【大震災2年】(13)震災後、社会は変わった?

【大震災2年】(13)震災後、社会は変わった?
最終更新日:2013年3月11日

日本は経済的発展のみを優先してきたのではないか? 原発マネーなどの原子力行政が社会のひずみを生んでいるのではないか? 震災後に生じたこうした価値観の変化によって、社会を変えようという機運が高まりました。たとえばデモは、震災前よりも一般的な行為として広く認知され、今では家族連れの参加も見られます。それでは、こうした社会を変えようという機運によって、この2年、実際に社会が変わったと思いますか?

第1章 私たちの意識や価値観は変わった

まず、各種調査結果をご覧ください。あなたにも当てはまるものはありますか?
価値観の変化

職業観、仕事観は
    "「仕事があることの大切さを実感した」人の割合は3割(29.9%)、次いで「ワーク・ライフ・バランスに対する関心が高まった」が2割弱と続く"
    [出典]「ポスト3.11の仕事観」に関する調査 - NTTデータ経営研究所調査。MANAGEMENTLEADER(2012年12月10日)

科学者への信頼感

ライフスタイルの変化
    ◆無駄を見直し、節約我慢できること、買わずに済むことを考えたい
    ◆日常生活の中の「ささやかな幸せ」を大事にしたい
    ◆非日常的な気持ちになれる時間・場所を作っておきたい
    [出典]『震災一年半後の意識・ライフスタイル』レポート(PDFファイル) - 電通総研(2012年9月21日)

第1章 編集部より
震災後の価値観の変化は、SQ(ソーシャル・クオーシェント)という新しい言葉を生み出しました。他者や社会との関わりを重視する価値観のことで、関西学院大鈴木謙介准教授が提唱した新しい概念です。SQのキーワードは4つ。「他者への貢献」、「広範囲での協力」、「モノより心」、「次世代を視野に入れた行動」。震災から2年、あなたの価値観にこれらのキーワードが刻まれているでしょうか?
震災後、価値観はどう変わった? 鈴木謙介さんが語る - Business Media 誠(2011年10月27日)

第2章 価値観の変化は、社会にも変化をもたらしたか

震災が私たちの価値観に何らかの変化をもたらしたとして、それでは、私たち一人一人が形作る社会にもその変化は反映されているのでしょうか。

社会を変えなければならないという思い

    • 日本を創る 震災後論2 1,「諦観と希望」 - 47NEWS(2012年2月26日)
    • 作家・高村薫さん
      私たちは「どうしようもない」現実を認めた上で、先に進まなければなりません。さまざまな価値観と欲望に動かされる世の中で、どうやったら最低限の合意点を見いだせるか。とても難しいことですが、子どもたちのことであれば、私たちは一致できるはずです。

社会を変えることの難しさ

脱原発デモをめぐって

    デモが持つ可能性
    • 社会学者・小熊英二が考える“社会を変える方法” - クーリエ・ジャポン(2012年9月29日)
    • 多くの場合、立場は異なれど、それぞれが「社会を良くしたい」と思っているのです。そうしたとき、対話の場を設けて、意見を俎上に上げ、そこから議論を深めることが重要になってきます。そのためには、デモをやってもいいかもしれないし、オンラインの署名運動をやってもいいかもしれない。

    デモのジレンマ
    • デモの参加者にも広がり始めた焦りと無力感「脱原発」意識の二極化現象に覚える違和感の正体 - ダイヤモンド・オンライン(2012年8月3日)
    • 今のデモが「運動のプロ」ではない幅広い層を集めることに繋がっている一方、素人であるがゆえに政策への反映プロセスがわからず、ジレンマに陥っている側面もある。繰り返し述べるが、原発問題については様々な意見があり、まだまだ議論を深めなければならない。国民の不満や疑問と正面から向き合うことを政府が避け続けていれば、火に油を注ぐことになりかねないことだけは、理解しておく必要があるだろう。
第2章 編集部より
この章で紹介した社会学者の小熊英二氏は、その著書「社会を変えるには」の中で、「デモで何が変わるのか」という質問に対し「デモができる社会がつくれる」と答えると述べています。確かに、原発事故を契機に、デモという手段はごく一般的な広がりを持つものへと変わりましたが、果たして私たちはデモで実現したい社会、「ポスト3.11」のイメージを具体的に描くことに成功しているでしょうか。次章では、そのヒントを探ります。

第3章 答えを求め、問い直される思想と言葉

ポスト3.11という世界を切り開くためにできることとは。震災後、自らにその問いを投げかけ続けている思想家や作家の「言葉」を最後に紹介します。
  • 【「東京/東北学」のために】赤坂憲雄(9)「普遍への言葉」を生むには - 産経新聞(2月25日)
  • 私たちは、2年が過ぎようとしているいまもまだ、状況を超えていく言葉をそんなにたくさん手に入れているわけではない。原発事故のもたらした変容について、命の問題とか、人と自然の関係性とか、魂の深いところに響いてくる言葉を、私たちはいまだ持ち得ていない。「普遍への言葉」を紡ぎ出すことが求められているけれど、依然として立ち往生しているのです。

作家・高橋源一郎さん


詩人・和合亮一さん


編集部のまとめ
震災から2年。この間を振り返って、今後の社会を描くための十分な言葉がやりとりされてきたでしょうか。被災地の復興や被災者の暮らし、原発や電力のあり方など、数多くの課題についての対話は尽くされたでしょうか。もしそれが不十分だと感じるのであれば、2年という区切りを、これからの社会を切り開くための新たなスタートラインとして改めて認識することが、私たちに求められているのかもしれません。