日本はいつからTPP全面肯定になったんだろうか

2016-01-14

日本はいつからTPP全面肯定になったんだろうか…

ひとさまのtweetから…
http://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/m/mzponta/20151006/20151006125444.gif

スゲーなNHK。 消費者の声は3人が3人とも「TPPええんちゃう?」「嬉しいわ」ですってよ。

みなさんね、ここで、このTPPなるものが政治課題としてあがってきたときからの経緯を

思い返して頂きたいんですけど、確か最初のうちは

「TPPのここが問題」というような取り上げ方(=TPPへの懐疑あるいは批判)をしてるニュースや

ワイドショーがけっこうあったでしょ

で、そのときは「TPPはええことばっかりやない」という認識が浸透してて

それゆえ、TPP交渉入りを無条件に歓迎するような雰囲気はなかったはず…なんです

(それどころか、TPP交渉入りは「自民党の公約違反だ!」という批判もありましたしね)


ところが…

いつのまにか、メディアのTPP(交渉)の報じ方が変化してきて

なんだか「TPP交渉がまとまらないで難航してるのは残念で困ったことで」…というような伝え方になり

それにあわせて、「TPPのここが問題」ということはほとんど取り上げてくれなくなったんでした


でも、考えてみれば、「TPPのここが問題」というネタで取り上げられていた懸念事項が

その後に解消したわけでもないのに、なぜにそういうネタが取り上げられなくなり

しまいには冒頭に挙げたNHKニュースのように「TPPの大筋合意を大歓迎する」ということが

さも自明であるかのような伝え方になってもうたんでしょうか


TPPって、なんか「たくさんの国が入って貿易やサービスなど広範な国際間ルールを相談して決めてる」…

というような印象をもってる人が多いかも知れませんけど、端的にTPPとは↓
Reading:米大統領 米主導の貿易ルール作り実現できる NHKニュース http://nhk.jp/N4La4IuQ  これはつまり、日本は米国のカモということなんですが、よくまあこんな見出しをつけられますね。オバマ大統領がいったこととはいえ、です。(←ひとさまのtweetより)

NHKが正直に「アメリカ主導のルール作りである」ということを報じてるような代物に過ぎないところ

国際間のルールが特定の国主導…それは、その特定の国の利益が最大限確保される結果になるのはミエミエであり

それは同時に、その他の国の不利益に直結する話になる可能性が高い…にもかかわらず

日本は「アメリカ主導のルール作りであるTPP」を、

いつのまにか無条件に肯定し歓迎してる…って、こんな奇っ怪な話がありますか?


そういえば先日、防衛大臣の中谷くんが

アメリカが核兵器搭載可能な爆撃機をわざわざ朝鮮半島に飛ばす」という極めて挑発的な行為

(=ゆえにそれは相手方から見て脅威となる行為)をした際に

アメリカ軍の行動を支持する」と言うてはったんですけど、

結局、日本ってアメリカがやることにすべて従いそれを受け入れ歓迎し支持する…ということを

敗戦後延々と繰り返してるような気がして、ぼくはそんな国が

戦争法という「アメリカ軍協力法」をつくってしまったことに

今さらながら寒くなってしまうのでありました…

(もちろん、アメリカ主導のルールが書かれるでろうTPPにも強烈な寒さを感じてるで~)




※付録その1

ぼくも忘れかけてたTPPの問題点を再確認できるページをいくつか紹介しておきます

TPPの毒素条項=ISD条項 ラチェット規定 NVC条項 スナップバック条項
 なのに安倍首相が3月13日に参加表明」

TPPと規制緩和を問い直す

TPP:国際保健を揺るがす条項に反対を――MSF、安倍首相あてに公開書簡



※付録その2

TPPって、なんだか農林水産業従事者は損するかも知れへんけど、

それ以外の人は物価が下がって得するんとちゃう?…という受け止め方をしてはる人が

特に都市部の人に多いと思います

けど、TPPなるものができたとして、果たして物価が下がってくれるのか…について

報じる新聞記事の抜粋です↓
<TPP大筋合意>消費者「安い方がいい」 価格影響不透明 (毎日新聞 2015.10.6)

 ~小売り側。「消費者は値下げを期待するだろうが、現時点で価格の動向を予測するのは難しい」。首都圏のスーパーマーケットチェーンの広報担当者はそう話す。肉の価格には、その時々の為替や市場の相場の変動が大きく影響する。「関税部分の影響は相場変動に比べれば、ほぼないに等しい程度」なのだという。

