福島の小中学60校の8割で「放射線管理区域」を上回るセシウム

2016年3月12日土曜日

福島の小中学60校の8割で「放射線管理区域」を上回るセシウム

 このところ社会派路線を強めている週刊誌「女性自身」(光文社322日号、同誌が調査した福島県60小中学校のうちの8割の学校放射線管理区域」の指定を受ける4万ベクレル/㎡を超える高い数値セシウムベース)が観測されたとの記事が載りました
 
 その数値は高い方から、二本松市の中学校周辺108万ベクレル/㎡本宮市の小学校で66万5000ベクレル/㎡、伊達市中学校で61万8000ベクレル/㎡福島市の中学校で48万ベクレル/㎡南相馬市の小学校で44万9000ベクレル/㎡などでした。因みに比較のために測定した青森県の土地では120ベクレル/㎡でした。
 当然校内のグランドも同じように汚染されていると思われるので、そこでの土ホコリを吸い込めば内部被ばくを起こすことになります。
 
 そうした実情にもかかわらず、政府は原発事故の責任を回避し、新たに原発再稼働するために「被害は大したことない」と、「汚染地域に帰還させる」政策を推し進め、地域のモニタリングポストの撤去、来年3月には自主避難者への住居支援中止などの政策を次々と打ち出しています
 甲状腺がんの子どもたちがさらに増え続けることになるでしょう
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「女性自身」が驚愕の原発汚染調査報告! 
福島の小中学60校の8割で「放射線管理区域」を上回るセシウム
LITERA 2016年3月9日
 311を目前にして、福島原発事故の影響に関する驚愕の調査結果が発表された。多くの子どもたちが日常的に通う学校周辺で、高濃度の放射性物質が検出されたというのだ。
 この調査を発表したのは、最近、社会派路線を強めている週刊誌「女性自身」(光文社)。3月22日号にこんなショッキングなタイトルの記事を掲載した。
 
福島県60小中学校 放射性物質』土壌汚染調査 『8割の学校で18歳未満立ち入り禁止の数値が出た!』」
 記事によると、同誌は環境問題や放射線に詳しいNPO法人の監修のもと、福島県内の小中学校周辺、約60か所の土壌をランダムに採取し、土壌に含まれる放射性セシウム137を調査したという。
 ところが、その結果、検出されたのは、恐ろしい数値だった。調査した60箇所の約8割で「放射線管理区域」の指定を受ける4万ベクレル/㎡を超える高い数値が観測されたのだ。
 
放射線管理区域とは放射線による障害を防止するために、法令で管理されているエリアのこと。一般人は放射線管理区域の立ち入りが禁止。さらに、18歳未満は就労も禁止。大人であっても10時間以上の就労は禁止、飲食も禁止という厳しい規定だ。〉
 
 中には、信じられない数値が検出された場所もあった。たとえば、二本松市の二本松第二中学校周辺の放射性セシウムは、なんと108万ベクレル/㎡。これはチェルノブイリ原発事故の被害を受けたベラルーシで“第二次移住対象地区”にあたる数値だという。“第二次移住対象地区”とは「移住の義務 農地利用禁止」を命じられた場所だ。
 本宮市の和田小学校でも66万5000ベクレル/㎡伊達市・霊山中学校でも61万8000ベクレル/㎡と、やはり“第二次移住対象地区”に当たる放射性物質汚染が認められた。
 また、そこまではいかなくても、南相馬市の石神第二小学校では44万9000ベクレル/㎡福島市の福島第一中学では48万ベクレル/㎡と、やはりベラルーシでは、国家補償による移住が認められる“移住権利区域”並みの数値が出ている。
 
 同じ方法で原発事故の影響のない青森県黒石市の高舘パーキングエリアの土壌を調べたところ、120ベクレル/㎡だったというから、これらの数字がいかに異常であるかがよくわかるだろう。
 この驚きの調査結果について、原発擁護派や中立厨からは「どうせ女性週刊誌のツクリ記事だろう」という冷ややかな声が浴びせられているが、取材をしてみると、まったくそんなことはなかった。
「あの記事は、NPO法人市民環境研究所の第1種放射線取扱責任者の資格を持つ専門家に監修をあおぎながら、採取方法も細かく決めて、かなり厳密な方法で調査をしました。にもかかわらず、ここまで極端な数字が出たため、編集部でも驚きを隠せなかったようです」(「女性自身」関係者)
 
