戦争法案関連…シビリアンコントロールの問題というより、シビリアンの問題なんだと思う(五郎さんのブログから)

2015-08-22

戦争法案関連…シビリアンコントロールの問題というより、シビリアンの問題なんだと思う (長いです!)

自衛隊が「戦争法案」の中身を先取りする形で作った内部資料に基づいて

内密に会議を行っていた…ということが共産党の議員の質問から明らかになりました

これは「戦争法案成立」を前提としたものであり、国会軽視であるとともに

実力組織である自衛隊が法案成立に先駆けて(海外での武力行使の)検討を始めた
…ということで

文民統制シビリアンコントロール)無視である…と思いますが

自衛隊を所管する中谷防衛大臣は、当該資料は自分が作成を指示したものであり、

その会議も法案の先取りとしての「検討」をしたのではなく

法案の「分析・研究」をしていただけであるから問題はない…と言うてはります


ぼくは日本語を素朴にしか理解できませんので、

そもそも、「検討」と「分析・研究」のどこが違うのかよくわかりません

だから、「検討」ならマズいけど、「分析・検討」なら構わない…という理屈を聞かされても

なんか、キツネにつままれたような気分になります


また、中谷大臣は国会で共産党の議員が最初に資料を提示した際には

そのような資料の作成を命じたことがある旨の発言をしていなかったし

「この資料を私が確認したのは、委員会で資料を見せられた時だ」…とも言うてたところ、

一般的に、資料の作成を部下に命じた者は、その資料ができあがったら真っ先に内容を確認をするもの…

でありまして、その資料に基づいて既に自衛隊内部で会議まで行われた後になって、

初めてその資料を見た…と言うてる中谷大臣の説明にも、大きな疑念が残ります

(→これって、文民統制が問題にされるだろうから、「自分が命じた」って後付けで言うてるだけやないのか?)


だから、もし、このような資料が大臣の指示なく作成され、

その資料を用いた会議が勝手に自衛隊でなされていたのなら

思いっきり文民統制違反…ということになって、

自衛隊トップの首を切ってもらわんと収まらん話になると思います

また、仮に、中谷大臣の指示で資料作成が行われてた…としても

「検討」ではなく「分析・研究」なら法案の先取りでも構わない…という開き直りは通用しないと思います

(そやかて、資料には「戦争法案」や日米両政府が4月末に改定した日米防衛協力のための指針(ガイドライン)の
 内容を説明し、法案成立を見越して「主要検討事項」や「今後の進め方」が盛り込まれるので、
 こんなん、思いっきり「検討」してるやないですか)


ちなみに、この資料のタイトルは

『「日米防衛協力のための指針」(ガイドライン)及び平和安全法制関連法案について』…であるところ

「戦争法案」はまだ成立してませんけど、よう考えたら「ガイドラインは既にできあがってる」…わけでして

そもそも「戦争法案」が成立しないと(→ということは、集団的自衛権行使容認の解釈改憲をやらないと)

できないことが既に今年4月のガイドラインで決まってもうてる…というのが、もうムチャクチャなんですわ


ガイドラインというのは、「2+2」(ツープラスツー)という

日米の外交防衛の当局者(=大臣=文民)だけが集まって合意したもんで

その決定には文民しかかめないわけですが、日本の文民のこういう憲法無視のムチャぶりを見せつけられると

シビリアンコントロールが問題…というよりは、シビリアンがもっと問題やんけ
! …と感じます


かくして、シビリアン自身がかようなムチャをするなら、

仮に「形式的に」シビリアンコントロールが守られたからといっても

そこにいったいどんな意味があんねんやろか…と思わんでもありません

(加えて、日本には「シビリアンコントロール」よりも
 もっと強力な「アメリカンコントロールの原則」があるしね…)




※当該資料では、国会での戦争法案審議で政府側から説明されていないこと(=法案の内容にすらなってないこと)、

例えば「南シナ海での中国監視活動」に対して「関与の在り方について検討していく」と記されています

これは、「法案の先取り」どころか、「法案の追い越し」をしてるわけで

かかる「検討」を実力組織が勝手にするのは、やはり文民統制上、許せないことであると思います

http://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/m/mzponta/20150821/20150821170416.gif
(朝日:2015.8.20)

また、このなかで「主要検討事項」に挙げられている

「同盟調整メカニズム」に関しては、「軍軍間の調整所の運用要領の検討」が挙げられ、

自衛隊自身が自衛隊を勝手に軍と位置付けてる…というのも大問題です

また、平時においても調整所に自衛隊員を派遣することを検討するともしていますが

こうなると、アメリカ軍と自衛隊の(指揮命令系統の)一体化、つまり

自衛隊が日本の文民の統制ではなく、事実上、アメリカ軍の統制に入ることになり

もはや「日本の文民統制」という範囲を超えた話…になるでしょう

(→それはすなわち、日本の「(安全保障面の)主権放棄」ってことね…)




