“やってるふり”だけの日米交渉 計り知れない被害

“やってるふり”だけの日米交渉 計り知れない被害

 隠蔽・虚偽・捏造・偽装の安倍内閣ですが、それに加えてよりリアルな「“やってるふり”の安倍首相」という新たな評価が定着しています。
 既報(「米中経済戦争 非は米国の側にあり中国は屈しない」)の通り、中国は米国との貿易交渉に一歩も引かない態度で臨んでいますが、安倍首相は全く対照的でひたすらベタ降りです。
 日米二国間協議は受け付けないと綺麗な口を利いたのは昨年TPP11が成立したときでしたが、その舌の根も乾かぬ11月末にはトランプ氏の言うままに二国間協議FTAを受け入れ、それを国内向けには日米「TAG」だと誤魔化したのでした。
 
 安倍政権は国民の手前、ハードな交渉がつづいているように装っていますが、「日米貿易交渉」の落としどころはすでに決まっていて、トランプ氏の要求通り農産物の関税をほぼ撤廃するのではないかと見られています。
 しかもトランプ氏に、「来年の大統領選には十分に間に合うようにする」から参院選前には公表しないようにと頼んだことが、日経新聞にバラされました。「参院選が終わるまで待ってくれれば、なんでも差し上げる」というわけで、参院選に勝ち、わが身の安泰を図るためには、国を売ることもいとわないということです。絶句します。
 
 農民票だけでは大統領に当選できないので、トランプ氏の要求はそれだけでは収まりません。当然日本車に対し高額な関税を掛けて米自動車工業会を満足させようとします。
 そして次には為替条項の導入、非関税障壁の撤廃、ISD条項の導入等々あらゆる要求を突きつけてきます。
 弱腰の日本は、米国にとってそこから最大の利潤を得られるいいカモです。
 
 この重大な時に、ひたすらトランプのご機嫌を取ることしか能のない首相を国民は選択したわけで、その実害は計り知れません。それにしてもメディアはなぜ、「首相は国益を守らないのか」との論陣を張らないのでしょうか。何を言ってもダメだからということでは「1億総負け犬」ということになります。
 日刊ゲンダイの記事を紹介します。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~
日米交渉“やってるふり”「大相撲トランプ杯」の違和感
 日刊ゲンダイ 2019/05/13 17:00

阿修羅文字起こしより転載
 まさに「茶番」とはこのことだ。「日米貿易」をめぐって日本とアメリカはギリギリの交渉をつづけている ― 。そう受け取っている国民もいるのではないか。「日米貿易交渉」について、大手メディアが「貿易交渉 トランプ氏来日前に」「茂木氏 米通商代表と電話会談」などと連日、動きを報じているからだ。
 しかし、「日米貿易交渉」は茶番もいいところだ。もし、国益をかけて“米中”のようにガチンコでやり合っているなら、ピリピリムードが強まり、さすがに今月末に来日するトランプ大統領を厚遇し、安倍首相が一緒にゴルフをしたり、大相撲を観戦する“お遊び企画”をいくつも用意するはずがない。アメリカも応じないだろう。ところが、観光気分で来日するトランプ大統領は、優勝力士に「トランプ杯」を授与することを楽しみにしているそうだ。
 
 国民の手前、ハードな交渉がつづいているように装っているが、「日米貿易交渉」の落としどころは、とっくに決まっていると考えるのが自然だ。4月26日、ホワイトハウスで行われた10回目の日米首脳会談の時、「密約」がかわされた可能性が高い。
 首脳会談の冒頭、トランプは、記者団の前で「安倍首相がここにいるのは貿易交渉のためだ」「日本は重い関税を課している。これを撤廃させたい」と、農産物の関税撤廃を要求し、交渉の合意時期を「訪日までか、5月に訪日した時にサインするかも知れない」と明言していた。
 ところが、記者団が退席し、1対1の会談になると、すぐに安倍が「さっきの5月というのはダメです。日本では夏の選挙がある。その前には妥協できない」「大統領選が来年あることはわかっている。それまでにはちゃんと形にするから安心してほしい」と約束したという。日経新聞が詳細に報じている。
 
 45分のサシの会談が終わるとトランプは態度を一変。「急がなくていい。日本側にも事情がある」と、百八十度方針を変えている。要するに、安倍は、参院選が終わるまで待ってくれれば、なんでも差し上げるとトランプに約束したということだ。
「安倍首相とトランプ大統領が“取引”をした可能性は十分にあります。農民票を失いたくない安倍首相は、参院選前には農産物の関税の引き下げはやりたくない。一方のトランプ大統領は、大統領選の前に実績が欲しい。お互い利害が一致したのでしょう」(外交評論家・堀田佳男氏) 
 
