ぬくもりのない復興住宅

ぬくもりのない復興住宅

 東京新聞が、復興住宅(復興公営住宅)入居者の状況を報じました。
 やはり家族離散・孤立の影が投影されています。
 
 入居対象は原子力災害により避難指示を受けている人ということで、ここでも自主避難者は除かれています。
 
 福島県のホームページによると全部で4890戸を整備するということで、第4期分は、原発事故時に南相馬市、川俣町、富岡町大熊町双葉町浪江町飯舘村に居住していた人が対象で、706戸の入居者の募集が終ったばかりです。
 引き続き6月以降に第5期募集を行う予定です。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「ここは監獄と同じ」 ぬくもりない復興住宅
東京新聞 2016年3月21日
 高速道路のインターチェンジに近い、五階建ての復興住宅は、都会のマンションのような、無機質なにおいがした。表札を出している家はわずかだ。
 
 福島県大熊町から会津若松市仮設住宅に避難していた門馬五子(もんまいつこ)さん(73)は一年ほど前、郡山市内のこの復興住宅に移った。
 長女宅に近く、東京の息子も来やすいだろうと選んだ。四階の3LDKに一人暮らし。年金から月一万円ほどの家賃を払う。百万円近くかけて家具をそろえ、孫が遊びに来た時のために大きなこたつも買った。
 だが、表情は晴れない。今年の正月明け、上の階の住人が亡くなった。救急車が下に来るまで、異変に気付かなかった。「ドアの向こうで誰が、どんな暮らしをしているのか。部屋に入ってしまうと、お互い分からない」と嘆く。安倍晋三首相が視察に来たとき、こう言った。「ここは監獄と同じよ」
 
 顔見知りは民生委員の夫婦だけ。会津の仮設で親しかった人は、いったん同じ復興住宅に入ったが、子と同居すると言って引っ越してしまった。
 ペットは禁止で、事故前から一緒に暮らしていた愛猫は長女に預けた。三十分歩いて会いに行くが、「私の顔を忘れてしまった」と寂しそうに笑う。
 
 仮設での暮らしは、つらかった。薄い畳が体を冷やした。壁は石こうボード一枚で、隣の音が筒抜け。窓の結露にも悩まされた。台所は狭く、まな板を置く場所もなかった。
 大熊町にある築百年の自宅は、避難中に動物に荒らされている。「直すには一千万円じゃきかない。もう住めない」。月十万円の慰謝料は早晩打ち切られ、年金だけが頼りの暮らしになる。家を借りたり買ったりできる余裕はない。復興住宅に入るしかなかった。
 
 終(つい)の棲家(すみか)と思い、「私はここで死ぬんだ」と繰り返す。でも、知り合いが多く、濃い近所付き合いがあった大熊町での暮らしは、取り戻せない。避難生活は幕を閉じていない。 (大野孝志)  

22- 「原発賠償」東北で25件提訴 ADRは1万件超

 河北新報が、原発事故被害賠償訴訟の現状について報じました。
 それによると仙台、福島両地裁で審理されている事案は約25件に上りますが、賠償命令が確定したり和解が成立したのはまだ5件だということです。
 また政府のADRに和解の仲介が申し立てられている事案は、2011~14年の4年間で1万2003件に上りますが、ここではあたかも東電が裁定者であるがごとくに振る舞っています。
 