 国産牛のうち黒毛和牛などのブランド牛は、今後海外での評価が上がれば、むしろ価格が上昇する可能性もあるという。

 マグロなどの水産物も、元々低い関税だったことから「短期的には店頭価格への影響はないだろう」と話し~別の首都圏のスーパーマーケットチェーンの担当者も「消費者にとって、どういう形で影響するか、今はまだ不透明」と話した。

では、上記の記事で「(TPPができても)短期的には店頭価格への影響はないだろう」と言われた、

マグロなどの水産物の現在の関税はと言うと…↓
水産物輸入、大半無関税に クロマグロやサケ TPP交渉(朝日:2015年7月31日)

■主な水産物の関税率と輸入先(TPP参加国)

 関税率/主な輸入先

<マグロ類> 

 3.5%/メキシコ、豪州 

<サケ・マス>

 3.5%/チリ、米国、カナダ 

<タイ>

 2.0%/ニュージーランド
…というように、既にほとんどが5%未満の低関税になってるので、下がったとしても知れてる…し

上記で引用した記事にも…
 環太平洋経済連携協定(TPP)交渉で、日本はクロマグロやサケ・マスなどにかかっている水産物の輸入関税の大部分について、撤廃する方針を固めた。参加12カ国には米国や豪州など漁業大国が多く、撤廃に応じる必要があると判断した。関税がなくなれば、国内の店頭価格も安くなる可能性がある。~ただ、水産物の関税率は10%以下が多く、関税がなくなっても店頭価格が必ず下がるとは限らない。「漁船の燃料代上昇や、為替の影響があれば相殺される」(水産庁幹部)からだ。輸入水産物が値下がりすれば、国内の漁業は打撃を受ける可能性もある。
…としっかり書いてありますので、TPP実現による下げ幅は

為替の変動や燃料費の変動によって帳消しになるくらいのレベルである…ということです


さらに、今頃になって「そんなコトになっとんたんかい!」という話も紹介されてて…↓
 一方、日米の関税交渉で、米国が日本から輸入する自動車の関税(乗用車2・5%、トラック25%)は、撤廃に少なくとも20年程度かかる見通しとなった。日本は2013年にTPP交渉に遅れて参加する際、米国の自動車関税は「TPPで最も長い撤廃期間を適用する」ことで合意していた。自動車部品の関税(2・5%)は、品目の大半を10年以内に撤廃する方向だ。~

「後からTPP交渉に参加することそれ自体が大きなリスク(=損)を伴う」という従来からの指摘が

しっかり証明されているところであります


…と言いつつ、日本からの自動車輸出はすでに関税2.5%(乗用車)という低関税であるところ、

それを「TPPで最も長い撤廃期間を適用」してゼロにしてもらうために

日本が放棄するもの(→例えば、農林水産などの第一次産業の犠牲)がいかに大きいのか…を考えると

今でも十分過ぎるくらい儲けてるトヨタ(をはじめとする自動車メーカー)をさらに儲けさせるために

農林水産業を犠牲にする…というのは、どない考えても平衡感覚がなさ過ぎる…と、ぼくは思います

(それに、TPPは農林水産業だけが犠牲になるわけではなく、実は日本の消費者の利益まで差し出す…って
 話になるのが確実やしね…って、こんなん「踏んだり蹴ったり」やんけ!)



※付録3

アメリカ主導のルールづくりでは「アメリカが一番得する」ことになるのはミエミエであります

(そやかて、誰が自分が損する仕組みを主導しますかいな…)

では、日本を含め、ルールづくりを主導できないアメリカ以外の国が、「アメリカ主導のルール」によって

どんな損をするのか…について書いてる記事を紹介しておきます
(TPPを歩く:上)「年1600億円失う」の衝撃 マレーシア (朝日 2014年11月11日)

 環太平洋経済連携協定(TPP)交渉は、10日に北京で開かれた首脳会合で実質合意できず、目標時期さえ決められなかった。なぜ、うまくいかないのか。交渉の「漂流」も現実味を帯びる中、参加する国々を歩いて考えた。

 今年7月下旬、マレーシアの首都クアラルンプール。マレー人の企業家らでつくる「マレー人経済行動委員会」のニザム・マシャル会長が、米国のフロマン通商代表部(USTR)代表と向きあった。

