河野談話を「継承する」と「言う」だけで、内容は認めない安倍総理

当事者の第三者語り」という錯覚商法
訪米中の安倍首相が、ハーバード大学で講演したとき、学生から

「日本政府(≒日本軍)が第2次世界大戦中に数多くの女性を強制的に性的奴隷にしたが、介入したことを認めるか」

…という趣旨の質問をされ、こう答えたそうです
「(慰安婦被害女性たちが)人身売買にあい、言葉では言いようのない苦痛を味わったことを思えば
 今でも胸が痛む。この気持ちは歴代首相らと違わない」…


ええ、そりゃ、そうでしょう

意思に反して性奴隷とされた女性の耐え難い痛みを思うとき、その大きく深い傷に対して胸
が痛まない人など、まずいないと思います

でも…

安倍首相は、韓国から…だけではなく、国際社会(≒国連)から、例えば…
日本は、以下を確保するため、即時かつ効果的な立法的及び行政的な措置をとるべきである。

(i) 戦時中、「慰安婦」に対して日本軍が犯した性奴隷あるいはその他の人権侵害に対するすべての訴えは、 効果的かつ独立、公正に捜査され、加害者は訴追され、そして有罪判決がでれば処罰すること。
(ii) 被害者とその家族の司法へのアクセスおよび完全な被害回復。
(iii) 入手可能なすべての証拠の開示。
(iv) 教科書への十分な記述を含む、この問題に関する生徒・学生と一般市民の教育。
(v) 公での謝罪を表明することおよび締約国の責任の公的認知。
(vi) 被害者を侮辱あるいは事件を否定するすべての試みへの非難。

自由権規約(市民的政治的権利に関する国際規約)委員会 最終所見 2014年)
…という要求を受けている国の政府の最高責任者でありまして

「日本軍性奴隷の責任問題に関する当事者中の当事者」の立場にある人です


そんな人が、慰安婦に対して「胸が痛む」…とだけ答えつつ

たんに性奴隷を「人身売買の犠牲」と表現して、その人身売買の主体(=日本軍の
責任)には触れず、

慰安婦問題については過去の首相たちの考えと私の考えは違わない」

河野談話について継承することは何回か申し上げてきた。このような立場から、
 日本は慰安婦問題を現実的に解決するため努力を続けてきた」

…と、オウムのように繰り返すばかり…と言うのは、誠に「ふざけた話」です


そもそも「継承」という日本語は「そのままの形や内容で引き継ぐ」という意味であるところ

河野談話を継承すると言うのなら、河野談話のなかにある
慰安所は、当時の軍当局の要請により設営されたものであり、
 慰安所の設置、管理及び慰安婦の移送については、
 旧日本軍が直接あるいは間接にこれに関与した」こと

慰安婦の募集については、軍の要請を受けた業者が主としてこれに当たったが、
 その場合も、甘言、強圧による等、本人たちの意思に反して集められた事例が数多くあり、
 更に、官憲等が直接これに加担したこともあったことが明らかになった」こと

慰安所における生活は、強制的な状況の下での痛ましいものであった」こと

「本件(慰安婦)は、当時の軍の関与の下に、多数の女性の名誉と尊厳を深く傷つけた問題である。
 政府は、…いわゆる従軍慰安婦として数多の苦痛を経験され、
 心身にわたり癒しがたい傷を負われたすべての方々に対し
 心からお詫びと反省の気持ちを申し上げる」こと

「そのような気持ちを我が国としてどのように表すかということについては、
 有識者のご意見なども徴しつつ、今後とも真剣に検討すべきものと考える」こと

「われわれはこのような歴史の真実を回避することなく、むしろこれを歴史の教訓として直視していきたい。
 われわれは、歴史研究、歴史教育を通じて、このような問題を永く記憶にとどめ、
 同じ過ちを決して繰り返さないという固い決意を改めて表明する」こと

などの内容をそのまま認めて、それを自分の口でくり返し表明し実行することが、真の意味での「継承」になるはずなんです

にも関わらず…

安倍は、自分の口からは決して「反省」や「謝罪」の言葉を発しようとはしません


口では河野談話を「継承する」と言いながら、談話に示された具体的な内容については、決して自認はしない…これが、安倍の基本姿勢です

このような不誠実な態度と言い、当事者の第三者語りと言い

安倍には、日本軍性奴隷についての当事者性の意識が皆無であり、さらには
20世紀にさまざまな紛争が起こった所で、女性の人権と名誉が
 深く傷つけられてきた歴史を私たちは見た。
私たちは21世紀を20世紀のようにしてはならない
…という、これまた「一般語り」によって

日本軍の所業を一般化希薄化することに終始し、

日本(軍)の責任に向き合う姿勢がまったくありません


言うまでもなく、20世紀において女性の人権と名誉を最も大規模に傷つけた象徴的な事例が日本軍性奴隷制度…でありまして、日本はかかる歴史を「見た」側ではなく「つくった側」にあるんです

(そして、その責任に向き合い慰安婦問題を解決することを、国際社会から求められている側にあるんです)

その当事者が、個人的同情だけを語り、性奴隷制度の主体に触れず、

国際社会や被害者の求める措置に背を向け続ける…というのは

「女性の人権と名誉を大きく傷つける」という同じ過ちを、

現在進行形で繰り返しているのと同じです

慰安婦問題(の解決)は過去の問題ではなく「現在の問題」であり
 安倍首相のみならず、日本の市民もまた、その当事者であることを、忘れないでくださいませ