タイの現状は共謀罪成立後の日本の姿

タイの現状は共謀罪成立後の日本の姿

 日刊ゲンダイがタイの現状が共謀罪成立後の日本の姿を示しているとする記事を出しました。
 タイでは2015年に、治安維持を目的として新たにどんな命令でも下せる「暫定憲法44条」を制定しました。制定時タイ政府は「善意の市民は影響を受けない。これは悪事をたくらむ人間を取り締まる法律だ」と、日本政府とそっくりの説明をしていましたが、現実は全く違って、騒乱名誉毀損、コンピューター犯罪法などさまざまな法令を活用し政権に対する批判者の取り締まりを強化し、いまや逮捕や訴追を覚悟しなければ対話や集会にすら参加できない風潮が生まれつつあるということです
 タイというと何となく平和な南国というイメージを持ちますが、2014年の陸軍クーデターを経ていまやそこまで変容したようです。
 共謀罪法案の恐ろしさを改めて教えられる日刊ゲンダイの記事を紹介します。
 
 
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タイで広がる市民弾圧に見た「共謀罪」成立後の日本の姿
日刊ゲンダイ 2017年5月10日
 共謀罪が成立した後の日本社会を見ているようだ。国際人権連盟(本部・パリ)が8日発表したタイの「不敬罪」に関する声明によると、不敬容疑で逮捕された同国民が100人を突破したという。
 
 タイの刑法ではもともと、国王や王妃を中傷すると不敬罪に問われ、1件当たりの最高刑は禁錮15年が科せられる。さらに、2014年にタイ陸軍によるクーデターが起きたことを受け、タイ政府は翌15年に治安維持を目的として、新たにどんな命令でも下せる「暫定憲法44条」を制定した。当時のタイ政府は「善意の市民は影響を受けない。これは悪事をたくらむ人間を取り締まる法律だ」と、共謀罪とそっくりの説明をしていたが、施行されてみると実際は全く違った
 
■政権に対する批判者の取り締まりを強化
 例えば、タイで政治犯の弁護に当たってきた人権派プラウェート弁護士。先月末、バンコクの自宅で軍人や警官に不敬容疑で拘束されたのだが、理由はネットでタイ王室や政権に批判的な書き込みをしたからだという。仮に裁判で有罪になれば、最高で禁錮150年だ。これを受け、国連人権高等弁務官事務所は5日、「政治的な活動をした人物に対する恣意的な拘束だ。不敬罪の適用は、表現や言論の自由に反する」と声明を発表したが、タイ当局の不当拘束は不敬罪にとどまらない。
当局は14年のクーデター以降、騒乱や名誉毀損、コンピューター犯罪法などさまざまな法令を活用し、政権に対する批判者の取り締まりを強化しています。逮捕や訴追を覚悟しなければ、対話や集会にすら参加できない風潮が生まれつつあります」(アムネスティ・インターナショナル日本の山口薫氏)
 
 昨年4月には、政府の新憲法案批判をネットに書き込んだ数十人が捕らえられた。日本でも共謀罪が成立すれば、後は当局のやりたい放題。タイの状況は将来の日本の姿でもあるのだ。政治評論家の山口朝雄氏が言う。
「今の日本はタイとは違って不敬罪は廃止されている上、軍事政権でもありません。しかし、何らかの口実をつくって、市民を取り締まっているタイの現状を見ていると、共謀罪成立後の日本社会も決して他人事ではない。政権に従順な人を “一般人” と見なし、そうでない人を監視対象にする。いずれタイのような恐怖社会が現実になるかもしれないのです」
 
 やはり共謀罪は何が何でも廃案に追い込まないとダメだ。