【大震災2年】(13)震災後、社会は変わった?
【大震災2年】(13)震災後、社会は変わった?
最終更新日:2013年3月11日
日本は経済的発展のみを優先してきたのではないか? 原発マネーなどの原子力行政が社会のひずみを生んでいるのではないか? 震災後に生じたこうした価値観の変化によって、社会を変えようという機運が高まりました。たとえばデモは、震災前よりも一般的な行為として広く認知され、今では家族連れの参加も見られます。それでは、こうした社会を変えようという機運によって、この2年、実際に社会が変わったと思いますか?
第1章 私たちの意識や価値観は変わった?
まず、各種調査結果をご覧ください。あなたにも当てはまるものはありますか?
価値観の変化
"自分のことより社会に関心がある人が増え、しっかりと計画を立てて豊かな将来を築きたいという堅実な人が増加"
[出典]東日本大震災で日本人はどう変わったか - NHK放送文化研究所(2012年6月1日)
"震災以後、社会との結び付きについて「前よりも大切だと思うようになった」と答えた人が79.6%"
[出典]【図解・社会】東日本大震災・大震災後の社会との意識変化 - 時事通信(2012年3月31日)
"震災の前後で「自分を信じる」が「専門家に助言を求める」を逆転"
[出典]世の中で成功するために自分を信じる?助言を求める? - @DIME(3月6日)
職業観、仕事観は
"「仕事があることの大切さを実感した」人の割合は3割(29.9%)、次いで「ワーク・ライフ・バランスに対する関心が高まった」が2割弱と続く"
[出典]「ポスト3.11の仕事観」に関する調査 - NTTデータ経営研究所調査。MANAGEMENTLEADER(2012年12月10日)
"価値観の変化2位は「より人の役に立つ仕事がしたいと考えるようになった」で42.7%。ほかの調査項目で、「勤務地を重視するようになった」が35.0%"
[出典]3・11 大震災が変えた「仕事」と「生き方」、400人の真実 - リクナビNEXT(2011年8月10日)
科学者への信頼感
"震災前は12~15%の国民が「科学者の話は信頼できる」としていたのに対して、震災後は約6%と半分以下にまで低下している"
ライフスタイルの変化
◆無駄を見直し、節約我慢できること、買わずに済むことを考えたい
◆日常生活の中の「ささやかな幸せ」を大事にしたい
◆非日常的な気持ちになれる時間・場所を作っておきたい
◆日常生活の中の「ささやかな幸せ」を大事にしたい
◆非日常的な気持ちになれる時間・場所を作っておきたい
[出典]『震災一年半後の意識・ライフスタイル』レポート(PDFファイル) - 電通総研(2012年9月21日)
- 第1章 編集部より
- 震災後の価値観の変化は、SQ(ソーシャル・クオーシェント)という新しい言葉を生み出しました。他者や社会との関わりを重視する価値観のことで、関西学院大の鈴木謙介准教授が提唱した新しい概念です。SQのキーワードは4つ。「他者への貢献」、「広範囲での協力」、「モノより心」、「次世代を視野に入れた行動」。震災から2年、あなたの価値観にこれらのキーワードが刻まれているでしょうか?