 いずれにしても、福島のかなりの数の小中学校で、健康被害が出るレベルの放射性物質が検出されていたというのはくつがえしようのない事実なのだ。そして、これらの場所ではなんの規制もされず、子どもたちが普通に運動したり、遊んでいる。いったいなぜ、こんなことが起きているのか。
 
 政府はこれまで、空間線量だけを基準に避難区域を設定し、線量低下を理由に、避難区域を次々と解除してきた。しかし空間と比べて土壌の汚染は長期に渡るうえ、内部被ばくのリスクが高くなる
 除染は行っているが、実は除染には限界があり、その効果は一時的なものでしかないことが徐々に明らかになってきた。
 だが、政府はそういう実態を知っていながら、原発事故の責任を回避し、新たに原発再稼働するために「被害はたいしたことがない」「除染は可能」といいはり、「汚染地域に帰還させる」政策を推し進めてきた。
 
 しかも、その方針はさらにエスカレートしている。モニタリングポストの撤去、来年3月の自主避難者への住居支援中止、避難区域の解除など、「汚染された地域への帰還の強要」ともいえるような政策を次々と打ち出している。
 
 リテラでは先日も福島で甲状腺がんの患者が急増していることを報じたが、このままいけば、さらに甲状腺がんの子どもは増え続けるだろう。
 そして、この「女性自身」渾身の調査報道についても、国や電力会社はおそらく無視を決め込むはずだ。そして、国民の間でもそんなものはなかったことになり、逆に汚染を指摘した側が「デマを撒き散らす放射脳」として攻撃を受けるようになっていく。
 
 この転倒した状況について、『原発危機と「東大話法」』(明石書店)の著者として知られる安冨歩東京大学教授は、同記事の中で以下のように分析していた。
放射能をばらまいた国や東京電力が、そんなことなどなかったように振舞うのは、それ自体が暴力で、国家による国民に対するハラスメントです。そして、ひとたびハラスメントの構造に取り込まれると、暴力を受けている側はその事実と向き合うことができなくなるのです」
 このハラスメントの構造を打ち破り、子どもたちの健康被害を食い止めるためにも、今回の「女性自身」の調査結果はぜひ、ひとりでも多くの人に伝えてもらいたい。(伊勢崎馨)

12- 原発事故時のSPEEDI使用認める 自治体に裁量-政府方針

 政府は11日、原子力関係閣僚会議を開き、原発事故時の避難経路の選択のため、大気中の放射性物質の拡散を予測するSPEEDIの予測情報を自治体が裁量で使用することを認めました。
 
 SPEEDI放射性物質の拡散を予測するために120億円を投じて開発されたものですが、原子力規制委が突然昨年4月に、「風速や風向きなど天候次第で放射性物質が拡散する地域が変わり予測が困難であるために、SPEEDIで汚染状況を予測するのは無理である」として、使用しないことを決め、代わりに実測値に基づいて避難するということにしたものです。
 
 風向、風速が変化すれば拡散状況が変わるのは当たり前のことで、気象予報の情報を入力して最大限正確を期そうとするSPEEDI方式が現時点で最善であることは言うまでもありません。
 此度規制委の不可解な決定が遅ればせながら改められたのは前進でした。
    (関係記事)
2015年4月20日 「SPEEDI」は使用せず 規制委が不可解な決定
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原発事故時のSPEEDI使用認める 自治体に裁量-政府方針
時事通信 2016年3月11日
 政府は11日、原子力関係閣僚会議を開き、全国知事会が要請していた原子力災害対策の拡充に向けた対応方針を決めた。原発事故時の避難経路の選択のため、大気中の放射性物質の拡散を予測する緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム(SPEEDI)を自治体が裁量で使用することを認めた。
 SPEEDIをめぐっては、東京電力福島第1原発事故の際に活用されず、情報不足から放射線量の高い地域に避難してしまった住民から批判を受けた経緯がある。
 原子力規制委員会は、原子力災害対策指針(防災指針)で、実際の放射性物質の放出量などが分からないと拡散予測は難しいとし、避難の判断には使用しない方針を示している。ただ今回の対応方針では、自治体からの強い要望を踏まえ、事故時に自治体が参考情報として使用することを認めた。
 原発事故の際に甲状腺被ばくを低減させる安定ヨウ素剤の事前配布についても、従来認めていた原発から半径5キロ圏内だけでなく、圏外の住民に対し、自治体の判断で平時に事前配布できることとした。