沖縄県議会が独・伊の対米地位協定について調査

沖縄県議会が独・伊の対米地位協定について調査

 
沖縄県議会の総務企画委員会は1月20~27日、ドイツ、イタリアの対米地位協定の実態を視察しました。調査には県議会の全会派から議員が参加しました。
 独・伊両国は多くの米軍基地を受け入れていますが、自国の主権を強く主張し、相互に尊敬しあいながら、米国とはより対等な関係を築いています。
 

 イタリアでは、1998年に米軍機が低空飛行でロープウエーのケーブルを切断し、ゴンドラに乗っていた20人を死亡させた事件を機に、米国に迫って低空飛行のルールを変える法令をつくりました。
 また「駐留米軍が何をやるのかを100%把握して、許諾を出すのはその国の基地司令官であり、許諾がなければ米軍は何もできない」体制も確立されています
 
 ドイツでは、米軍の航空機にもドイツ航空法が適用され、夜間の飛行制限措置があるほか、ドイツの法律によって年間に離着陸できる回数の上限が決められています。
 その回数は3万9600回ですが、実際はだいたいその半分くらいにおさまっているそうです。
 また騒音軽減委員会が設置され、米軍基地司令官や五つの周辺自治体の首長や専門部署の担当者らが参加し、騒音問題について話し合いをしているということです。
 
 それに対して日本では、被占領時代の日米の力関係をそのまま文書化した「日米地位協定」をいまだに順守しているというのが実態です。
 昨年、全国知事会が全会一致で採択した「日米地位協定」改定への提言書が政府に出されていますが、安倍政権は何の行動も起こしていませんアメリカに対しては、その意に反することは何一つ言えないということなのでしょうか。本当に情けないことです。
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伊、法令で低空飛行規制
渡久地修 共産党県議団長総務企画委員長に聞く(上)
 しんぶん赤旗 2019年2月3日

 沖縄県議会の総務企画委員会は1月20~27日までドイツ、イタリアを視察しました。両国は日本と同じ米国の同盟国で、多くの基地を受け入れていながら、主権を強く主張し、米国とはより対等な関係を築いています。総務企画委員長の渡久地修県議(日本共産党県議団長)に成果や意義を聞きました。
 
 イタリアでは、元NATO北大西洋条約機構)第5戦術空軍司令官のレオナルド・トリカリコ氏、ランベルト・ディーニ元首相と意見交換しました。
 トリカリコ氏は、駐留米軍との関係について、「米国とイタリアは同盟関係にありましたが、それはお互い50%・50%の力関係で、ただ相手の言うことを100%うのみにせず、お互いに尊敬しながらやってきた」と強調しました。
 
 1998年に米海兵隊機が低空飛行でロープウエーのケーブルを切断し、ゴンドラに乗っていた20人が死亡した事件では、NATO地位協定で「公務中」の事故について第1次裁判権は米側にあり、米国の軍法会議パイロットらは無罪となりました。トリカリコ氏は「なぜ無罪になるのか」と強く抗議し、米国に「これはやりとりではなく強制だ」と迫って低空飛行のルールを変える法令をつくったことを紹介。「低空飛行がなくなり、市民はいま安心して生活しています」と話しました。
 
 また、NATOでは駐留米軍が何をやるのかを100%把握して、許諾を出すのはその国の基地司令官であり、許諾がなければ米軍は何もできない」と強調し、沖縄で米軍普天間基地宜野湾市)所属の米軍ヘリが小学校に窓を落下させた事故については、「あんなに密集しているところで訓練するのはまず無理だ。他の国ではあり得ない」と指摘しました。飛行訓練についても、夜間は「100%ない」と断言していました。「犯罪事件を日本の法律で裁けないことも完全に異常なことだ。いまの沖縄のあり方というのは、ありえないことだ」と強調していました。
 
 全国知事会日米地位協定改定を政府に提言したことについて「少しずつ前に進んでいけば、絶対に不可能ではないと確信している」と話してくれました。
 
沖縄は道理を貫け
 ディーニ氏は、NATOや世界各国の基地の在り方が、日本、特に沖縄には適用されず、沖縄は全部米国の支配下に置かれていると指摘し、「各国の法律を適用しなければならないという物事の道理を米国に分からせるべきだ。日本は米国に対し、言わなければならないものも言っていない。イタリアにも米軍基地がたくさんありますが、彼らに勝手なことはやらせない。イタリアのテリトリーではイタリアが仕切るのです」と語りました。
 
 また、「人口は少数ですが、沖縄の県民が立ちあがって向かっていけば道理で勝利することができる」と語っていました。県民のたたかい、道理と正義が必ず勝利することを確信しました。(つづく)
 
 
独、離着陸の回数に上限 沖縄県議会の独伊調査
渡久地修 共産党県議団長 総務企画委員長に聞く(下)
しんぶん赤旗 2019年2月4日

 ドイツのラムステイン市では、町の3分の1を占めるという米空軍ラムステイン基地の運用について説明を受けました。
 
米機に航空法適用
 米軍の航空機にもドイツ航空法が適用され、ラムステイン基地でも夜10時から翌朝6時までの飛行制限措置があります。夜間の離着陸の場合、米空軍の責任者の許可が必要で、申請があっても司令官によって許可されない場合もあるといいます。
 また、ドイツの法律によって、年間に離着陸できる回数の上限が決まっていて、その回数が3万9600回。実際はだいたい2万回ということで、許可されている使用回数の半分くらいにおさまっているそうです。この回数は10年ごとに改定され、飛行実態に合わせたり、騒音問題があればそれに対応したりして、飛行回数の許可の回数を変えるのだそうです。
 また、騒音軽減委員会を設置し、米軍基地司令官や五つの周辺自治体の首長、ドイツの米軍騒音に関する部署の担当者、市民団体の代表者らが参加し、騒音問題について話し合いをしているといいます。
 
 一方で、土壌や地下水汚染の問題も抱えているそうです。ガソリンなどの流出、ドイツでは禁止されているものの米軍は使っている薬品類などによる汚染です。基本的には米軍が地下水や土壌を管理して調査することになっていますが、定期的に自治体も基地外で取水した地下水のチェックなどを行っているそうです。
 
沖縄の異常を痛感

 今回の調査には県議会の全会派から議員が参加し、他国と日本の米軍基地問題について共通認識を持つことができました。
 改めて沖縄の米軍基地が世界から見て異常であることを痛感しました。一方で、各国政府は主権者としての意識を強く持ち、自国の主権を守るために取り組んでいます。米国、米軍に毅然(きぜん)と交渉することで対等・平等の関係を築き、問題を解決してきたこと。日本政府もその立場に立てばすぐに実現できることです。
 

 沖縄県民の道理と正義あるたたかいが必ず勝利するということを学ぶことができました。イタリアのランベルト・ディーニ元首相は「いまこそ、沖縄の問題意識を日本政府が国を挙げてアメリカにぶつけなければならない」と語っていました。今回の視察調査の結果をみても、日米地位協定の抜本改定の世論を高め、それを実現させていくことが急がれています。(おわり)
投稿者 湯沢 事務局 時刻: 9:00