今、憲法を考える (7) 変えられぬ原則がある
07- (社説)今、憲法を考える (7) 変えられぬ原則がある
ドイツのいわゆる憲法は、東西に分断されている段階で西側の各州の代表65人が集まって1949年に制定しました。それはドイツが再統一されるまでの暫定的な憲法としての建前を持っていたので基本法と呼ばれましたが、ドイツが漸く再統一を果たしたときにはその基本法がそのまま統一ドイツに適用されました。
基本法の制定当初は、いずれ統一したあかつきには正式なものを制定するという考えのもとに、必要不可欠な規定のみを定めました。しかし分断状態は実に制定後も40年余にもわたりました(東西ドイツが統一したのは1990年)ので、改正によって基本法を補足していかなければならず、いわゆる技術的事項の修正が多発しました。前回触れた50年代に再軍備を明記したのは大きな改正でしたが、それは東西冷戦の最前線にあった分断国家が必要に迫られてのものでした。
こうした事情からドイツ基本法はこれまで60回の改正が行われましたが、「人間の尊厳の不可侵」、「民主的な法治国家」、「国民主権」、「州による連邦主義」などの基本法の根幹部に触れる改正はありませんでした。それは基本法自体がそう規定していたからでした。
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東京新聞 2016年9月6日
ドイツは、人間の尊厳不可侵など、基本法の基本原則は曲げてはいない。
しかし、議会評議会議長アデナウアー(のちの首相)が主導権を握り、「押し付けられた」との意識はない。
基本法の呼称のまま、国民に定着している。
改正には上下両院の三分の二以上の賛成が必要だが、日本と違って国民投票の必要はない。
国の根幹に関わったのは、軍創設と徴兵制導入に伴う五〇年代の改正、防衛や秩序維持など「非常事態」に対処するための六八年の改正だった。
冷戦の最前線にあった分断国家が必要に迫られてのものだった。
日本にもむろん、守るべき憲法の精神がある。