TPP審議紛糾を伝えないマスメディア(植草一秀氏)

TPP審議紛糾を伝えないマスメディア(植草一秀氏)

 ここにきて突然東京地検特捜部が、甘利明前大臣の事務所をめぐる「口利き疑惑」で、甘利氏側に現金を渡していた建設会社薩摩興業やUR=都市再生機構などの強制捜査に乗り出しました。なぜか甘利事務所はスルーしています。
 甘利氏の疑惑については、既にかなり以前から十分すぎるほどの情報がメディアから流されていますが、特捜部は全く動く気配を見せませんでした。それがなぜか俄かに動きを見せて、それをこんどはNHKなどが大々的に報じました。
 
 植草一秀氏はその理由について、それは政府強制捜査に乗り出させたもので、メディアがこの問題に時間を割くことでTPP問題から国民の視線を逸らせようとしたものだという見方をしています。
 
 そして
TPPは多くの課題の中で最もその影響が広範でありかつ重大である。何よりも問題なのはTPPが日本の国家主権を奪うことであり、日本のことを日本が決められなくなる。TPPはグローバルに活動する強欲巨大資本が、日本を収奪するための枠組みであって、日本の国民の利益を拡大するための枠組みではない。
TPPの恐ろしさは、TPPの入り口が不明確であるのにひとたびTPPに入り込んでしまえば、そこから抜け出すことは難しく最後には悲惨な結末が待ち受けているという点にある
と述べています。
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TPP審議紛糾をまったく伝えない腐敗マスメディア
植草一秀の「知られざる真実」 2016年4月 9日
衆議院のTPPに関する特別委員会の審議が紛糾している。
しかし、インターネット上の大手ポータルサイトはこの重要事実を伝えない。代わりに政府は甘利明前経済相に関わるあっせん利得疑惑に関する強制捜査に乗り出した。メディアがこの問題に時間を割くように仕向けているのだ。
原発憲法、TPP、基地、格差 の5大問題のなかで、最もその影響が広範であり、かつ、重大であるのはTPPである。
 
TPPの影響は単に貿易にとどまらず、日本の諸規制、諸制度の全面にわたる。
そして、さらに重大なことは、TPPが日本の国家主権を奪うことである。日本のことを日本が決められなくなる。日本のことを日本の国民が決められなくなるのである。
TPPはグローバルに活動する強欲巨大資本が、日本を収奪するための枠組みであって、日本の国民の利益を拡大するための枠組みではない。
TPPの恐ろしさは、TPPの入り口が不明確であるのに、ひとたびTPPに入り込んでしまえば、そこから抜け出すことは難しく、最後には悲惨な結末が待ち受けているという点にある。
第二次大戦直後にソ連に抑留された人々は、日本に変える汽車だと思い、シベリア行きの汽車に乗り込んだ。このシベリア行きの汽車がTPPなのである。あるいはTPPは富士の樹海にたたえることもできるだろう。この樹海に迷い込む前に日本の主権者を救わねばならないのだ。
 
TPP違憲訴訟は4月11日、第4回口頭弁論期日を迎える。 http://goo.gl/pCDmJk 
これまでの訴訟期日には、TPP交渉差し止め、TPP批准阻止を求める主権者が多数参集し、訴訟に実質的な意味を与えることと実現してきた。
私も原告の一人として毎回訴訟期日に参加してきた。
訴訟の会サイトから、4月11日口頭弁論期日ならびに違憲訴訟の会の第2回総会についての案内を転載させていただく。
 
TPP交渉差止・違憲訴訟第4回口頭弁論期日及び第二回総会のご案内.
当会は、東京地方裁判所に1582名の原告が提訴を行い、9月7日、11月16日、2月22日に続き、4月11日が第四回口頭弁論期日となります。
(中略)
1.日 時:4月11日(月)14時30分~
2.場 所:東京地方裁判所103法廷
3.当日スケジュール:
(後 略)

10- 交渉過程が赤裸々に…西川委員長「TPP暴露本」の中身

 政府はTPPの交渉経過について、相手国との信義上の問題があるので国会(衆院TPP特別委員会にも出せないとして黒塗りの資料を出すなどしていますが、その一方で、特別委の西川公也委員長は、著書「TPPの真実―壮大な協定をまとめあげた男たち」(中央公論新社で、交渉の内側を含めて実に28章460ページにもわたる暴露本を出版する予定だったことが明らかにされました。
 
 そのゲラ刷りを入手した民進党の追及で、自民党TPP担当の石原伸晃大臣、そして当の西川議員はいま窮地に陥っています。
 
 問題が発覚してから慌てて不都合なところを書き換える、ということで済む問題ではありません。
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TPP暴露本「自分が書いた」 西川委員長の“肉声”マイクに
日刊ゲンダイ 2016年4月9日
 連日、大荒れとなっている衆院TPP特別委員会。8日も、安倍内閣のヒドイ対応に反発した民進党は途中退席している。
 
