「中間線」は「最大線」専門家も失笑、安倍政権が煽る「中国脅威論」は嘘だらけ

「中間線」は「最大線」

中国が「自国の排他的経済水域」で進めているガス田開発については

どうも誤解に基づく「感情的反発」が多いようなので、

今回はまずこちらの記事を先に読んで下さいませ↓

専門家も失笑、安倍政権が煽る「中国脅威論」は嘘と詐術だらけ!
 ガス田開発も日本の主張する境界線外で軍事と無関係」(リテラ)


もう、上記の記事を読むだけで、ほとんどの方の「感情的反発」はおさまるものと思うので

(それでもまだおさまらない人には、もう、何をどない言うても効果がないと思うし…)

これでお終いにしてもいいんですけど、それだとあんまりにもスカスカで

オマエの意見はどないやねん?…とツッコまれるかも知れないので

蛇足を承知で書いてみたいと思います

(…と言いつつ、上記の記事で感情的反発がおさまった人なら、これ以上読む必要はないです)



まず、「中国が新たなガス田開発をしてる」という情報が外務省から発表される前に

あの桜井よしこさんが産経新聞にこのネタを記事にしたそうですが

桜井よしこさんが偵察衛星を所有してるわけはないし、ご自身で偵察飛行ができるわけはないので

いったいそのネタは誰から教えてもらったんか…ということを考えると

今回のこのタイミングでの報道の背景と目的はほとんど見えてくると思います

(それは上記の記事でも詳細に説明されています)


それを少し頭に置いておきながら、ここから、

日本側が中国のガス田開発に反発する(正当な)理由があんのか…という一番肝心なことを考えてみます

(…と言いつつ、ぼくは国際海洋法に精通しているわけではないので
 かなり大ざっぱなことしか書けませんが、それでも間違ったことは書かないつもりです)


排他的経済水域というのは文字通り、排他的に(≒他国の承認を必要とせずに自国の意思だけで)

経済的な活動ができる水域…ということでしょうから、

他国との間で「争いのない排他的経済水域」であるならば

他国の承認を求めることなく自国の意思だけで資源開発などの経済的活動ができるはず…ですよね


この点、排他的経済水域は原則として「沿岸から200カイリ」まで認められる一方で

「沿岸国は基本的に200海里までの海底及び海底下を大陸棚とすることができるほか、
 海底の地形・地質が一定条件を満たせば、200海里の外側に大陸棚の限界を設定することが可能」
(「海洋法に関する国際連合条約」(海洋法条約))

…となったので、「中国の大陸棚を「沖縄トラフ」の手前まで設定することも法的には可能」となり

日本と中国は、「沿岸から200カイリ」という線引きでも重なり合うし

「大陸棚の限界」という線引きでも重なり合うことになって、

未だ両国の排他的経済水域の境界は定まっていません

(もちろん、境界未確定に関しては尖閣諸島の帰属の問題も重なってくるんですが、
 その点については今回は触れません)


そして、他国間で境界線が重なり合う場合には、自国に最大限有利な主張をする…のは、

いわば基本…というか鉄則なので、日本も中国も、法的に可能な根拠のうちで

自国に一番有利な(…ということは、自国の排他的経済水域が一番広く取れるような)方法での

境界策定を主張してまして、日本の主張である「日中中間線」と

中国の主張である「沖縄トラフまでの大陸棚」は、いずれも法的に可能な最大限の主張になってます


この点、日本側の主張の名称が「日中中間線」であるために、その言葉の印象から

それが「日本と中国の主張の中間」と受け止めてしまいがちですが

日中中間線」というのは「日本側が法的に主張しうる最大限の線引き」です

(だから「中間線」の中身は、実は「最大線」なんです)


いや、日中の沿岸からの中間なんだからそれは「公平な線引きだ」…と考える人もいるでしょうが

中間といっても、基本的に中国は「大陸から」の距離であるのに対して

日本側は琉球列島という「島と島を結ぶ線から」の距離ですので

言ってみれば、中国は「実線」であるのが、日本側は「点線」からの距離…ということで

こういう場合には、「海岸線の長さ」を加味した「衡平原則」が(海岸線の長い国から)主張されます

(そして仮に「衡平の原則」に従うとするならば、
日中中間線よりもはるかに日本寄りの線引き」になります)


この点、境界の決定方法における「等距離・中間線原則」と「衡平原則」については

どちらが優先する…という明確な規定が海洋法条約にはありませんので

結局は「当事国同士の話し合い」で決着するしかないわけですが

自国の最大限の主張(≒権利)は相手国の最小限の主張(≒権利)になるので

どちらかの国の最大限の主張が通る…なんてことはまずありません


とすると、もし仮に、中国が「譲歩して」自国に最大限有利な大陸棚の延長の主張を引っ込めた…としても

「衡平の原則」まで主張しない…なんてことはありえないので

日本側の「中間線の主張」(=日本に最大限有利な主張)がそのまま通ることはまずないでしょう


そういう「現実的な見込み」を考えた場合、中国が「現実的にはありえない日本の主張の最大限である

日中中間線』を尊重」して、それよりも中国側、すなわち、日本側の最大限の主張によっても

「争いのない中国の排他的経済水域」で日本の同意を得ずに(=排他的に)資源開発をすることは

まったく中国の自主権の範囲である…というだけの話で

それが何ゆえ「中国の一方的開発」と批判されなければならないのか、ぼくはどない考えてもわかりません

(そやかて、排他的経済水域はもともと排他的に(=一方的に)経済的開発ができる水域やないですか)


なお、油田というものは地中や海底に広がるものである以上、

地上や海上の境界をまたいで存在することが多々ありますが

その場合は、基本的には先に採掘した方が勝ち…の話で、

今回はたまたま日中中間線をまたぐ海底油田があったから、日本が損してる…と感じるかも知れませんが

逆に、中国が主張する最大限である沖縄トラフをまたぐ海底油田がもしあったとして

日本が中国の主張の最大限よりも日本側で採掘を行うことに中国が「一方的だ」と言ってきたら

「はい、そうですね、一方的でした、すんません」…と言えるのか…と考えるならば

やはり、日本側の主張には無理がある…と思います