黒田総裁がアベノミクスの失敗を認める 高橋洋一氏も
26- 黒田総裁がアベノミクスの失敗を認める 高橋洋一氏も
アベノミクスをはじめてもう3年近くになるのですが、この間に達成できたのは円安による一時的な株高だけで、投機筋や富裕層は大儲けをしましたが経済の実態は何も良くなりませんでした。現実に国民は貧しくなる一方です。
黒田総裁としては、金融政策だけではダメで、それに見合うあるいは補完する政治的手当てが必要だということを以前からにおわせていたのですが、安倍氏は軍事拡張や憲法の改悪にのめり込むだけで、実体経済の改善に向けては何もしませんでした。黒田氏の発言にはそうしたことへの嫌味も含まれているのでしょう。
アベノミクスを否定する言葉は、小泉内閣時代に新自由主義経済の旗振り役を務めた竹中平蔵氏からも出ました。彼は平然と「トリクルダウンは起きない」と述べました。もう政府の人間ではないのだからと開き直ったのかも知れませんが驚かされます。
さらにアベノミクスの理論的支柱でアドバイザーであったエール大学名誉教授の浜田宏一内閣官房参与は、「GPIF(年金積立金などの運用機関)の株投資は大損をする」と述べました。誰が見ても明らかなことなので異議はありませんが、それを同氏が平然と言うのにはやはり驚かされます。
さらにまた、これまでは安倍氏の政策を一貫して支持してきた元財務官僚の髙橋洋一氏も、「アベノミクスついに沈没〝消費税8%” がすべての間違いだった」として、5% ⇒ 8%のアップの非を分かりやすく述べています。この先10%に上げるなどは狂気の沙汰という訳です。
虚妄のアベノミクスはいまや孤軍奮闘の様相を呈してきました。
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ついにギブアップ…黒田総裁がアベノミクスの失敗“認めた”
日刊ゲンダイ 2016年2月24日
バズーカはやっぱり空砲だった ― 。日銀の黒田東彦総裁がついに“ギブアップ宣言”だ。23日の衆院財務金融委員会に出席した黒田総裁は、マネタリーベース(資金供給量)の増加と物価上昇率の相関関係についてあらためて問われた際、「マネタリーベースそのもので直ちに物価、あるいは予想物価上昇率が上がっていくということではない」と言い放ったのだ。
「(総裁に)就任して間もなく3年。そろそろ客観的な検証をした方がいい。マネタリーベースを増やすと期待インフレ率が上がるというのが異次元緩和の一つの大きな前提、根拠になる考え方だったと思うが、今もなおそう信じているのか」
2013年4月から始まった「異次元金融緩和」(黒田バズーカ)は、マネタリーベースを2年間で倍増させ、前年比2%の物価上昇率を実現させる――というものだ。
黒田総裁は当時の会見で、マネタリーベースを倍増させる理由を問われると、〈2年で2%の物価上昇目標を達成するのは容易ではない。これまでのように小出しにするやり方では達成できない。ここまでやれば達成が可能になるという額〉と断言。〈マネタリーベースは端的にいうと日銀の通貨。最も分かりやすく適切だ〉と威張っていた。同じ時期に都内で開いた講演会でも2%の物価上昇目標に触れて、〈この約束を裏打ちする手段として量・質両面の金融緩和を行う。具体的には金融市場調節の操作目標を『金利』からマネタリーベースという『量』に変更した〉と強調していた。
■異次元緩和の理論の支柱が折れた
14年11月に日銀が資金供給量を年間60兆~70兆円から約80兆円に増やす追加緩和を決めた際も、黒田総裁は〈2%の物価上昇目標の早期実現を確かなものにする〉と強弁。それが一転して「マネタリーベースと物価上昇に相関関係はない」と認めたのだから、のけ反ってしまう。玉木議員があらためてこう言う。
「黒田総裁の発言には本当に驚きました。異次元緩和の理論の根幹、支柱がポキンと折れたのですから。つまり、それだけ行き詰まっているという表れなのでしょう」
黒田総裁が白旗を揚げるのも当然だ。マネタリーベースは12年末の138兆円から昨年末は365兆円と2・6倍に膨らんだものの、15年平均の全国消費者物価指数(生鮮食品を除く)は2%目標には程遠い前年比0・5%増。誰が見ても「黒田バズーカ」は失敗だ。さすがに「相関関係がある」とは言えないだろうが、シレッと手のひら返しの発言が許されるのか。「トリクルダウンは起きない」(竹中平蔵・慶大教授)と同様、アベノミクスの旗振り役は“泥舟”からの逃げ足だけは速い。
(シリーズ 経済の死角)
失われた20兆円
ところが、'14年4月の8%の消費税率導入を境に状況が一変した。'14年度第2四半期までに、GDPが一気に約14兆円も急落してしまったのだ。
差額は20兆円。これだけの金額が、増税によって失われたのだ。
この20兆円分の伸びがあれば、物価も上昇し、賃金も消費も好調という、良好な循環が生まれ、昨年中には「デフレ脱却宣言」ができただろう。日経平均株価も2万円台、為替も1ドル=120円の水準は保てたはずだ。
いま、日本では格安商品ばかりが売れる、デフレ時代と同じ状況が生まれている。アベノミクスの目標である、2%の物価上昇に相反する事態が起きているわけだ。だが、経済学の常識からして、増税すれば物価が下がるのは自明の理だ。
優秀なはずの財務官僚たちはそんなことすら理解できていなかった。自分たちの歳出権を拡大するため、なんとしても消費増税を可決させようと、「増税をしてもGDPは下がらない」という机上の空論を組み立て、押し切った。
5%に戻すしかない
「3兆円多いのだから、増税のほうがいいのでは」と思うかもしれない。
収益が上がらないのに税負担だけを増やしたので、企業は苦しみ、賃金も上がらない。消費も当然伸び悩む。アベノミクスの理想とは真逆の悪循環にはまりこんでいる。
結局、無知な財務官僚が身勝手な思惑で推し進めた増税で、国民は8兆円を取り上げられたあげく、本来、得られるべき所得までを失ったのだ。
この状況に、本来であれば、「責任をもって2%の物価上昇を達成させる」と明言している日銀の黒田東彦総裁こそが、「増税で物価が上がらないのなら、失敗を認めて減税するか、景気対策をしてください」と政府に強く進言すべきだろう。
だが、黒田総裁は「消費増税で成長が大きく損なわれることはない」と繰り返し発言してきた手前、今更もう何も言えない。起死回生のマイナス金利政策も、消費増税のダメージが大きすぎたため、いまのところ本来の効果が出ていない。
消費増税が引き起こした負の連鎖から脱却するには、いますぐにでも消費税を5%に戻すのがベストなのは言うまでもない。だが、政府もいまさら引き返せないだろう。
それでも、本気で景気回復を目指すのならば、取れる策は消費減税の他にもいくらでもある。
「外国為替資金特別会計」には円安の含み益の約20兆円、「労働保険特別会計」には約7兆円もの埋蔵金がある。これを原資に、国民に10兆円規模の給付金を配り、増税の痛みを和らげる。
極端な話に聞こえるかもしれないが、ここまでしてようやく、「8%増税の呪縛」は払拭される。
それほどまでに、消費増税が日本経済に与えたダメージは大きい。