衆院憲法審査会の休眠は自民の事情
衆院憲法審査会の休眠は自民の事情
それに対して、民主党はもともと「安倍首相の下での憲法論議は危ない」と慎重であったし、共産党は護憲の立場から審議自体に反対で、加憲を主張する公明党も別に審議を急いでいなかったので、それには何の不都合も感じていません。
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東京新聞 2015年7月12日
衆院憲法審査会の審議がストップしている。先月の審査会で、自民党推薦を含む参考人の憲法学者三人全員がそろって安全保障関連法案を「違憲」と批判したため、党執行部が安保法案審議への影響を懸念して、審査会開催にブレーキをかけたからだ。憲法解釈の変更で集団的自衛権の行使を可能にする安保法案の今国会成立を目指すと同時に、改憲に向けた審議も急ぐ両にらみの国会運営は進んでいない。 (大杉はるか)
六月四日の審査会で、参考人として出席した自民推薦の長谷部恭男・早稲田大教授のほか、民主推薦の小林節・慶応大名誉教授、維新推薦の笹田栄司・早稲田大教授の三氏全員が安保法案を「違憲」と指摘。法案の問題点がさらに鮮明になった。
自民党執行部は、審査会の審議に関し「安保法案に影響のないやり方をしてほしい」(佐藤勉国対委員長)と求めた。審査会幹事を務める船田元・党憲法改正推進本部長は「審査会はしばらく休む予定だ」と明言。その時点で開催が決まっていた六月十五日の地方公聴会を最後に、審査会は開かれていない。
昨年末の衆院選で、与党は衆院での改憲発議に必要な三分の二以上の議席を維持した。自民党は緊急事態条項や環境権の新設に絞った改憲なら各党の賛同を得やすいとみて、審査会の審議を急ごうとした。来年夏の参院選で、次世代などを含めた改憲勢力で三分の二以上の議席を参院でも確保して最初の改憲を実現し、二回目以降の改憲で九条見直しを視野に入れる。
一方、世論の反対にもかかわらず、政府は五月に安保法案を国会に提出した。首相は提出に先立つ訪米時に「この夏までに成立させる」と表明。「国会無視だ」と野党が反発する中、法案審議が始まった。法案をめぐる与野党対立の余波が、審査会に及ぶのは時間の問題だった。
参考人の違憲発言で当面は審査会を開けなくなり、首相周辺は「安保法案と改憲を同時に進めようとして、改憲スケジュールに影響が出てしまった」と悔やむ。自民党に改憲論議をせかされていた公明党幹部は「改憲、改憲と急ぐから、回り道する結果になるんだ」と皮肉った。