 「TPPに入ると、マレーシアのどの産業にどういった恩恵があるのですか」

 ニザム氏が切り出した。2010年にマレーシアが交渉に加わって以来、何度も政府に尋ねた質問だが、納得できる答えが返ってきたためしはなかった。12カ国の交渉を主導する米国の責任者に、ぜひ聞いておきたかった。

 フロマン氏は、TPPのおかげで、マレーシアの輸出額は25年までに417億ドル(4・8兆円)増えるとした米研究所の試算を披露した。だが、ニザム氏は納得しない。聞きたいのは、どの産業が具体的な恩恵を受けるのか、だ。

 改めて同じ質問を投げかけた。すると、フロマン氏はこんな言葉を言った。

 「テキスタイル(繊維)」

 耳を疑った。

 繊維といえば、同じTPP交渉国で隣国ベトナムが巨大シェアを持つ輸出品じゃないか。マレーシアでは輸出の1・4%に過ぎず、ベトナムに生産拠点を移す企業も出ているほどだ。

 輸出でもうけるには、付加価値の高い工業製品の輸出を増やす必要がある。だが、この分野の米国の関税は既に十分低い。国内市場の開放など、TPP加入で払う代償に見合うとは思えなかった。「結局、米国は自国の要求をのませたいだけで、各国の事情に興味なんてないんだ」。そう思って、ニザム氏は肩を落とした。

 それから3カ月がたった10月下旬。マレーシアに、衝撃が走った。

 「TPP加入でマレーシアは輸入が増え毎年14億ドル(約1597億円)を失う」

 国連貿易開発会議(UNCTAD)が公表した、TPPによる関税引き下げの貿易収支への影響を分析したリポートは、フロマン氏が持ち出した試算とは正反対の結論を導き出した。

 リポートは、TPP加入で輸出が15億ドル(1711億円)増えるが、輸入はその2倍の30億ドル(3423億円)増とした。この差額が毎年、国外に流出する

 輸入増の内訳は、自動車6億ドル(684億円)、鉄鋼5億ドル(570億円)、マレーシアの輸出の3割を占める電気機械1億ドル(114億円)。自動車と鉄鋼の増加分の9割以上は日本から、電気機械は6割が米国から来る計算だ。

 リポートは、輸入品との競合に負け、雇用が大きく失われるとも指摘した。

 ニザム氏はすぐに複数のマレーシアのメディア向けに公開書簡を作った。「マレーシアに何の利益ももたらさないTPP交渉に、貴重な労力と時間を費やしている。この厳しい現実に、ナジブ首相はそろそろ気づいていいころだ」~

国連貿易開発会議(UNCTAD)という、アメリカよりは客観的な(≒正直な)試算をしてくれる機関の分析だと

マレーシアはTPPによって「得する分の倍の損をする」ということになってるようです…

では次…
(TPPを歩く:中)国家脅かす賠償請求 豪州 (朝日 2014年11月12日)

 ~多国籍企業が、進出先の政府の法律や制度のせいで、期待する利益を上げられないとき、相手国政府を訴えられるしくみを「投資家対国家間の紛争解決(ISDS)条項」と呼ぶ。

 今、12カ国で進む環太平洋経済連携協定(TPP)交渉でも、ISDSを協定に盛り込むことを米国が求める一方、交渉参加国には「企業が訴えを乱発する」「公益のための規制が難しくなる」と反発が強い。

 ■米大手、たばこ規制に反発

 ~オーストラリアは05年に米国と結んだ二国間自由貿易協定(FTA)の中に、ISDSを盛り込むことに最後まで反対し、押し切った。TPPでも慎重論を唱えているとみられる。シドニー大のパトリシア・ラナルド主任研究員は「国民的な議論が巻き起こった。国民の生命や健康に関わる問題は、議会で決められるべきで、TPP秘密交渉で決められるべきじゃない。これは国家主権の問題だ」。~

 ■ISDS、米政府は無敗

 ~企業が国を訴えるISDSは、米国、カナダ、メキシコが1994年に結んだ北米自由貿易協定(NAFTA)で初めて導入された。米国企業が29件、カナダ企業が15件、メキシコ企業が1件、それぞれ提訴。このうち勝訴したのは米国企業だけで、カナダ政府に2勝、メキシコ政府に5勝した。米政府は無敗で米企業の強さが際だつ

