日常で放射能と向き合う料理法と食べて身体を守る工夫』

富山医科薬科大学名誉教授  田澤賢次
 
放射性物質の人体への影響の基本理解
外部被曝:空間線量に依存する。皮膚からの吸収、雨からの浸透、粘膜からの吸収、核種の粒子の大きさ、溶けやすさによって異なる。防御するためには、汚染処理(土壌の排除・掃除)、放射土壌、物から離れるか遮蔽物を置く、皮膚の露出を少なくする、入浴手洗い、傘の使用などで放射線より防御する工夫が大切である。
内部被曝: 飲食(消化器)、呼吸器、創傷から体内に入り組織に蓄積する。放射性物質により排泄率、残留率、年齢別吸収率が異なる。防御するためには、食品の選択、食品の下処理と料理法の工夫、体内汚染に対する除染対策、傷の処置、マスク使用などによる工夫が大切である。

ウラジーミル・バベンコ著より

 
食事を作る立場の人は放射能の除染に留意するためには、家族を守るための愛情のある食生活になるように料理法にも注意していただきたい。
 
放射能と向き合うためには、栄養素を犠牲にするのはもったいないなどあまり気にしないで、皮を剥く事であり、タップリ水(湯)を使って全ての食品を洗うこと。漬(塩や酢)けること。煮ること、茹でること。除染処理をした後は、鍋に蓋をしないで煮ることや、野菜の皮を剥いた後、お湯に浸して少し時間を置くことが、食事を作る時の工夫のポイントになります。
 
 
チェリノブイリ原発事故の25間に及ぶ研究結果に今私たちは素直に学ぶべきであり、それを実施すべきで
 
特にペクチンを多く含む食品をより多くとって、放射能汚染の除去を繰り返し繰り返し重ねていくことの重要さが必要です。野菜は皮をむいた後、しばらくそのままにしておくことによって、ペクチン量も増えます。
日本においては容易に手に入るペクチンではりんごやみかんがあります。
 
私の大学時代の研究結果では、りんごは、腸内環境の浄化に必要な腐敗菌(悪玉菌)にたいする静菌効果にも優れており、大腸がんの発生抑制においてもみかんよりも優れています
 
 
セシウム-137の報告から見える食べ物への取り込みの特徴』
『野菜・穀類の放射性物質を取り込みにくい順番』
 
 
 
 
玉ねぎ<ほうれん草<トマト<キャベツ<ネギ<にんじん
<キュウリ・レタス<じゃがいも<大豆<さつまいも
 
『くだものの放射性物質を取り込みにくい品種』
りんご・なし・ぶどう・さくらんぼ・すもも・いちご
 
『くだものの放射性物質を取り込みやすい品種』
べりー類・黒房すぐり
 
『特に放射性核種を吸着するペクチン豊富食品を』
ペクチン含有の食品、飲み物の摂取を積極的に心掛ける(特に、リンゴ、みかん、ブドウ、もも、レモン、オレンジ、イチゴ、クルミ、海藻類にはペクチンもミネラルも豊富なので積極的に摂取する、干しブドウ、干しアンズもお奨め)こと。
 
・ ベルラド研究所のV.B. Nesterenko論文での3歳以上の子供ではアップルペクチンが一日2g投与されているがこの量では有効なミネラルの吸着後のバランスには影響なかったと報告されている
・特に有効性が高いりんごのペクチンの摂取が薦められるが、このアップルペクチンは皮付きリンゴ一個(約200g)当たり約0.20.8%(約0.41.6g)含み、食物繊維としても2%(約4g)含むので.毎日皮付きリンゴ一個半から二個程度が推奨される。
 
『台所でできる食品に含む放射能の除染』
 
(1)大切な大原則として守ること
・基本として、汚染のひどい食材は料理法を工夫しても食べてはいけない。
・食材に含む放射能の量が暫定基準値の数倍までなら料理法は有効である。
放射性セシウム温かい(28℃以上)水に溶けやすく、油脂類には溶けない」。
 
(2)野菜・くだもの・穀類では
・その表面をきれいにするために水でよく洗う。
・皮をむき、放射能がたまりやすい部分を取り除く。
・蒸したり、茹でたりする場合でも、よく洗って皮をむくこと。
この操作だけでセシウム137を5分の1から2分の1に減らすことができる。
・キャベツは表面の葉を3から4枚取って捨てることで放射能を40分の1にまで減らすことがでる。
・にんじん、かぶ、大根は地上部分に出ている茎や葉を取り除くと放射能を5分の1にまで減らすことができる。
・ねぎ、玉ねぎは根の部分も大きめに切り落とす。
・じゃがいも、トマト、キュウリ、なすは流水でよく洗うだけで7から5分の1にまで減る。
さらにきれいに洗ったじゃがいもの皮をむくと放射能2分の1に減る。
・穀類は、もみ殻を脱穀して取り除くと放射能は15から10分の1にまで減る。
・野菜は塩水(2%)に漬けたり、酢水に漬けるとなお効果的に放射能は減る。
・漬けた後の汁は必ず捨てる。
・塩水や、酢水にさらす時は約10分ほど浸しておくと有効である。
・さらし終わったらもう一度よく水洗いする。
・茹でたりする場合は切口が多いほうが効果が大きい。
・茹で汁をよく切り、必ず捨て、さらに流水で洗い流す。
 
(3)肉・魚でできること
放射性セシウムは柔らかい組織、特に肝臓や腎臓に蓄積しやすい。
・放射性ストロンチウムは硬い骨に蓄積し、なかなか排出されないが煮ると,
だし汁にでてくるのでスープは決して飲まない。
・脂身の脂肪部分は、放射性物質の蓄積が最も少ない部位です。
・肉の種類は、豚肉<牛肉・鶏肉<野生動物の順で放射性物質に汚染されている。

ウラジーミル・バベンコ著より

 

ウラジーミル・バベンコ著より

ウラジーミル・バベンコ著より

・調理法の工夫は、小さめに肉をぶつ切りにし、2%塩水に12時間以上さらしておく。
肉は大きな塊より、ぶつ切りやスライスにしたほうが早くセシウムが水に溶け出ます
・水は硬水より軟水のほうがセシウムが溶け出やすい。
・さらす水に酢かビタミンCを加えると肉からのタンパク質の流出を防ぎます。
・肉の茹で方は、810分沸騰した状態で茹でる。これで50%の放射性物質が肉から排泄される。
・魚も肉と同様に、セシュウムが蓄積しやすい内臓や頭部、えら、皮は除去する。
・内臓や骨を取り除いた魚肉を2%の塩水に12時間さらした後に料理する。