ヴォーリズ建築マッケンジー邸

さて、海辺のカフェの記事からあっという間に1週間たってしまいました。
次に、友人に案内していただいたのが、
  こちらも待望の「ヴォーリズ建築マッケンジー邸」です。
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マッケンジー邸は、静岡市駿河区高松の海岸沿いに建つ美しい洋館で、
設計はウィリアム・M・ヴォーリズ
昭和15年に竣工した故ダンカン・J・マッケンジー、故エミリー・M・マッケンジー夫妻の旧宅です。
            マッケンジー夫妻
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夫、ダンカン・マッケンジー静岡茶の貿易商として、お茶の輸出に力を尽くし、
エミリー夫人は、夫の死後も日本に残り、私財を投じて社会福祉の向上に努めました。特に恵まれない子供たちに愛情を注ぎ、自ら乳児院の経営や保育園を開設して子供たちの救済に打ち込み、静岡市の名誉市民第1号に選ばれています。
ちなみにヴォーリズも、近江八幡名誉市民第一号です
高齢になった夫人は帰国時に、この館を静岡市に寄贈。数少ない戦前の洋館として登録有形文化財となり、一般に公開されました。

邸宅の敷地に入っていくと・・HOMAMの石碑が・・。
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マッケンジーさんは天体観測が趣味。夫妻は塔屋から星空を見るのが好きで、この家に、アラビア語でぺガサス座の星HOMAM(「勇者の幸福な星」の意)という愛称を付けました。
HOMAMは、「もてなし」という意味も持つそうです。「もてなし」という言葉には、この家を解放してクリスマス会を開いたり、子供たちに愛情をたくさん注いだエミリー夫人の温かさが思われました。


さて、マッケンジー邸に入ります。
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扉もアーチ型。
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アーチ型は柔らかい空間を作り、人の心を和らげる効果があるのだとか・・
窓もアーチ型です。
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ヴォーリズらしい階段
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大きな明るい窓と、ちょっと一息つくのに便利な壁利用のソファがあります。
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駒井邸とよく似ていて、一段目は低くて幅が広く、昇りやすい階段です。
階段のふちが丸くなっているのは怪我を防ぐためとお掃除しやすくするため・・。
このような工夫はヴォーリズ建築でよく見られる住み手(使い手)への配慮です。
ヴォーリズ建築が「優しい建築」とか「温かい建築」と言われるのは、このように多くの配慮が込められているからでしょう。
部屋が広く無駄なく使えるように、作り付けの家具が多いのもヴォーリズの特徴です。
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この建物は、立地条件を考慮して、潮風による腐食を防ぐため、土台は木材を使わずコンクリートを打ち、床下や天井裏を広くし、風通しがよくなるよう配慮されています。建物の主な材料はナラとクリで、狂いを防ぐため、柱などには木目の違った木材をニカワで張り合わせた集成材を使っています。接着剤が発達していない当時としては画期的な技法といえます。
 このほか、スチーム暖房用の温水タンクを天井裏においてスペースを確保したり、ドアの真鍮製ノブに特注品を使うなど、細かい気配りがあちこちにうかがえます。マントルピースや台所のアメリカ製調理器具、水洗式のトイレ、地下室にボイラーを設置したスチーム暖房などの近代的な設備も当時のままに保存されています
キッチンです。昭和15年ですが、駒井邸同様、この時代すでに床から天井まで無駄のないシステムキッチンになっています。
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作業台。動線を考えて無駄のない設計になっています。
こちらの出窓は元は食堂でした。今は資料室になっています。
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この三角形は富士山のイメージ。ヴォーリズは富士山が大好きでした。
その他、照明や金具なども一つ一つヴォーリズがデザインしたそうです。
ヴォーリズは小さいころから絵が好きだったので、デザインもお手のものでしょう。
マッケンジー邸を見に行って心に残ったのは、やはりヴォーリズ建築特有の配慮や温かさ。今回はそれがエミリー・マッケンジー夫人の優しさとも重なりました。

良い見学ができました。
案内をしてくださったFさま。ありがとうございました。