 民進党は7日に引き続き、特別委の西川公也委員長が出版する予定だった著書「TPPの真実―壮大な協定をまとめあげた男たち」(中央公論新社)について追及。出版中止とも報じられた本のゲラを示し、「西川委員長の執筆に協力した役人はいるか」などと問いただした。ところが、TPP担当の石原伸晃大臣が、「(本物の)ゲラかどうか確認できない」などと、くだらない抵抗をしたために民進党が反発したのだ。
 しかし、西川委員長が書いたのは明らかだ。民進党が退席した直後、西川委員長が、自ら認めてしまったのだ。
 
「野党が委員会室から退席したら、普通は委員長が速記を止め、マイクのスイッチも切るものなのに、西川委員長は速記も止めずに、あの本は自分が書いたと雑談をはじめてしまったのです。その声をマイクがバッチリ拾っています」(自民党関係者)
 マイクに気づかなかった西川委員長は、こう話している。
「あれは全部文書からはね。いまの新しいやつは消えているんですよ」
「自分できれいに整理したやつじゃなくて、一番古いのが出てるんですよ」
「書きなぐったやつが」
 
 要するに、民進党が入手したゲラは完成版じゃないということらしい。しかし、いずれにしろ、西川委員長が書いたのは確かだ。本には「(TPP)交渉の成否は農林水産関係の譲歩にかかっていた」などと、書かれているのだから農家は救われない。 
 
 
交渉過程が赤裸々に西川元農相「TPP暴露本」衝撃の中身
日刊ゲンダイ 2016年4月8日
 衆院特別委で7日、TPP(環太平洋経済連携協定)の承認案と国内対策を盛り込んだ関連法案の実質審議が始まった。野党側は再三、交渉経緯の記録開示を求めたものの、政府側は守秘義務を盾に説明を拒否。案の定、議論は全くかみ合わなかった。
 
  そんな中でガ然、一冊の存在が注目を集めている。自民党TPP対策委員長を務めた西川公也現TPP特別委員長が出版を予定しているとされる「TPPの真実」という本だ。政府がヒタ隠しにする交渉経過の中身が洗いざらい“暴露”されているのだから、大問題だ。
 
 「国益にかなう交渉をしたのか。過程も吟味しないと判断できない」――。民進党玉木雄一郎議員がこう怒りをあらわにしたのも当然だ。
 
  中身を審議しようにも、交渉について公開されたA4判の45ページにわたるペーパーはすべて黒塗り。交渉役を務めた甘利明前経済再生担当相は、UR(都市再生機構)をめぐる“口利き裏金疑惑”で国会を欠席中で、事務を統括した鶴岡公二首席交渉官も7日付で駐英国大使に“トンズラ”だ。
 つまり、TPPの交渉経緯や、やりとりを熟知しているマトモな政府答弁者が誰もいない。これじゃあ、いくら審議時間を費やしても無駄だ。そこで野党が目を付けたのが、西川議員の暴露本だ。
 
■各国との水面下交渉が赤裸々
 
 「28章、約460ページに及ぶ大作で、西川議員がTPP対策委員長として携わった各国との交渉経緯が詳しく書かれている。日本側と各国の要人が接触した日付や関わった人が実名で登場。鶴岡氏をはじめ、交渉窓口となった省庁担当者が『政府対策本部人物』として顔写真入りの実名で紹介されているらしい。米国のフロマン氏と西川議員の面談も詳述されているほか、ニュージーランドとの乳製品輸入をめぐる交渉の生々しいやりとりもあるようで、“西川リークス”と呼ばれています」(永田町関係者)
 
  国会や野党に対して黒塗り資料で情報をヒタ隠しにする一方で、与党のTPP特別委員長が市販本で洗いざらい記す――なんてデタラメ過ぎる。特別委で出版予定などをただした玉木議員に対し、西川議員は「答弁する立場にない」なんてトボケていたが、見逃せないのは、西川議員が本の中で日本政府の“本音”や各国との“水面下交渉”まで暴露しているとみられることだ。
「3章の中で、西川議員は『交渉の成否は農林水産関係の譲歩にかかっていた』とハッキリ書いているようです。政府・与党が交渉前に強調していた『守るべきものは守る』なんて大嘘だったわけで、実際、9章の見出しも『聖域見直しバリ会合』。14章の『オバマ来日と日米実質合意』では、『14年4月のオバマ大統領来日の1カ月程度前からアメリカは従来の原則論から譲歩すると水面下で打診してきていた』と明かしているらしい」(前出の関係者)
 
  “西川リークス”ではこのほか、TPPを取材する大マスコミの記者がウイスキーを買ってきて、西川議員らと酒宴を開くことが「恒例化していた」と書いているらしい。何のことはない。政府も与党も大マスコミもグルとなってTPPを推し進めていたのだ。
 
  出版予定の中央公論新社に問い合わせると、出版計画を認めた上で、「現在、編集作業の進行中ですので、それ以上、当社からコメントすることはありません」(編集総務部)と回答した。
 
  同社は8日、編集作業の遅れで出版日が未定となったことを明らかにしたが、“西川リークス”が安倍政権を吹っ飛ばす日も近いのではないか。