政府答弁の混乱は法案の欠陥を映すもの 廃案しかない
政府答弁の混乱は法案の欠陥を映すもの 廃案しかない
いま行われている参院特別委での安保法案の審議では、政府がまともな答弁ができなくなって実に77回も審議が中断したということです。審議途中で散会するという事態も起こっています。しんぶん赤旗はここまでボロボロになった法案は廃案しかないと述べています。
26~28日の地方紙の社説は安保法案の審議について、「目に余る政府答弁の混乱」(神戸新聞)、「集団的自衛権行使の根拠が薄弱だ」(東京新聞)、「防衛相答弁 迷走が映す法案の欠陥」(信濃毎日新聞)、「法律上の歯止め 政策判断でごまかすな」(北海道新聞)などという具合(全てタイトルの抜粋)で、法案は法律の体をなしていないとしています。
そして各社説はそれぞれ、「問題だらけの法案は取り下げる。それが政府の取るべき道である」(神戸新聞)、「法案の瑕疵(かし)を認め、撤回もしくは廃案を決断すべきである」(東京新聞)、「担当大臣が明快に説明できない法案を成立させるわけにはいかない」(信濃毎日新聞)、「首相は法案の欠陥を率直に認め、撤回を決断すべきだ」(北海道新聞)と結んでいます。
いま参院の特別委で審議されている安保法案がどういうものなのかを明瞭に語っていますが、これらはそのまま国民の多くが実感として持っているものです。
国民の圧倒的多数が反対している安保法案を強硬に成立させる権利は誰にもありません。
国民の圧倒的多数が反対している安保法案を強硬に成立させる権利は誰にもありません。
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社説 安保法案審議 目に余る政府答弁の混乱
神戸新聞 2015年8月28日
安全保障関連法案の審議が、ますます混迷の度を深めてきた。
野党の質問に対して閣僚が答えに窮する場面も珍しくない。説明をすればするほど、つじつまが合わなくなり、ほころびが見えてくる。
国の安保政策を根底から転換させる問題なのに、政府の対応は心もとないというしかない。
それでなくても「あれ?」と首をかしげるやりとりが毎日のように続く。端的な例が、邦人を輸送する米艦船保護の事例だろう。
「日本人を輸送する米艦船が攻撃を受けても、日本が直接攻撃されなければ助けることができない」
集団的自衛権行使には、米艦船への攻撃が「存立危機事態」に当たると政府が認定する必要がある。
さらに、存立危機事態に当たるかどうかは「総合的に判断する」と述べ、事態の認定には米国の要請や同意が必要なことも明らかにした。
何ができて、何ができないのか、いまだにきちんと示せないようでは国民の疑念は増すばかりだ。
国会会期末まで1カ月を切った。もしも採決を強行すれば、政府、与党が民意に背を向ける形になる。
与党は成立に向けた道筋を描こうとするが、先行きは不透明だ。問題だらけの法案は取り下げる。それが政府の取るべき道である。
社説 集団的自衛権 行使の根拠が薄弱だ
東京新聞 2015年8月28日
そんな中、中谷元・防衛相から驚くべき答弁が飛び出した。二十六日の参院特別委で、政府が集団的自衛権行使の代表例として挙げてきた米艦防護について「邦人が米艦に乗っているかどうかは絶対的なものではない」と述べたのだ。
ちょっと待ってほしい。
私たちはこれまで、邦人輸送中の米艦防護は、現実から懸け離れた極端な例だと指摘してきた。邦人が乗船していなくても米艦を守るなら、集団的自衛権行使の目的は結局、日本人ではなく、戦争中の米国を守ることにならないか。
それとも、首相の説明自体が誇張、もしくは虚構だったのか。
しかし、機雷を敷設した過去があるイランは穏健派大統領の下、国際社会との対話路線にかじを切った。石油輸送はパイプラインが代替手段となるため、集団的自衛権を行使する存立危機事態には発展し得ないとも指摘される。
そもそも、政府による説明のずさんさを見抜いているからこそ、国民の多数が安保法案への反対を貫いているのだろう。
社説 安保をただす 防衛相答弁 迷走が映す法案の欠陥
法案を提出したのは政府なのに、担当大臣が中身の理解も整理もできていないことがまた露呈した。
その4日前には「事態認定には必要ない」としていた。一方、集団的自衛権行使には要請が要るとも述べ、野党が批判していた。
軌道修正で沈静化を図ったとみられるが、整合性が取れない答弁とのそしりは免れない。
行使の判断基準の曖昧さがかねて問題視されている。安倍晋三首相は「総合的に判断する」と繰り返すばかり。政府の判断でいかようにも利用される懸念が強い。担当大臣の分かりにくい答弁は国民の不安を募らせている。
中谷氏のあやふやな答弁はこれだけではない。
最初、中谷氏は「(規定は)ない」と明言。自衛隊員の安全は法案に明確に定めたとする政府側の説明と矛盾していると追及されると、「指針に必要な措置を盛り込んで安全を確保する」と答えるのが精いっぱいだった。
社説 新安保法制 法律上の歯止め 政策判断でごまかすな
北海道新聞 2015年8月26日
法律上の歯止めの脆弱(ぜいじゃく)さが明白になるのを恐れるためだろう。
現政権が政策判断でやらないと言っても、法的に可能なら別の政権はやるかもしれない。問われているのは政策ではなく法案である。首相は正面から答えてほしい。
首相は集団的自衛権を行使して他国領域に戦闘目的で部隊を派遣する「海外派兵」について、「一般に自衛のための必要最小限度を超える」として否定している。
ただ中東・ホルムズ海峡での機雷掃海は「受動的かつ限定的な行為」だから「例外」として認められると説明している。
機雷掃海だけを例外とするのは首相の判断であり、法案に書いてあるわけではない。
法律上の歯止めは武力行使の新3要件だけで、それは海外派兵を禁じていない。例外が際限なく広がるのではないか。
野党はこの点を繰り返し追及しているが、首相は「現時点で念頭にあるのはホルムズ海峡の機雷除去だけだ」などと述べるにとどまっている。とても納得できない。
国是だからあり得ないと言うが、武器輸出三原則という国是を撤廃し、武器の輸出に道を開いたのは、ほかならぬ安倍政権である。
首相の答弁はまったく説得力を欠いていると言わざるを得ない。
しかし首相はこれについても「政策判断として参加する考えはない」と政策論にすり替えている。
首相は衆院審議で「法理上でき得ると答弁すると、いきなりそれを(政策として)やるんだと紙面に踊る場合がある」と述べた。
こんな言い訳を認めるわけにはいかない。首相は法案の欠陥を率直に認め、撤回を決断すべきだ。