【自主避難者から住まいを奪うな】山形県知事が福島県知事へ住宅無償提供延長要請。新潟県知事も「区域外避難者はつらい」~それでも打ち切り曲げぬ冷酷な福島県知事。

自主避難者から住まいを奪うな】山形県知事が福島県知事へ住宅無償提供延長要請。新潟県知事も「区域外避難者はつらい」~それでも打ち切り曲げぬ福島県知事

受け入れ自治体の知事が頭を下げても駄目だった。「第21回山形・新潟・福島三県知事会議」が25日午後、福島県郡山市熱海町のホテルで開かれ、山形県吉村美栄子知事が「特段の配慮をお願いしたい」との表現で住宅無償提供の延長を要望した。新潟県泉田裕彦知事も「住宅の問題でさらに負担感が増している」と指摘したが、ホスト役の内堀雅雄・福島県知事は「ご心配・ご配慮に改めて感謝を申し上げる」と返すばかり。政府の避難指示の無い〝自主避難者〟への住宅無償提供打ち切り(2017年3月末)を強行する構えだ。「避難者に寄り添う」という言葉とはほど遠い内堀知事。吉村氏や泉田氏が福島県知事だったら〝自主避難者〟の処遇は全く違っていたかもしれない。そう思わせる会議だった。


【「もう5年も経った、と言わず延長を」】
  「原発事故から5年5カ月が経過したが、見えない放射能への不安は払しょくされておりません」。そう切り出したのは山形県の吉村知事。「ピーク時から比べると1万人ほど減ったが、依然として2800人が本県に避難しております」。これまで、山形市長や米沢市長も交えた避難者との意見交換会を開催。今年5月からは福島県職員と共に避難者宅を戸別訪問した。アンケートも実施した。その中で、半数の避難者が不安項目として「住まい」を挙げたという。「避難者は生活資金の不足を心配しています。寄り添った支援が必要です」。口調は穏やかだったが、きっぱりと語った。
 吉村知事はさらに、避難者と支援団体が28日に設立する「住宅支援の延長を求める会(仮称)」にも言及。「避難者が最も望んでいるのが住宅支援の延長だという声を(福島県知事に)お伝えしたい。特段の配慮をお願い致します。もう5年も経ったと言うかもしれないけれども、それは違うと思う」と要請した。今月18日に開かれた定例会見でも「福島県におかれましては機会を設けて避難者の皆さんのお話を十分聴いていただければというふうに思っております」と述べ、福島県知事に直接、避難者の想いを伝えると表明していた。
 会議では「特段の配慮」という表現にとどまった吉村知事。それは内堀知事の立場も考慮した〝大人の対応〟だった。会議後の記者会見で、河北新報の男性記者から「特段の配慮とは、住宅支援を延長して欲しいという意味か」と問われると、隣に立つ内堀知事を意識してか当初は「避難者のお声をお伝えした」と答えるにとどまった。しかし、さらに記者が食い下がると「自治体(福島県)の想いは分かります。ただ、原発事故というのは普通の災害ではありませんからね。住宅の無償提供を延長して欲しい?そうですね。皆さんのお声をお伝えするとそういうことになりますね」と無償提供打ち切りへの撤回要請であることを認めた。その間、福島県の内堀知事は目を閉じ、口を真一文字に結んでいた。回答は無かった。
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山形県吉村美栄子知事(右)は「特段の配慮を」と住宅無償提供延長を求めたが、
福島県の内堀雅雄知事(左)は目をつぶり、口を真一文字に結んだまま回答せず。受け入れ自治体の知事が頭を下げても、住宅支援打ち切りを強行する。(←福島県民は怒るべき!)

