑賞できるのです。
外国映画の声優による吹き替えを一人で受け持っているという感じでしょうか。
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今回は映画本番の前に、小津安二郎監督の「思い出のアルバム」として写真をいくつか見せていただきました。この写真は、小津監督とお母様との微笑ましい一枚。

この写真まで、小津監督の映画の一場面のように感じてしまいました・・・

この映画は,井伏鱒二の小説「先生の広告隊」が原案であったようです。
あらすじは、世界恐慌による大失業時代の当時、主人公岡島伸二:岡田時彦
は生保会社に勤めるサラリーマン。妻すが子:八雲恵美子と、小学生の子供が2人。
妹役が秀子である。

ボーナス支給の日、会社で定年間近の同僚が首になり、主人公は義憤に駆られて社長に強談判し、解雇される。
失業して貧乏生活を余儀なくされ、  職を求めて通った職業紹介所の帰りに、偶然、旧制高校時代の恩師に出会う。
恩師は退職後に老妻と2人で小さな洋食店を営んでおり、宣伝のため広告ビラ配りを計画していた。その手伝いを主人公に頼むのである
小説「先生の広告隊」の主人公は、下宿生活者で非常に貧乏ではあるが意地とプライドは持つ。貧乏をしているから手伝えと言われるなら手伝わないが、そうでなければやります。」というような問答があって(このセリフは映画にもある)、二人は幟を持ち、ビラを配って街を練り歩くのである

「「東京の合唱」小津映画」の画像検索結果
小説はここで終わるが、映画ではその姿を妻子に見られ、「そこまでしなくても・・」と妻は悲しむ。  主人公は、恩師の頼みであること、恩師の伝手で仕事を捜していることを話すと、妻も協力することになる。 
 数日後、その洋食店で高校の同窓会が開かれ、その最中に就職先を紹介する手紙を受け取る。  それは、東京ではなく、遠い栃木県の講師の話であった。
同窓生全員で寮歌(一高)を歌う中、恩師も主人公も共に涙ぐみながら合唱するのである・・。
               (以上転載終了)

小津安二郎 - 東京の合唱/Yasujiro Ozu - Tokyo Chorus(1931 ...

www.youtube.com/watch?v=Ye0Moya_vSw
2012/10/08 - アップロード元: NoCoverNoMinimum
Full Movie Subtitles:EN,FR,ES,BR,HU JP:東京の合唱 Tokyo no Korasu EN:Tokyo Chorus FR;Chœur de ...


感想
小津作品はこの映画の会で2作品目だが、この「東京の合唱」で、すっかり小津ファンに・・。
温かい後味が残る素敵な映画だった。
の主人公の生き方の優しさ爽やかさも魅力の一つ。
主人公は、大不況の時代に、解雇される同僚を思い、わが身も顧みず社長に直談判するような無類のお人よし?であり、熱いハートの持ち主である。
彼は、昔の先生と出会い、先生に頼まれると、プライドは見せながらも、「貧乏をしているから手伝えと言われるなら手伝わないが、そうでなければやります。」と言って、また恩師を手伝う。子供と妻にその姿を見られ、後で妻に「肩身の狭くなるようなことはしないでほしい・・」と、なじられるのだが・・。困っている人を放っておけない優しさと誠実さを持つ岡島に好感が持てる。岡島は、コメディタッチで描かれているので、楽しく見ることができた。

妻役八雲恵美子は立ち居振る舞いも美しく、優しい母と凛としたしっかり者の妻、
昔の日本女性の理想の姿を見る。恥ずかしく思った夫の旗持ちの仕事も、
事情を理解すると、「それなら私も店の手伝いに行きますわ」と自分から言いだすところなど、なかなかの女性に描かれていた。

最後は、主人公に恩師から、「栃木の女学校の先生」という仕事が紹介されるのだが、いよいよ東京から離れなくてはならない。「遠いな・・」と、寂しく思う主人公に、
ここでも、妻は「また東京へ帰って来れますわ」と、明るく声をかけて慰める。
こんな素敵な二人は、この先、どんなことがあっても、どんな場所でも、きっと幸せに生きていけるだろう・・そんな希望を感じさせる終わり方であった。
浮き沈みがある中でも、人生の幸、不幸は他人が決めることではない。自分で感じ取るものである。」という映画の最後の言葉が効いている。

優しい母親役が絵になる・・場面。

こちらは、高峰秀子。かわいい子役でこの年から映画に出ていたことを改めて知った。

この映画会の後は、みんなでお酒&お手製のごちそうをいただきながら、感想を話し合う。
それも楽しみの一つ。
映画のストーリーもさることながら、映画のセリフを担当される遊花さんの活弁も絶好調!
この映画の会で古い映画の良さを教えていただいています。