 ~賠償額は年々高額化している。カナダ政府を訴えたある米国の製薬会社の請求額は「1億ドル(約115億円)」と報じられた。米市民団体「パブリック・シチズン」によると、米国企業は有害物の排出禁止や核エネルギーの段階的廃止、たばこ規制、有害食品の輸入規制などを訴え、これまでに4億ドル(約463億円)以上の賠償を相手国から引き出している。~

この「ISDS条項」というのは、早くからTPPにもられた「毒薬」であるとの指摘がありますが

それがなぜに「毒薬」かと言えば、この条項に基づく紛争で「アメリカ政府が無敗」であるから…でありまして

これほど端的にTPPの「不平等条約性」を物語る客観的証拠はないと思います

(だって、ISDS条項に基づく紛争を審議する「国際機関」って、
 ほとんどすべてが「アメリカ政府の息のかかった組織」だから、こうなるのも当たり前って話ですわ…)


ほな、次…
(TPPを歩く:下)大国で「聖域」決めるな ニュージーランド(朝日:2014年11月13日)

 ■なくしたい、乳製品の関税

 ~NZは日本の4分の3の面積を持つが、人口はわずか3%強の450万人。広大な土地は良質な牧草地で、えさ代が安くあがる放牧が盛んだ。人工飼料を多く食べさせる日本の酪農と比べ、生産コストは4分の1。これが、世界一とされる乳製品の競争力の源泉だ。

~TPP交渉国のうち、乳製品への関税が全品目の中で最も高いのは、カナダ(246・8%)、日本(178・5%)、米国(19・1%)。2年前、キー首相は、巨大市場の米国を念頭に「NZの最大の輸出品の乳製品を除外するなら、TPPにサインすることはない」と発言。先月もグローサー貿易相が地元メディアに「日米が2国間交渉で、世界最大の乳製品製造国のNZ抜きで、乳製品の扱いについて合意することは許されない」と警戒感をあらわにした。~

 ■守りたい、自国の薬価抑制

 (乳製品について)関税撤廃を強く求めるNZにも「聖域」がある。

 ~今年5月、医療関係者270人が署名した公開書簡がキー首相に送られた。「TPPが多国籍製薬会社に与える特許と独占は、NZの薬価を高騰させ、健康へのコストを増大させる」~

 ■医薬品の特許、延長案に反発

 交渉では、新薬を作り出す世界的な製薬会社を持つ米国や日本が、医薬品の特許の延長に熱心だとされるが、こうした企業が少ないNZや途上国は反発している。特許延長が認められてジェネリックの市場投入が遅れれば、高価な新薬を長期間にわたって買わざるを得なくなるからだ。

 ~がん治療の分野では、バイオ生物学的な最先端の医薬品が次々に登場している。TPP交渉では、こうした最先端の医薬品の特許延長のほか、ジェネリックの製造に必要な治験データを、開発した製薬会社が一定期間開示しなくていいとする案も出ているという。「病気をしないロボットのような体を手に入れないと、こんな金のかかるシステムでは生きていけない」~

ニュージーランドでは、「関税撤廃の聖域」(=関税を撤廃しなくてもよい分野)を

アメリカなどの)大国だけで決めるのは不公平だ…という、

交渉のやり方そのものに対する批判が起こってるようです

そして、アメリカがTPPで重視する「医療分野」においては

「医薬品の特許の延長」がアメリカによって強く主張されてるようですけど

こんなことが通ってしまえば、日本も無関係…というわけにはいきません

(だから、都市住民はTPPで得するだけ…って話ではないのよね)


ちなみに、記事では日本もアメリカと同様に、国内に新薬を開発する世界的な製薬企業をもつ国…として

紹介されてますが、「国全体の損得」、すなわち、「特定製薬企業の利益」と「消費者の不利益」を考えれば

後者の方が圧倒的に大きいことになる…というのは、これまたミエミエでありましょう



※最後の付録で…

今一度、自民党の選挙ポスターを再確認しておきましょう

http://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/m/mzponta/20151006/20151006125832.jpg


そして、この件について誰もツッコんでくれないトホホな官邸記者についての記事がこちら↓

安保法に続きTPPでも…安倍首相の“応援団”と化した官邸記者


…ということで、自分でも読み返すのが億劫になるような長いエントリーは、ようやくお終いです