「れいわ新選組」蓮池透氏を擁立。会見で語った原発・拉致問題、そしてこの国のあり方


 候補者第1号である蓮池氏がマイクを握った。

山本太郎さんとは随分前からおつき合いがあって。3.11の後に福島・郡山市で収録したテレビの某番組でご一緒したのが最初です。

 今は芸能人が政治のことを口にするのはタブーだとよく言われてますけども、山本太郎さんはそんなことはものともせずに、国政に打って出て風穴をあけた。当時から原発反対ということでは共感し、非常にリスペクトしておりました。

 当初は反原発の旗手という形で政治をやってこられましたが、この6年間、いろいろな施策を展開しておられまして。そのへんにも非常に。国民の皆さん一人一人の目線から、それこそ皆さんのために政治をやっている。

 その原点。このままでは国が壊れるんではなくて、人が壊れてしまう。そういう危機感。これは私も非常に共感するところであります」

 蓮池氏は現在、新潟・柏崎市在住。

「突然、山本太郎さんが訪ねて来てくださって。『何とか力を貸してください』とおっしゃってくれました」

 蓮池氏は山本氏の申し出に対し、「私が太郎さんのグループに加わったら、マイナスが生じるかも。そちらのほうがむしろ大きいんじゃないか」と懸念を伝えた。山本氏はこれに「非常に光栄な言葉」で答えたという。こうして、蓮池氏は「一念発起し、山本太郎さんを応援していく」ことを決断するに至った。

 SNSで政治的な発言を繰り返してきた蓮池氏。出馬に当たって「オフラインで言いたいことを言っていく」ことも決めた。

「東京一極集中と言われる中、新潟県でも人口が流出している。県内の大学を卒業した人たちもどんどん県外に出ていく。県内への就職率は非常に下がっています。かつ県内でも県庁所在地に人口が一極集中している。このままだと、地方都市にはコンビニとラーメン屋、ドラッグストアしか残らないんじゃないか。多くの人が半ば自虐的にそうおっしゃっている」(蓮池氏)

既得権者だけが選挙に出る
 蓮池氏の生家は柏崎刈羽原子力発電所から3kmの地点にある。
「地域の人たちは非常に分断されています。分断ならまだいいんですけど、差別さえ生まれているような状況があります。原発ごときで差別が起こるなどということはあり得ない話。地域住民は内向的になっていて、元気がない」
 蓮池氏は「非常に驚いた」話として、こんな体験を披露した。
「『原発について表立って話をするのはタブーですよね?」って聞いたら、『いや、マナーだよ』と言われたんです。その言葉に非常にショックを受けました。

 山本氏がこれまで力を注いできた格差や貧困の問題。蓮池氏は「1億総中流」と謳われた時代を生きた。「上級国民」という言葉まで使われるようになっている現状への疑念が拭えない。
『このままじゃいけない』『こんなことでいいのか』という疑問がふつふつと湧いてきました」
 原発を筆頭に現政権が進める政策を、蓮池氏は一刀両断した。
すべてがその場しのぎで棚上げ、先送り。このまま行ったら、この国に住んでいる人たちが壊れる。『これからの人たちは生きていけるのか』という不安が私にのしかかってきます」

 高額な供託金に代表される政治参加への高いハードルの問題についても、山本氏と蓮池氏は一致している。

既得権者だけが選挙に出る。選挙に出たからには、とにかく勝つことに専念するそれが本当の政治なのか山本太郎さんは今まで一人でやってきた。でも、このまま一人にはしておけない。『一人や二人、あるいは10人で何ができる?』という方も大勢おられるでしょう。でも、『今やらないでいつやる?』とも非常に強く感じるところです」
インディーズとはいえ、ブレイクする可能性は十分ある
 蓮池氏は政治の世界におけるれいわ新選組や自分自身の存在を「インディーズ」と規定する。自民党公明党をはじめ、既存政党はメジャーレーベルというところだろうか。

