戦争法案関連…中央公聴会の奇妙な意見(五郎さんのわかりやすい解説)

戦争法案関連…中央公聴会の奇妙な意見

昨日ね、国会の戦争法案を審議する衆院の特別委員会で「中央公聴会」っていうのがありましてん

そこで、与野党が推薦する「専門家」が戦争法案に対する意見を述べたわけですけども

そのなかで与党推薦の「専門家」が、かなり奇妙なことを言うてはったので紹介してみます


まず、外交評論家の岡本行夫さんの弁
宗教や民族、国家間の対立が先鋭化し、過激派組織『イスラム国』のような暴力的な準国家組織が勢力を伸ばしている。一国で生命と財産を守り抜くことは不可能だ」(と述べて戦争法案に賛意を示す…)

ぼくは素朴に考えて、日本から遠く離れたところで活動してるISが

日本の安全保障にどれだけ深刻な影響を与えるというのか、さっぱりわかりません


で、もし仮に、このたびの戦争法案がこの人の言う通りISを念頭にしたものだったなら

結局、アメリカが中東でISを相手にやってる「対テロ戦争」に日本も参加せなあかんやん…

という話になるはずなんですがなんで日本が中東での「対テロ戦争」に参加せな

日本の安全が守られない…なんていう奇想天外な思考が展開するんでしょうか?

こんなん、わざわざ遠くの戦争に飛び込んで自ら危険に近づいていく…という話ですがな


まぁ、岡本さんは、元外務省の北米一課長をしてた人で

外務省の「アメリカ担当部署」の実務上の責任者をやってはった人ですから

アメリカが日本に望むことことを叶えてあげる」ことを仕事にしてきた人

退職後もその思考から離れることができないのは、まぁしゃーないか…と思わんでもありませんけども

この人の言い分を聞いてると、政権が戦争法案を用意したのは日本の自発的な行動ではなく

アメリカの要請」にしたがったものだった…ということが、透けて見えてくるんではないでしょうか?

(そやかて、戦争法案の実態は「日本の安全保障」とはほとんど関係のない「アメリカ軍協力法」になってますので…)


では次に政治学者である村田同志社大学長の弁
中国が経済的に急速に力を付け、軍事力や外交的な影響力に転化しようとしている」
「こうした中で日米同盟の強化は理にかなったことだ」(と述べて戦争法案に賛意を示す…)

この人は、戦争法案を「対中国」を念頭にしたものであると認識しつつ、

その実体が「日米同盟の強化」(≒アメリカ軍協力)であることを、暗に…というか、はっきり認めてます



では、記事には出てなかった同学長の弁を写真入りで…

http://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/m/mzponta/20150714/20150714124911.jpg

いや、そら、「学者」はなにも「憲法学者」には限りませんねんけど

法案が憲法に合致するか否か…に関して、例えば「植物学者」に聞いてもしゃーないわけでありまして

こんな屁理屈を国会の場でよく言えたもんだ…と、ぼくは違う意味で感心しますわ

こんな人を学長に選ぶ同志社大学にもまた、違う意味で感心してしまうで…)



このように、「安全保障の専門家」を自任するこの人も、外交の専門家ということになってる岡本さんも

戦争法案の憲法適合性」という「最も大切な点」をすっ飛ばしながら

アメリカとの外交の観点」や「(日本を取り巻く)安全保障環境の変化」を説いて

戦争法案に賛成してはりますねんけども、

この人たちの言うてることは

戦争法案に賛成する理由としては誠に心許ない…というか、

端的に、そんな理屈では戦争法案を肯定できません


なぜなら、「アメリカとの外交の観点」を考慮したり

「(日本を取り巻く)安全保障環境の変化」があれば

憲法(9条)違反の集団的自衛権が合憲になるわけではないので

そんなことを百万回述べたところで、それは憲法9条改定への賛意」にはなっても

憲法違反の戦争法案への賛意にはなり得ません


そういう簡単な(法的)理屈が理解できないところを見ると、やはり「専門家」であっても

「外交専門家」や「安全保障専門家」に戦争法案の評価を聞く意味なんかほとんどないやん…

ということになるかと思います


では最後に、憲法学の専門家である木村草太首都大学東京准教授のまっとうな弁を紹介して

このエントリーを終えたいと思います
「日本への武力攻撃の着手がない段階での武力行使違憲だ」

集団的自衛権の行使容認が政策的に必要なら憲法改正の手続きを踏み、
 国民の支持を得ればいいだけだ」

ですので、岡本さんや村田さんが「集団的自衛権行使が必要だ」と思うのであれば、

憲法9条改定を主張する
…という方法しかとり得ませんので

そういう一番大事なところをすっ飛ばして「自己都合話」を国会で披露するのは

聞いてるこっちが恥ずかしいから、やめて下さいませ…




※こういうふざけた話を披露するのは「聞いてる人をナメてる」としか思えませんが

それ以前に、明らかに違憲の法案を提出してきた自公両党と、

対案と言いつつやはり憲法違反の集団的自衛権を肯定する維新もまた

主権者をナメてるし、憲法をナメてる…としか言えません


法を無視する警察」なんかあったら、それはそれは怖ろしいコトですけども

憲法を無視する政府(与党)」は、それよりもっと怖ろしいコトでありまして

もう、自公維新は日本に出現した「怪物」と言うてもええと思います


(怪物は早いうちに退治せんと、エラいことになるで…)