※日本の文民の危なさを象徴する話を一つ…

防衛相“国際テロ対処 自衛隊 貢献の幅広げる”(NHK:8月19日)

 中谷防衛大臣兼安全保障法制担当大臣は、参議院の特別委員会で、安全保障関連法案は国際的なテロへの対処の際に自衛隊による貢献の可能性の幅を広げるものだとして、必要性を強調しました。

 この中で中谷大臣は、安全保障関連法案について、「法整備によって、在外邦人の救出や、破綻国家の出現を防止するのにも役立ち、現にテロの危険がある国際社会において、わが国としての対応の幅を広げるものだ」と述べ、必要性を強調しました。
また、中谷大臣は「法理論上、過激派組織IS=イスラミックステートの掃討作戦を行っている外国軍隊を後方支援することはありうるのか」とただされたのに対し、「一般論としてはありうるが、ISILについては、軍事活動、後方支援をする考えは全くない。それは法案が成立したあとも不変だ」と述べました。

在外邦人の救出に自衛隊…って、そんな非現実的な話があるかい!…と、ぼくは思いますけど

(紛争地に自衛隊を出せば、真っ先に在外邦人が危険にさらされるんと違いますか?)

戦争法案では、「核兵器劣化ウラン弾などの輸送」とともに

対テロ戦争への(兵站)参加」まで可能…になってるそうです


でも、「今は」そんな「考えはない」…

そない中谷くんはおっしゃるんだけれども、法文上可能なことは

「考えを変えれば即できる」ことになってしまうので

法文上の制約のない口約束」なんか、信じられるかい! …と、ぼくは強く叫んでおきましょう




自衛隊の「(海外武力行使)やる気満々度」を知ることができる資料も紹介しときます

http://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/m/mzponta/20150821/20150821170047.gif
(朝日:2015.8.21)

自衛隊の内部文書には

「英蘭軍、英豪軍と連合作戦を実施
多国籍軍との連携を欠いて成り立つものではない」

…という記述がありますので

他国軍(多国籍軍)と「連携」して「連合作戦」を実施する

というのが、戦争法案の中身ということだそうです

連合作戦」って、こんなん、そのまんま「武力行使を一緒にする」ということやと思いますけど

政府はこれを「後方支援」と呼んで、「武力行使とちゃうねん」と説明してる

それが、自民党政権の国民に対する「丁寧な説明」なんだそうです




※最後に、もう、別にどうでもええような気がせんでもない、日本の文民のアホさを象徴する話を一つ…
また首相ヤジで委員会紛糾(TBS系(JNN) 8月21日)

 国会では、お盆休み明けの安倍総理大臣も出席して安全保障法制の審議が行われました。ところが、答弁の間違いをめぐって安倍総理が「それくらいいいじゃないか」とヤジを飛ばし、注意を受ける一幕がありました。

 「周辺事態を審議するときによく議論されましたが、『大森6事例』ということで」(中谷元防衛大臣

 審議が紛糾したのは、中谷防衛大臣が「周辺事態」の際に起こりうる事例を混同して答弁した場面です。本来は過去の防衛庁長官による「野呂田6類型」という事例を挙げるべきでしたが、誤って「大森6事例」と別人の法制局長官の名前を挙げたのです。

 「大森と野呂田が一緒になっています」(民主党 蓮舫代表代行)

 蓮舫議員が誤りを指摘して審議が止まった「その時」でした。

 「まぁいいじゃない、それくらい」(安倍晋三総理大臣)
 「良くないですよ! ちょっと待ってください。総理は『そんなことどうでも良いじゃん』と、ちょっと説明して。どういうことでしょうか?」(民主党 蓮舫代表代行)

 安倍総理は「どうでもいいとは言っていない」と釈明しましたが、審議は再びストップ。委員長が総理を注意しました。

 「総理に対しまして、この席から恐縮ではありますが、自席でのご発言は控えていただきたいと思います」(参院特別委員会 鴻池祥肇委員長)
 「私の自席での発言は撤回させていただきます」(安倍晋三総理大臣)

 安倍総理は、衆議院の審議でも「早く質問しろ」などとヤジを飛ばして謝罪に追い込まれています。

今回、安倍はヤジを「撤回」はしましたが、ヤジを飛ばしたことに対して「謝罪」はしませんでした

中国や韓国・朝鮮をはじめ、過去の戦争や植民地支配の被害国への直接の謝罪を拒んだ男は、野党に謝罪することもまた拒んだようです…