子どもと読みたい平和を考える本

大和郡山では、毎年、平和展が行われます。
子ども達と戦争を考える良い機会にもなります。まだお元気な語り部さんも活躍されますが、展示される本も良いものがあります。
 
司書の友人から、子ども達向けの良い本を紹介していただきました。
(小学校高学年から中学高校生向きですが、大人が読んでもとても勉強になります)
 
ヒロシマは世界をむすぶ」  小島昌世 ポプラ社
 著者は中高一貫校の英語の先生で、平和学習の引率で広島へ行くことから、先生自身の勉強が始まります。
そこから、在韓被爆者のこと、創始改名などの日本の政策のこと、アメリカ人記者が広島に滞在して市民が体験したヒロシマを米国の読者に伝えていること、ビキニ環礁の実験、第五福竜丸のことなどを、網の目が広がるように、次々に書いています。
すべてがつながっていること、戦争は平和なときに準備されるということ、自分たちには何ができるのかということなどを、真摯に問いかけます。
読みながら知識が広がり、教科書では教わらない現実社会を、しっかり見る目が養われます。 
 
 
  
クラシックな名作ですが、社会の仕組み、戦争と英雄、友情と裏切り、人間関係など、大切なことについて学べる良い本。若い頃に一度は読んでおきたい本です。大事なことばかりが分かりやすく書かれています。主人公が14歳なので、それも読みやすく感じます。
 
「ネルソンさん、あなたは人を殺しましたか?」A・ネルソン 講談社
 
「ネルソンさん、あなたは人を殺しましたか?」この言葉は、ベトナムの体験談を話しに来た元海兵隊ネルソンさんに、教室の前に座っていた少女が質問した言葉です。
人を殺すことがどんな体験であったかを思い出すと返事に詰まるネルソンさん。
 
甘い言葉で勧誘され、沖縄で殺人者となる訓練を受けてベトナムへ送られた黒人兵の記録です。経済的に弱い立場にある人たちが、洗脳され、殺人ロボットにしたてられて、戦場へ送られる様子が、客観的によく分かる本です。
そして、彼が、人形と思わせられていたベトナム人アメリカ人も同じ人間だと気づく瞬間や、帰国後、人を殺した記憶によるPTSDに苦しんだこと、各地で戦争の実態を語る活動をするようになったきっかけなども、読み手の心を深く打ちます。
(尚、本書は全国学図書館協議会選定図書となっています。)
戦争の加害者は誰か?人を殺す兵士ではなく、兵士に人を殺させる国家であることなど
気づきがたくさんあります。
アレンネルソンさんは平和運動家として、日本にも来られましたが、2009年に亡くなりました。この本で、ネルソンさんは日本の憲法9条をすばらしい憲法と称えています。 
 
「少年は戦場へ旅立った」 M・モーバーゴ
  南北戦争のときの話で、小説ですが、やはり、貧しい家庭の子が戦場へやられ、いざ行ってみると、話と現場は大違い、の狂気の場であることが、淡々と描かれています。
 
「ボタン穴から見た戦争」 アレクシエーヴィチ  群像社
  第二次世界大戦当時、子どもだった人たちに、著者が丹念に聞き取った記録です。50,60という年齢になっても、目の前で家族が惨殺された記憶がなまなましくて、未だに肉屋へ行けないというような証言には、言葉もありません。一般書ですが、体験当時の年齢がちょうど14くらいの人もいるので、戦争になると非戦闘員がどんな目にあうのか、の紹介には使えるかもしれないと思います。
 
イラクの小さな橋を渡って」 池澤夏樹
 
 アメリカが攻撃をしかける数ヶ月前に、イラクを訪ねた作家が、ごく普通に暮らしを愉しむ人々を客観的に描き、イラクという国の魅力、人々の人懐こさをていねいに伝えた本です。本橋成一氏の写真が半分くらいを占めています。司書さんはこの本を読んで、イラクの人々が好きになったと仰っています。
 
「せんそうでまえばなし」本多立太郎 語り 常本一編集 みずのわ出版
特に、中国の学生さんとの、市民としてのホンネの対話が圧巻です。
ろくに知らないし、知ろうともしないで、「中国は」とか、「日本は」という一部の人たちには相互理解は難しいけれど、人間同士でぶつかりあえば、分かり合えるという好例。
 
茶色の朝」 F・パヴロフ 大月書店
  茶色のペットしか飼ってはならない、というあたりから始まった政府の統制がどんどんエスカレートし、友が逮捕され、自分の家のドアもついにノックされる・・・そのときになって初めて「茶色党のやつらが最初のペット特別措置法を課してきやがったときから警戒すべきだったんだ」と気づくという寓話で、本文はわずか29ページです。
フランスで極右のルペンが大統領選の決選投票まで残った時に、1ユーロで販売され、「極右にノンを!」という動きにつながった一冊、だそうです。
 
「軍隊のない国コスタリカ」 早乙女勝元 草の根出版会
  大変興味深い国ですが、私にとってとりわけ面白かったのは、小学生のころから、お祭り感覚で「模擬選挙」など、選挙教育が盛んだということでした。アメリカのイラク攻撃に追随するようにコスタリカ政府も軍を出したとき、大学生がひとりで訴訟を起こして、それは憲法違反だと訴え、裁判所がそれを認めて、政府に撤兵させたという胸のすくような記事がありました。小学生から選挙教育を徹底していると知って、なるほど!と納得しました。(司書さんより)
私は、ノーベル平和賞受賞者のアリアス大統領の話が興味深かったです。
コスタリカは、軍隊も、軍備も、軍事費もない国です。自分の国で平和を守るためには、近隣の国も平和にしなければならない。これがまたコスタリカの発想です。
・・・平和教育の根本を徹底して、兵士を先生に変え、軍事費を教育費にまわして、国の教育予算は国家予算の3分の1を占めています」
国のあり方に感動します。  
 
 
「希望と勇気、このひとつのもの」 澤地久枝 岩波書店
  薄いブックレットですが、この本も、戦争になると、庶民がどんな手ひどい目にあうのかを具体的に教えてくれます。
澤地さんは、「九条の会」呼びかけ人のお一人で、心臓を何度も手術され、ご高齢にも関わらず、各地へ出かけて、講演をなさっています。その叫びであり、祈りであり、必死の警鐘である一冊だと感じます。これも、歴史的過去として戦争を語るのではなく、現在を照らし、未来を考えさせてくれるものです。
 
最後に、「日本国憲法」(井上ひさし池澤夏樹など、いろんな人たちが、分かりやすい言葉にしたものが出ています。)と「新しい憲法のはなし」(童話屋が廉価で出していたと思います。)を今、改めて読むのもタイムリーかもなと思います。
 
ご存じの本ばかりかもしれませんが、親子で読んでみるのも良いものだと思います。
私は自分が読んで良かった本は、子ども達に・・。
子どもには、良い本があったら回してねと言っています。