震災後、価値観はどう変わった? 鈴木謙介さんが語る - Business Media 誠(2011年10月27日)
第2章 価値観の変化は、社会にも変化をもたらしたか
震災が私たちの価値観に何らかの変化をもたらしたとして、それでは、私たち一人一人が形作る社会にもその変化は反映されているのでしょうか。
社会を変えることの難しさ
- 『フクシマの正義 「日本の変わらなさ」との闘い』著者・開沼博インタビュー震災後増殖した、“正義”を騙る浅はかな知識人や市民を疑え - ビジネスジャーナル(2012年10月7日)
- 日本を創る 震災と文明 1,未来の他者と連帯できるか - 47NEWS
震災直後は「今回の震災を機に、人々の価値観などが変わる」と興奮しながら盛んに主張する、中央の「知識人」が沸き上がっていましたが、結局はテンションが上がっちゃったがゆえの一時的なノリだったことが露呈してしまったのも予想通りです。
社会学者・大沢真幸さん
原発をめぐる一番難しい問題がここにあります。僕らは震災が起きたとき、さまざまな差異を超えて人々が連帯する可能性を直感できた。でも、それはやはり、今一緒に存在しているからなんです。まだ存在していない他者と連帯できるか。声を上げることができない未来の他者を念頭に置いた社会が、人間にとって可能かどうかを、僕らは突き付けられている。
脱原発デモをめぐって
- この人に聞きたい 鎌田慧さんに聞いた 10万人集まろう!政治を動かすのは、やはり「数」なのです。 - マガジン9(2012年6月27日)
- 社会学者・小熊英二が考える“社会を変える方法” - クーリエ・ジャポン(2012年9月29日)
- デモの参加者にも広がり始めた焦りと無力感「脱原発」意識の二極化現象に覚える違和感の正体 - ダイヤモンド・オンライン(2012年8月3日)
- 反原発デモで社会は変わらない-『社会を変えるには』 - 池田信夫氏。アゴラ(2012年9月29日)
デモが持つ可能性
それにね、「人が集まる」って楽しいんだよ。これはもう、人間の本能だと思う。若い人にとっても、そういう体験をすることは、絶対これからの人生にプラスになると思う。集まってくる人たちを見ていると、人を信頼できるようになるし、人生観が変わりますよ。
多くの場合、立場は異なれど、それぞれが「社会を良くしたい」と思っているのです。そうしたとき、対話の場を設けて、意見を俎上に上げ、そこから議論を深めることが重要になってきます。そのためには、デモをやってもいいかもしれないし、オンラインの署名運動をやってもいいかもしれない。
デモのジレンマ
今のデモが「運動のプロ」ではない幅広い層を集めることに繋がっている一方、素人であるがゆえに政策への反映プロセスがわからず、ジレンマに陥っている側面もある。繰り返し述べるが、原発問題については様々な意見があり、まだまだ議論を深めなければならない。国民の不満や疑問と正面から向き合うことを政府が避け続けていれば、火に油を注ぐことになりかねないことだけは、理解しておく必要があるだろう。
第3章 答えを求め、問い直される思想と言葉
ポスト3.11という世界を切り開くためにできることとは。震災後、自らにその問いを投げかけ続けている思想家や作家の「言葉」を最後に紹介します。
- 【「東京/東北学」のために】赤坂憲雄(9)「普遍への言葉」を生むには - 産経新聞(2月25日)
私たちは、2年が過ぎようとしているいまもまだ、状況を超えていく言葉をそんなにたくさん手に入れているわけではない。原発事故のもたらした変容について、命の問題とか、人と自然の関係性とか、魂の深いところに響いてくる言葉を、私たちはいまだ持ち得ていない。「普遍への言葉」を紡ぎ出すことが求められているけれど、依然として立ち往生しているのです。
- 声で文字で 届く限り 言葉を信じ、震災後を伝える 古川日出男さん(作家) - 東京新聞(2012年5月19日)
日本の「変わらなさ」は、震災以降、ますます浮き彫りになっている。「そんな日本を凝視し続けなくてはいけないと思った」
作家・高橋源一郎さん
- 日本を創る 震災後論3 「抵抗することば」 - 47NEWS(2012年9月10日)
単調な社会のことばではない、それぞれのオルタナティブなことばをみんなが持てば、論理的には多数派はいなくなる。タブーはなくなる。そのためには、まず少数派がばらばらに自分のことばを発するしかありません。
詩人・和合亮一さん
- 編集部のまとめ
- 震災から2年。この間を振り返って、今後の社会を描くための十分な言葉がやりとりされてきたでしょうか。被災地の復興や被災者の暮らし、原発や電力のあり方など、数多くの課題についての対話は尽くされたでしょうか。もしそれが不十分だと感じるのであれば、2年という区切りを、これからの社会を切り開くための新たなスタートラインとして改めて認識することが、私たちに求められているのかもしれません。
社会を変えなければならないという思い