アベノミクスでは打開不能 迷走の日本経済 NYT
11/16アベノミクスでは打開不能 迷走の日本経済 NYT
日本ではこのごろアベノミクスという言葉を聞きません。それが何よりの実質的な評価なのですが、日本のマスメディア、なかでも経済紙の日経新聞や産経新聞は特に政権寄りなので、アベノミクスを表立って批判することはしてしません。
内容はタイトルの示すとおりのもので、「この3年間アベノミクスにはこれといった成果も無く、これまで政権を支持してきた多くの識者からも、その骨格構想に疑問を突きつけられるようになっている」というものです。
星の金貨プロジェクトが13日と15日の2回にわたって翻訳版を載せましたので、紹介します。
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日本の潜在的成長率はほぼゼロ、わずかなショックで経済が不況に落ち込む可能性がある
安倍政権が誕生してからもうすぐ3年が経過、しかし経済局面が打開されるのはまだまだ先
アベノミクスに対する幻滅を、ますます露わにしている海外の投資家たち
日本経済はこの2、3年、不況に落ち込みかけたまま、先行き不透明な状態が続いてきました。
成長局面に入ったのと同じ回数だけ不況局面に落ち込んだ日本経済において、それぞれの不況局面が意味するものとは何でしょうか?
現在の日本は、再び不安定な状況にあるように見受けられます。
2015年は第2四半期にマイナス成長に落ち込んだ後、続けて第3四半期にも生産高が縮小してしまった兆候があらわれています。
その原因を作ったのは減速する中国経済でした。
国内の経済学者などはどのような不況局面であっても短期間で済み、かつ深刻なものにはならないだろうと見ています。
しかしさらに厄介な事態を引き起こす可能性がある問題が、より深い場所に隠れている可能性があります。
日本の不況を終わらせるという公約を掲げて安倍政権が誕生してからもうすぐ3年が経過しますが、局面が打開されるのはまだまだ先のように見受けられます。
「日本経済の成長予想は貧血状態にあります。」
しかし日本の経済の実態はこうした政策によっては浮上しないことが、徐々に明らかになってきました。
そのひとつが昨年間の悪いタイミングで実施された、消費税率の引き上げでした。
日本の消費者心理を一気に冷え込ませ、出費を思いとどまるようになりました。
そして引き続き襲ったのが、日本製工作機械の最大需要家であった中国の景気減速でした。
しかし多くの専門家が、最も根本的な問題は、日本経済にはそもそも成長する要素をほとんど持っていない事だと指摘しています。
日本の経済成長は、基本的にゼロです。
国内総生産の規模は1990年代半ばと同規模です。
その原因の大きなものは労働人口の減少です。
局面が目まぐるしく移り変わる状況下、こうした構造的要因により日本経済は何かあればたちまち不況局面に後戻りする危うさを持っているのです。
日本経済が持つ構造的弱点の改善については、これまで安倍首相が進めてきた経済政策はほとんど無力でした。
「海外の投資家はアベノミクスに対する幻滅を、ますます露わにしています。」
ゴールドマン・サックスの幹部級の日本経済学者である馬場直彦氏が、10月下旬にヨーロッパ、アメリカ、アジア諸国の投資家との会談を終えた後こう語りました。
これまでアベノミクスに対する外国人投資家の前向きな評価の中心にあったものは、安倍政権の経済政策の数少ない性向の中の日本の株価の上昇でした。
しかしそれ以外の日本経済の側面は弱体化しているように見えます。
アベノミクスの主要課題の一つは、労働者の給与アップと商取引上の障害となっている各種の規制を取り払うことに加え、持続的かつ全面的な物価上昇を生み出すことですが、「なかなか上昇局面には乗せられずにいます。」と馬場氏は語ります。
アベノミクスは最初から大胆な、場合によっては大げさすぎる公約を掲げてきた
600兆円!たった5年の間に低迷する国内総生産をどうやって20%も引き上げるのか?!
これから5年後に国内総生産を600兆円にするなど、「あり得ない数値」
しかし日本銀行はこれとは逆を指向しています、より一層通貨政策を緩めようとしているのです。
その措置が採られるかどうかは、10月末に開催される『成長とインフレ達成』のため年2回開催される日銀の理事による会合で決定されることになります。
その場では悲観的見方の方が大勢を占めることになりそうです。
同じ10月、黒田総裁は昨年金融の分野で最後の一撃を加え、驚きが市場を支配しました。
そして日本はもちろん、世界各国で株価が高騰しました。
黒田総裁は市場の悲観的予想をいくらかでも和らげるため最善を尽くしてきました。
そして、現在の日本銀行のそれぞれの金融政策は充分効果を上げていると主張してきました。
インフレの数値が目標を達成できなかった理由は、予想を超えた原油価格の下落に主な原因があり、物価と賃金は上昇傾向にあるとも語ってきました。
「私は現在の方針、すなわち質的緩和策・量的緩和策は充分に機能し、日本経済に狙い通りの効果を発揮したと考えています。」
ペルーのリマで開催された世界中央銀行総裁会議で、黒田総裁は10月11日に行われたCNBCとのインタビューでこう語りました。
しかし今回は日本銀行の政策は思ったほどの効果を発揮できない可能性もあります。
今月、日本とアメリカを含む12の環太平洋地域国が、主に貿易上の取引条件を設定するための取引協定、すなわちTPPについてやっと合意に達しました。
安倍首相はこれにより、日本は域内における貿易と投資活動をより活発化できると語っています。
この二つは日本の成長率を押し上げるための大切な要件です。
しかしこの協定は各々の国の議会における承認を必要としますが、アメリカ合衆国議会のメンバーは、日本が貿易競争を有利に進めるため、不当に円の価値を引き下げていると非難しています。
「TPP交渉の場では、各国の通貨政策は波乱相をとる上で非常に厄介な問題です。」
足立氏は来年実施される参議院議員選挙を視野に起きながら、こう付け加えました。
「一般家庭は円安によって家計が圧迫されることを望んでいません。」
景気悪化
普段は日本銀行の大規模な金融緩和策に拍手喝さいしている安倍政権の経済担当チームも、今回に限っては慎重に言葉を選んでいます。
安倍首相は相変わらず派手な公約を掲げ続けています
9月、安倍首相は2020年までに日本の名目経済生産高を600兆円にまで増やすという目標を掲げて見せましたが、これまでの20年間成長できなかった日本経済をこれから5年の間に、現在の数値を20%も上回るこの目標までどうやって引き上げるのか、その詳細については一切明らかにはしませんでした。
アベノミクスは最初から大胆な、場合によっては大げさすぎる公約を掲げてきました。
これについて日本銀行の黒田総裁は『デフレ心理』を払しょくするための取り組みの一つだと弁護しています。
しかしこの3年間、アベノミクスにはこれといった成果も無く、これまで当たり前のように自民党政権を支持してきたビジネス・エリートたちを含む多くの識者から、その骨格構想に疑問を突きつけられるようになりました。
「600兆円というのはあり得ない数値だと思います。」
経済同友会の小林喜光代表幹事がこう語りました。
「政治的メッセージとしか思えません。」 〈完〉