参院選の勝利のために国益を売った 
 参院選が終わるまで待ってくれれば、アメリカの要求に応じる――これでは、選挙で勝利するために国益を売り渡したも同然である。こんなバカな話が許されるのか。さすがに、歴代の自民党政権だってここまで国益に反することはしなかった。
 このままでは、参院選後、日本は大変なことになるだろう。はたして、アメリカは、どんな要求をしてくるのか。東大教授の鈴木宣弘氏(農政)が「農業協同組合新聞」で、日米貿易交渉の見通しを鋭く分析している。
「失うだけの日米FTA」というタイトルで、<関税削減の前倒しの「TPP超え」は不可避><自動車のために永続的に譲歩しても自動車も守れない>など9項目を掲げ、日本は国益を損なう恐れがあると論じている。改めて鈴木宣弘氏がこう言う。
 
「農産物の関税の引き下げについて、日本政府は『TPPの水準が限度』としていますが、アメリカが納得するとは思えません。トランプ大統領がTPPから離脱したのは、TPPの水準では不十分だと判断したからです。TPPと同水準では意味がない。アメリカの農産物を日本市場で売るために譲歩を迫ってくるはずです。と同時に、遺伝子組み換え食品など、食の安全基準も緩めるように要求してくるでしょう。アメリカは新NAFTAを結ぶ時、食の安全基準が貿易の妨げにならないようにすることをTPPよりも強化しています。当然、日本にも求めてくるはず。日本の食卓に安心できない食べ物が並ぶ危険があります」
 
 いまアメリカの農民は、アメリカ抜きのTPPが発効したこともあって、日本の農産物関税への不満を強めているという。豪州産などに比べて米国産は関税が高くなり、不利になっているからだ。
 大統領選を控えるトランプは、穀倉地帯「ファームベルト」の支持が不可欠なだけに、日本に大幅な譲歩を求めてくるのは間違いない。
 日本の農業は、ただでさえ疲弊している。アメリカから安い農産物が大量に入ってきたら、壊滅的な打撃を受けるだろう。
「農業をいけにえにすれば自動車は守れるとの考えもあるようですが、本当でしょうか。農産物の関税が下がっても、アメリカの自動車産業の利益には関係ないからです。日米FTA交渉は得るモノがなく、失うだけの交渉になる恐れが高いと思う」(鈴木宣弘氏=前出)
 
「密約も」見て見ぬふりの大マスコミ 
 それにしても、大新聞テレビはどうかしている。日米貿易交渉が“やっているふり”の茶番劇だということも、参院選後、アメリカがとんでもない要求を突きつけてくる可能性が高いことも、うすうす分かっているはずなのに大きく報じようとしない。
 それどころか、茂木担当大臣がどうしたこうしたなど、どうでもいいことばかり熱心に報じているのだから、どうしようもない。
 このまま「密約」を見逃し、安倍自民党参院選で大勝させてもいいと本気で思っているのか。
 
「安倍首相とトランプ大統領が、参院選が終わるまで日米貿易交渉の決着を先延ばしするという“密約”をかわしたことは、米タイム誌も報じています。本来、これは日本のメディアが一斉に報じるべき大スキャンダルですよ。安倍首相がトランプ大統領に弱みを握られたということですからね。そもそも、日米貿易交渉は、紛れもない『自由貿易協定交渉(FTA交渉)』なのに、いまだに大手メディアは安倍政権の言い分に従って『物品貿易協定(TAG交渉)』などと呼んでいるのだから、どうかしています。農産物や自動車だけでなく、アメリカは為替条項なども入れようとしてくるでしょう。貿易協定の締結によって、国益が大きく損なわれかねない。なのに大手メディアは、日米貿易交渉の本質を報じようともしない。恐らく、トランプ大統領が5月末、国賓として来日する時も、安倍首相と一緒にゴルフをしたり、大相撲を観戦する場面を大ハシャギして流すのだと思う。結果的に、日米蜜月の演出に手を貸し、他の問題から目をそらすことになるという自覚もないのでしょう。これでは、安倍首相も楽だと思います」(法大名誉教授・五十嵐仁氏=政治学
 
 日本経済は急速に悪化している。参院選後、アメリカに国益を売り渡す「日米FTA」が結ばれたら、日本経済も国民生活も立ち行かなくなるだろう。参院選後、多くの国民は「話が違う」と気づくことになるのではないか。