愛で平和を紡いだ「山羊のおじさん」ハーバート・ニコルソン

「やぎのおじさん」こと、ハーバート・ニコルソンさんをご存じでしょうか?
ニコルソンさんは、戦後の日本の食糧難を心配して、子供達に山羊の乳を飲ませたいとたくさんのやぎをアメリカから連れてきた人です。
やぎの乳で育った方は、この「やぎのおじさん」の連れてきたやぎだったかもしれません。

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この本は、ヴォーリズの発表会の時に、「似たような生き方をされた宣教師」として紹介されました。
<ヴォーリズとニコルソン>
ヴォーリズとは宗派が違いますが、二人ともクリスチャンの家庭に育ち、海外宣教を志して日本に来ました。
この本にもヴォーリズは、「ヴォーリズ父さん」として紹介がありました。実際、近江八幡や軽井沢で、交流もあったようです。

ヴォーリズが社会的事業を通して宣教したのに対して、
ニコルソンは農村伝道や家に集まってくる恵まれない人たちのために手を差し伸べ、
結果的に愛友園という施設も作りました。

関東大震災の直後、東京に様子を見に行くと……
そこでは群衆が朝鮮人を見つけて…汽車から突き落とし、瓶で殴り続けていたことや、軽井沢駅にまで朝鮮人を捕まえようと先に鉤竿を持っている青年がいたこと、ニコルソン氏はそれはデマだから止めて帰宅するように、と促したことなども書かれていて、紛れもない事実であったことが外人の目からハッキリ書かれていました。

<戦前は浮浪児 のために、戦時中は日系人のために働く>

彼の素晴らしさは、やぎを連れてきてくれたことばかりではありません。
1930年代の不況の時は、浮浪者や老人たちが次々ニコルソンさんに助けを求めて訪ねてきました。
彼らに梅干の入ったおにぎりを3つと50銭玉を持たせ、仕事や宿の世話をしながら、
働けない老人の為には、老人ホームを作りました。

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戦時中はアメリカに帰国するも、今度は日系人のために働きます。
アメリカでは、真珠湾攻撃で日本への憎悪が渦巻き、日系人はどんどん収容所送りになっていました。ニコルソン氏は日系人保護のため、「アメリカの良識を守るフレンドの会」を作り、あらゆる手段に訴えて、日系人を守ろうと奔走しました。

係官が日系人の女性に、
「もし、日本軍とアメリカ軍の間に立ったら、どちら側に向けて発砲するか?」と尋問すると…彼女は毅然として「自分はクリスチャンの平和主義だから、どちらにも撃たない」と言います。この答え方、日本では通らないでしょうけれど、アメリカでは重みのある言葉と受け止められました。
日本人が病気で衰弱した時も、教会では一人の日系人を助けるために血を提供しようとして申し出があるのです。

宗教的規範のあるところと全く無いところでは、対応にこれだけ大きな開きがあります。
日本ではありえないのではないか?と思うと残念な気がします。
日本人は宗教的規範がないせいもありますが、個々の良心に従って行動することより、
他人の目を意識して、体勢に従ってしまう人が多いのではないでしょうか。

ニコルソン氏は、強制収容所からも徴兵するという噂を聞いて、今度は国防省にも乗り込みます。必要ならどこにでも出向いて発言する勇気ある方でした。

<戦後は、山羊を積んで日本へ。広島長崎へは謝罪に。>

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戦後はヤギの乳を飲ませたいと、やぎを連れて日本に来るのですが、広島、長崎に行って
アメリカの残酷な原爆投下についてのおわびをしています。

その他、結核患者やハンセン病患者をさらに、死刑囚を慰めるために刑務所も訪問し、死刑反対の立場から、犬養法務大臣に会い、刑を減じてもらい、死刑から救われた死刑囚もいました。

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犬養大臣も、「死刑執行の判を押す度に、彼自身が殺人者であるように感じる」と。それからの4年間は日本では死刑執行はなかったそうです。

ニコルソン氏は、「クリスチャンとして、神は最悪の犯罪者さえ回心させることができる。現代の刑務所はリハビリの場であって、決して報復の場であってはならない」と言われてます。

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紹介が長くなりました。
一読して、ニコルソンさんを紹介させていただきたくなりました。
山羊のおじさんは、愛のおじさんでした。
人への奉仕と愛に貫かれた彼の人生に、もっと学びたいものです。

今の世の中は、相手への憎悪や非難の嵐
敵なら何をしてもいい…と勘違いする大人までいます。
非難や憎悪からは、何も良いものは生まれません。

日本が敵国になって、周りが日本人をべっ視している中でも、
彼の愛の精神は変わりませんでした。
愛を持って、平和を紡いで行ったニコルソンさんの
キリスト教精神に近づけたら…と思います。


自分の良心との対話、
相手にも最低限のリスペクトを持って…
というのが大切でしょうね。


ニコルソンさんについては
下記のサイトにも詳しく書かれています。