 河北新報の記事には訴訟の内容が一覧表で示されているので、ご覧になりたい方は下記のURLでアクセスしてください。 
~~~~~~~~~~~~~~~~~~
原発賠償> 東北25件提訴 ADR1万件超
河北新報 2016年3月21日
 東京電力福島第1原発事故の被害者が国や東電に損害賠償を求めた訴訟が仙台、福島両地裁で審理されている。原子炉建屋3棟が水素爆発して放射性物質が広範囲に放出されるという事故の特殊性を反映し、訴訟対象の損害は財産の喪失から家族の離散、自殺まで多岐にわたる。訴訟とは別に、政府の原子力損害賠償紛争解決センター(ADR)に持ち込まれる案件も多く、紛争は膨大な数に上っている。
 
 両地裁に提起された主な訴訟は表の通り(非添付)。少なくとも25件に上り、このうち5件は地裁段階で賠償命令が確定したり、和解が成立したりしている。残る20件は、原発津波が到達することが予見できたかどうかなどをめぐり、審理が続けられている。
 
 未曽有の原子力災害とあって、原告が訴える損害はさまざまだ。土地や建物の財産価値が失われたという主張だけでなく、家族の離散や自殺、転院を余儀なくされた患者の死亡、福島県内の取引先の廃業による収入減などをめぐっても国や東電に賠償を求めている。
 地元固有の文化や伝統、コミュニティーの崩壊など、地域の宝が失われた精神的損害を「古里の喪失」という新しい概念で問う訴訟も提起された。両地裁で複数の訴訟が審理中だ。
 
 原発事故の損害をめぐっては、政府のADRにも和解の仲介が申し立てられている。2011~14年の4年間で、宮城、福島両県の住民からの申し立ては1万2003件に上り、全体の約8割を占める。
 訴訟とADRを手掛ける「みやぎ原発損害賠償弁護団」の斉藤睦男事務局長は「高齢で請求方法が分からないなど、賠償請求が可能なのに放置している人もいる」と指摘。訴訟やADRの件数は今後、さらに増える可能性がある。

 2016年3月21日月曜日
  

宮城県廃棄物市町村会議 3候補地返上も 対応再検討へ

宮城県廃棄物市町村会議 3候補地返上も 対応再検討へ

 19日に非公開で開かれた宮城県の指定廃棄物最終処分場建設問題に関する市町村長会議で、村井嘉浩宮城県知事は栗原市加美町大和町の3候補地の白紙返上も視野に、県内1カ所での集約処分を進める環境省への対応を再検討する考えを示しました。
 また宮城県として新たな方針を示すまで、3候補地の現地調査を自粛するよう環境省に申し入れるということです。
    (関係記事)
           3月18日 「最終処分場」首長会議が非公開に
              http://yuzawagenpatu.blogspot.jp/2016/03/blog-post_18.html 
~~~~~~~~~~~~~~~~~~
<宮城指定廃>3候補地返上も 対応再検討へ
   河北新報 2016年3月20日
 東京電力福島第1原発で発生した指定廃棄物の最終処分場建設問題で、村井嘉浩宮城県知事は19日に仙台市で開いた県内の市町村長会議で栗原市加美町大和町の3候補地の白紙返上も視野に、県内1カ所での集約処分を進める環境省への対応を再検討する考えを示した。県として新たな方針を示すまで、3候補地の現地調査を自粛するよう環境省に申し入れる。
 
 県主催による会議は非公開で約2時間行った。井上信治環境副大臣が集約処分に理解を求めた後、環境省関係者を全員退席させた上で意見交換した。
 
 終了後に記者会見した村井知事によると、4月下旬~5月上旬に開く次回の市町村長会議で候補地選定の在り方を一から議論する。
 村井知事は「(返上を訴える)候補地の気持ちを受け止めたい。1カ所集約が大前提だが、やはり三つのうちの1カ所か、別の候補地を探すのか市町村長会議で議論する」と話した。
 会議で村井知事は、県内の指定廃棄物3400トンの3分の2について、放射能濃度が基準値(1キログラム当たり8000ベクレル)以下となった環境省の再測定結果に基づき、市町村負担が原則の一般廃棄物として処理を加速させる考えを表明。自治体の意向を受け、指定解除を後押しする考えも示唆した。
 
 県内の放射性物質汚染廃棄物の全容把握を進めることでは合意。基準値を超えながら未指定の廃棄物なども含め県全域を対象に環境省の再測定を受ける。
 井上副大臣は取材に「長期管理施設の必要性は変わらないが、基準値以下となった廃棄物処理に国は責任を持つ」と従来方針を繰り返した。