11- 政策失敗を伝えない政治的不公平のNHK
11- 政策失敗を伝えない政治的不公平のNHK
植草一秀の「知られざる真実」 2016年2月10日
1月29日に、日銀はマイナス金利導入を決めた。円安を誘導し、株高を誘導するための政策決定だった。しかし、日銀のこれまでの説明に反する政策決定であり、しかも、日銀内部で強い反対意見が表出されたものだ。
日銀の政策決定会合で議決権を持つメンバーは9名いる。そのうち、5人が、安倍政権が任用した者だ。この5人だけが賛成して新政策を決定した。
日銀が政治権力の支配下にあり、政治権力の力だけで金融政策を決定している現実が鮮明に浮かび上がった。
しかし、このマイナス金利導入の市場へのプラス効果は3日間しかもたなかった。賞味期限3日の政策になってしまっている。
この事実を伝えるNHKがまた素晴らしい。
急激な円安進行を「安全資産の円への投資が進展した」と伝える。
銀行の預金金利が引き下げられる話などほとんど触れない。
株価が急落したことなど、無かったかのような報道である。
追加金融緩和政策を決定したのに、効果は3日しかもたなかった。為替は円安でなく、円高に振れている。株価は追加金融緩和を実施した時点の水準を超えて暴落している。
このことについて、日銀関係者のコメントを取るのが報道機関の役割だろう。
株価が暴落しているのに、株価について何も伝えず、「日本円は安全資産だから買われている」と伝えるのでは、単なる政府の提灯持ちである。
このようなことを、事実に即して伝えるのが報道機関の役割のはずである。
日本株価が大幅下落している原因の一つは、安倍政権のマクロ経済政策にある。
標準的なマクロ経済学の教科書は、金融緩和政策には限界があることを教える。
このような局面で有効な効果を発揮できるのは財政政策である。
この財政政策が強度の緊縮政策に振れている。
そして、年明け後の日本株式市場について、安倍政権の財政政策の影響を指摘してきた。
この政策が修正される動きがまだ生じていない。
アベノミクスの全面的な見直しなくして、事態の抜本的な立て直しは難しい局面にある。
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