フランスの非常事態宣言よりはるかに危険な自民の緊急事態条項案
フランスの非常事態宣言よりはるかに危険な自民の緊急事態条項案
フランスは目下非常事態宣言の3ヶ月間延長の最中です。
弁護士が運営しているブログ「Everyone says I love you !」が、その実態をレポートしました。
同ブログにはフランスの実態を写した豊富な写真が掲示されているので、現地の緊迫した雰囲気が伝わってきます(記載のタイトルをクリックすれば元の記事にジャンプします)。
註.文中の茶色部分はクリックすると元の記事にジャンプします。
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Everyone says I love you ! 2016年01月04日
さらに、フランス政府は12月23日の閣議で、非常事態の発動要件緩和など大統領権限を強化する憲法改正案を国会に上程することを決めたのですが、その改正案に、テロに関与した二重国籍者からのフランス国籍剥奪、テロ容疑者らの移動制限強化などを盛り込む方針を決定しました。
これを受けて、ヴァルス首相は記者会見して「テロの脅威はかつてなく高まっている」と述べ、過激派組織「イスラム国」(IS)との戦いに全力を挙げる必要性を強調し、2016年2月3日に憲法改正案を国民議会(下院)に上程すると述べました。
実は、今発令されているフランスの非常事態宣言は、フランスの憲法に規定のあるものではなく、一法律によるものです。
フランスには、日本で議論されている緊急事態条項に類するものとして、
3 緊急状態法による非常事態宣言で警察権が強化される
の3つがあり、今回はこの3による措置が取られているのです。
フランス全土に非常事態宣言が出されてから一か月半。
テロのあったパリを中心に、美術館や図書館が閉鎖され、集会やデモの許可が取り消されました(集会結社の自由の制限)。住民には不急の外出を控えるように通達されています(移動の自由の制限)。
警察権の強化により、内務大臣が「公の秩序と安全に対し危険な活動をしている人々」を自宅軟禁することができる権限を持ったため、テロからたった一週間で164人を自宅軟禁状態としました(移動の自由の制限)。
また、裁判所の令状なしに、昼夜問わずに家宅捜索したり、武器を押収したりすることも可能となるそうなのですが、ヴァルス首相によると、これまで令状なしに793件の家宅捜索がなされ、174件の武器押収がありました(刑事手続きにおける適正手続きの修正)。
その後、一か月で、令状なしの家宅捜索の件数は3000件に及んでいます。
さらに、命令のあった場所・時間における人や車の交通が禁止されたり、安全地帯が設定されたりすることで、移動の自由が制限されています。また、コンサートホールなどの興業場、酒類の小売店閉鎖命令など、行動の自由も制限されているのです。
軍隊も警察活動に従事する。
これらのフランスの非常事態措置は法律に基づくものなので、これから憲法違反であるという裁判が起こされることも考えられ、だからこそフランスは憲法改正によって、これらの措置に憲法上の根拠を与え、違憲主張を封じようとしています。
さらに、困ったことには、自民党の憲法草案の規定では、緊急事態条項が発令できる場合が、戦争、災害、秩序の混乱、その他となっていて、総花的ですから、パリのような警察権の強化だけでなく、国民の財産権や表現の自由・知る権利・通信の自由の制限まで考えられます。
たとえば、自衛隊が出動して勝手に庭が使われてしまうとか、食料などが徴収されるとか(財産権の制限)、混乱防止のために携帯・スマホやネットの利用が制限されるとか(通信の自由の制限)、報道が規制されるとかです(表現の自由、知る権利の制限)。
フランスでは、12日間の期限を延長するために法改正をして3か月に期限を延長しているわけですが、これをさらに延長しようと思うとまた新法を制定しないといけません。
第99条第4項
緊急事態の宣言が発せられた場合においては、法律の定めるところにより、その宣言が効力を有する期間、衆議院は解散されないものとし、両議院の議員の任期及びその選挙期日の特例を設けることができる。
期間制限は法律に委ねられていて、憲法上は白紙です(100日を超えるたびに国会承認が必要とだけ規定されている)。
おまけに、議員の任期を特例で延長を伸ばすことができて、さらに緊急事態宣言が出されていると衆議院は解散がない、つまり総選挙がないので、緊急事態宣言を承認した国会議員を選挙で落とすことができませんし、緊急事態にした内閣も変えられないのです。
これ、酷くないですか?政府はやりたい放題ですよね。これが日本の緊急事態条項が世界に誇る?恐怖の制度の実態です。
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みんな、信じがたいバカだ(ごめん!)