正倉院展2017


今年の正倉院展は、Oさんから招待券と資料をいただいていた。
Oさんは元読売新聞文化部の記者さんで73歳。
こんなに年齢の離れた方とお友達になれたのも、以前書いたAさんの追悼集を作るにあたって、一緒に編集委員をさせていただいたからである。
(読売新聞の記者といっても政権擁護の方ではありません。
何でもそうですが、人によりますね)
資料は8月から集められた正倉院展関連の記事のコピーで、読みやすいように
切り貼りしたたくさんの資料を友人の分と二人分用意してくださいました。
Oさん、ありがとうございます。
せっかくなので、今回は新聞の資料から説明させていただきます。

今回の正倉院展、一番の目玉は、やはりこれ。
エキゾチックな緑の色ガラスの盃「緑瑠璃十二曲長杯」
海の色を思わせる濃い緑にチューリップのような草花やウサギの文様が刻まれています。
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当時の中国製特有の鉛ガラスで、ササン朝ペルシャから伝わり、唐でも流行。
この形の器は上流階層に人気があったワインを飲むのに用いられ、李白漢詩には器やワインのことを詠みこんだものがあるそうだ。
阿部仲麻呂遣唐使のことがしのばれる逸品。
実際には、大仏開眼会の献納品とされている。

ライトで照らされた緑のガラスの輝きが綺麗でした~~。
こんな器でワインを飲んでみたいですが、この形は今のワイングラスに比べると飲みにくいかもしれませんね。


金銅の水瓶(こんどうのすいびょう) ←水差しのこと
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金メッキを施した銅製の水差しは、細長い首と鳥の形の注ぎ口が目を引く。
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鳥は空想上に鳳凰?全体を十数パーツに分け、鋲で接合する技法で職人の自負が感じられる。仏様を供養するための道具



碧地金銀絵箱
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仏様への献物に使われたとされる。表面の淡い青は水彩、金銀泊を粉末状にして膠の駅液で練った「金銀泥」で、花や鳥の描く豪華な装飾
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箱は年代を経て傷みも感じられましたが、この絵と色彩の美しさに惹かれます。
このデザインを模した宝石箱、お土産として素敵でした。
美しいデザインは年代を経ても変わりませんね。


槃龍背八角鏡(ばんりゅうはいのはっかくきょう)
たなびく雲の中を二頭の龍が天に昇ろうとしている繊細で美しい鋳造鏡。
金属を鋳型に流し込んで作る。
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銅鏡の銅面を磨いて、人や物を映し出す銅鏡。
その技術は「ろくろ式電動研磨機でも磨くのは疲れるのに、手仕事だった唐代はどれほど長い時間がかかっただろうか」
古来の製法に基づき銅鏡を製造する工房を営む陳さんの言葉が印象に残った。

羊木臈纈屏風(ひつじきろうけちのびょうぶ)

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巻角の羊は、ササン朝ペルシャでよく見られる異国情緒あふれるデザインだが、国産品で、税として納められた絹織物。当時の織物の産地は常陸で、機織りの歴史は弥生時代に遡る。糸を紡ぐ時に使う紡錘車は茨城県ではつくば市では200を超えこの辺りが奈良平安時代の布作りの中心であったことがうかがえる。
聖武天皇が身近に飾っていたようです。

その他 宝物?というような美しさはありませんが、これは何でしょう。
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これは、ミツバチの巣から取れる蝋を円板状に固めて、中央に紐を通すための穴を開けたもので、薬やろうけつ染めに使われたそうです。
薬としての効能は中国古代の薬学書「神社農本草経」には下痢止め、滋養強壮剤、塗り薬の基材に、またろうけつ染には欠かせない素材でした。(ろうけつ染め…溶かしたロウで模様を描き、他の部分を染色して図柄を浮き上がらせる手法。)



これは、唐から渡ってきたお経の一部。美しい楷書で書かれている。
1,000年以上経つのに墨の色が褪せないことにも改めて驚きます。
このような経典を日本語読みにして理解し、漢字からカタカナが、
後に漢字を崩してひらがなが生まれ…奈良平安時代に日本語の文字の基本ができた。

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印象に残った数点のみですが、図録ではなく、新聞の解説を使って紹介させていただきました。
今回は先に記事を読んでいたので、 興味深く見学することができました。

別々の友人たち3回も観に行きましたが、一番空いていたのは最終日の夕方。
次が平日水曜部のお昼頃でした。
できれば、ゆっくり空いている時に見たいですね。
今回私のベスト3を選ぶなら、
緑ガラスの長杯と青の絵箱、羊木のろうけつ染めです。
皆さんはいかがでしょうか。