「しかし、いくらインディーズとはいえ、いろいろな方が政治に関心を持ってくださり、投票率を80%くらいにできるのであれば、ブレイクする可能性は十分ある。ブレイクという形になって、山本太郎さんと私たちで政策云々ということができるかは今のところわかりません。ただ、少なくともそのスタートにはなる。そこに意義があると考えます」

 蓮池氏は1955年1月生まれ。1954年9月生まれの安倍晋三首相とは同学年だ。

「太郎さんから見れば、父親みたいな年代。この65年間、いろいろな方にお世話になり、いろいろな方に助けられ、いろいろな方に迷惑をかけてきました。そうした方々、すべての国民の皆さんに恩返しできればと考えております」
 山本氏が蓮池氏に出馬を要請したのは、「ここ1週間くらいの期間」だという。
「私が一緒に戦っていきたい人は本気の大人なんです。骨のある人。それを頭の中で考えたときに、蓮池さんの顔が浮かんだ」(山本氏)

 一方で野党の中には玉木雄一郎・国民民主党代表や小沢一郎・同総合選対本部長相談役を中心に、野党の結集を進める動きもある。第1党である立憲民主党枝野幸男代表の態度が不鮮明なままではあるが、32ある参院選の1人区のうち、30選挙区で候補者の一本化が終わった。
野党全体の塊をつくりたい
 れいわ新選組の候補者がこの先、野党の統一候補として選挙戦を戦うことはあるのだろうか。蓮池氏はこう語る。

「全てにおいて柔軟に対応したい。ただ、野党が固まっただけで勝てるとは思っていません。当初から言っている通り、政策の一致が必要。幅広く一致を求めると、結集は難しい。今、この国に生きる人々の生活を考えた上で一番伝わりやすいということでは、やはり消費税でしょう。消費税減税が野党の共通政策として必要です。そういった意味で一致が見られるならば、柔軟に対応したい。

 衆議院小選挙区にれいわ新選組が候補者を立てるかどうかは今後の野党共闘の進展次第。野党共闘の中で本当にまとまっていかないのであれば、票を割る結果になるとしても、こちらも立てなければならなくなるかもしれない。

 だからこそ、野党の皆さんには塊になっていただきたい。かなり強引な印象を受けるかもしれませんが、そういう働きかけをしないと、政治は今までの通りでしかない。消費税を下げていくという政策の面でも、野党全体の塊を作るという意味でも、皆さんの力を借りながらプレッシャーを掛けていきたい」
政治家になるよりも、政治に興味を持ってもらうことが目的
 蓮池氏が政界進出を誘われたのは、今回が初めてではない。

「『政治の世界に』というお誘いはこれまでに何度かありました。拉致問題は今も続いているわけですけども。私はそういうさなかにあって、『私が政界に打って出て、拉致問題を私の手で何とか』とか。私は被害者の家族ですから。そういうことはやってはいけないと思っておりました。自ら政治に進出することを逡巡していたことは確かです。

 昔の話ですが、今までのお誘いは名前が多少は知れ渡っているということで。はっきり言って利用されているのかな、というのがありましたので。かつ、自分がそんな政治に携われるような器ではないと思ってましたし。

 でも今回は、太郎さんは違う。身につまされるような生きづらさ、息苦しさ。そういうものは東京にいても、地方にいても感じるわけです。

 街宣を見てもわかるように、太郎さんは『みんなでやろうぜ』と非常にわかりやすい言葉で多くの人に語り掛けている。単にパフォーマンスだけの政治家ではないと思っていました。

 みんな諦めて、『政治なんか関係ない』という人たちに対して、『こっちを向いてくれよ』という気持ちがすごく伝わってくるんです。

 はっきり言えば、私が政治家になるというより、皆さんに本当に政治に興味を持ってもらって。今まで投票にも行かなかった人たちに少しでも関心を持ってもらい、投票率が上がれば、この国もよくなるんじゃないか」(蓮池氏