【「住居はまさに生活の基盤」】
 新潟県の泉田知事も、直接的な表現こそ使わなかったものの〝自主避難者〟の置かれた苦境を内堀知事に伝えた。
 「新潟には3248人が避難中ですが、6割が区域外避難者です。福島に帰れば『何で避難したんだ』と責められる。精神的にも大変つらい立場の方々です。そして今、住居の問題でさらに負担感が増しています。住居はまさに生活の基盤なのです」
 
福島県が来年3月末での住宅無償提供打ち切りを公表して以降、新潟県は独自の支援策を打ち出してきた。福島県公営住宅から民間賃貸住宅への転居者に初年度は最大3万円の家賃補助を支給するが、新潟県は小中学生のいる子育て世帯にはさらに1万円を上乗せすることを決めている。「転居による転校で学区が変わらぬよう」との配慮だった。家賃補助を支給する対象となるか否かを判断する「収入要件」も、福島県が15万8000円だったのに対し、新潟県は当初から21万4000円に緩和。全国の避難者から称賛の声があがっていた(福島県も後に緩和策を発表=8月18日号参照)。母子避難者が福島県に里帰りする際の高速バス代金補助も継続する。泉田知事は「避難者は一人一人生活が違います。それぞれのニーズに合わせた取り組みを、三県が連携して実施したい。安心した生活が送れる環境を作れるようにしたいです」と語った。内堀知事は大きくうなずいていた。
 福島県が矢面に立つ形になり、会議後の会見では「内堀知事だけでは解決できない問題」とフォローした泉田知事。「チェルノブイリでは、年間被曝線量1~5mSvの地域の住民には移住の権利が与えられた。日本ではその点を国があいまいにしてきた。国全体で解決されるべきだと思う」とも述べ、被曝リスクから逃れるための避難・移住の権利を認めない国の姿勢を批判した。

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新潟県泉田裕彦知事も「住宅は生活の基盤」、「区域外避難者は精神的につらい立場に置かれている」などの表現で住宅無償提供打ち切りを暗に批判した=福島県郡山市熱海町

【「戸別訪問でていねいに説明する」】
 両県知事の言葉に、福島県の内堀知事は「今日のご指摘や避難者の気持ちにさらに寄り添っていく」と答えるにとどまった。「申し訳ないが期待には応えられない」と頭を下げるでもなく、「改めて見直したい」と答えるでもない。「受け入れ自治体の側で独自の支援策も用意してくださっているので、戸別訪問で全体としてていねいに説明していく」と全く答えにならない言葉を繰り返すばかり。記者会見の最後に、私が「「今後、住宅無償提供の延長という選択肢はあり得るのか」と質したが「戸別訪問を通して~」と同様の回答。「それでは答えになっていない」と問うと「今、お話しした通りでございます」といつもの調子でかわして会議会場を後にした。事実上の〝打ち切り撤回要請拒否〟だった。同席した福島県生活拠点課長も「17日に公表した支援策が最終版。見直しの予定はない」と改めて強調した。
 会議は、自主避難者問題だけを話し合うわけではない。この日も交通網の整備や観光客の誘致策、三世代同居の推進、再生可能エネルギー問題など議題は多岐にわたった。風評被害対策では、泉田知事から「福島産果物などの輸入制限に対し、WTO世界貿易機関)への提訴を考えているか」と尋ねられ、内堀知事が答えに窮する場面もあった。住宅無償提供も即答できる課題ではないだろう。しかし、山形県民を代表している知事が延長を求めたのに対し、イエスでもノーでもなく、あいまいな回答に終始するのは非礼でもある。これではどちらが当時県なのか分からない。「内堀知事は国の言いなり」という指摘もうなずける。
 「避難者に寄り添う」事は、切り捨て促進策を「ていねいに説明する」事では無い。自主避難者は未来永劫の住宅無償提供を求めているわけでは無い。いったん白紙に戻し、1年でも2年でも延長して改めて話し合い、誰もが納得できる形での〝軟着陸〟をしたいと望んでいるだけだ。そんなことすら理解できない知事が70%を超える福島県民から支持されているのが不思議でならない。
 三県知事会議は来年、山形県内で開かれる。その頃、自主避難者たちは「健康で文化的な最低限度の生活」を送ることが出来ているだろうか。打ち切りまであと7カ月。