浜岡停止5年 再稼働「賛成」ゼロ 半径31キロ圏首長らアンケート

2016年5月15日・16日(二日分まとめて)

浜岡停止5年 再稼働「賛成」ゼロ 半径31キロ圏首長らアンケート

 東京新聞が、浜岡原発10キロ圏4市と31キロ圏7市町の首長に行った再稼働賛否のアンケートで、10キロ圏では再稼働を「認めない」が2市、「回答保留」が2市、31キロ圏では、「認めない」が5市町、「回答保留」が2市町で、再稼働を「認める」はゼロでした。
 
 なお、川勝平太静岡県知事は、「回答保留」で注記事項は「現状では再稼働できる状態ではない」でした。
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再稼働「賛成」ゼロ 浜岡停止5年 半径31キロ圏首長らアンケート
東京新聞 2016年5月15日
 中部電力浜岡原発静岡県御前崎市)が政府の要請で全炉停止してから十四日で五年になるのに合わせ、本紙が原発から半径三十一キロ圏十一市町の首長と川勝平太静岡県知事に聞き取り調査したところ、再稼働に「賛成」とする回答はなかった。調査は二〇一二年以降、今回を含めて四回実施しているが、過去にも賛成と答えた首長は一人もいない。中部電は今年九月に原発の安全対策工事を終えるが、原子力規制委員会の適合性審査を通っても、地元同意へのハードルは依然として高い。 (小沢慧一)
 
 「浜岡原発の審査が合格した場合、再稼働を認めるか否か」を尋ねた結果、川勝知事は回答を保留。その上で「中部電は建前で再稼働を目指す姿勢を示しているが、使用済み核燃料の保管場所がない現状では不可能。再稼働の是非をあえて判断する必要はない」と厳しい見方をした。
 中部電と安全協定を結ぶ半径十キロ圏内の四市のうち、牧之原と菊川両市長が「認めない」と回答。牧之原の西原茂樹市長は「最終処分場建設の見通しが立たず、原発事故が発生した際の実効性ある広域避難計画も策定できていない状況下で、再稼働はあり得ない」との考えを示した。
 御前崎掛川両市は「回答保留」。四月に就任した御前崎の柳沢重夫市長は「規制委の審査中のため、再稼働については議論すべきではない」とした。
 
 原発事故に備えた防災重点区域が半径十キロ圏から三十一キロ圏に広がり、中部電と新たに安全協定を締結すべく協議を続ける七市町でも、多くが「認めない」との考えだ。
 吉田町の田村典彦町長は「想定される地震震源域の真上に位置し、安全性が確保されていない」と訴えた。藤枝市の北村正平市長が「地域住民、周辺市町の同意、理解が得られない限り、再稼働はあり得ない」と答えるなど、五市町が再稼働に反対した。
 焼津市長と森町長は回答を保留しているが「福島第一原発事故の処理、原因究明が完結していない段階で再稼働を議論するのは時期尚早」(太田康雄森町長)などと厳しい姿勢を示した。
 
http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201605/images/PK2016051502100077_size0.jpg

16- 高浜原発緊急時対策所が完成遅れ 支持地盤が深く1年ずれ込み

 福井新聞 2016年5月14日
 関西電力は13日、高浜原発福井県高浜町)内で進めている1~4号機共通の事故時対応拠点「緊急時対策所」について、完成が2018年度中にずれ込むことを明らかにした。直近に示していた完成予定の17年度末から、長くて1年近く遅れることになった。理由について関電は「地質調査で支持地盤が予想以上に深かったため」としている。この日県庁で開かれた県原子力安全専門委員会で、工程表を示した。
 
 緊急時対策所は当初、計画中の免震事務棟内に置く予定で、15年度上期の完成を目指していた。しかし基準地震動(耐震設計の目安となる揺れ)の引き上げにより、耐震構造の緊急時対策所を免震事務棟から分離して建てるよう計画を変更。昨年11月の段階では、17年度末の完成としていた。しかし予想以上に工事期間が掛かることが判明し、同12月には一転して完成時期を明記できない状態になっていた
 関電が示した工程表によると、敷地を確保する工事までは当初予定通りだが、建物を建てるために行う敷地の掘削などに時間を要する見込み。敷地工事は今年3月から始まっている。
 
 また、自主的な取り組みとして建設する免震事務棟の完成時期も17年度末から18年度中に変更した。事故時の初動対応に必要な要員の待機場所や、資機材の保管などに使う施設で、基準地震動の引き上げにより、免震装置の再設計に時間がかかるという。
 関電の高浜以外の原発の緊急時対策所、免震事務棟については、大飯原発福井県おおい町)が高浜原発と同時期の完成を予定。美浜原発福井県美浜町)は、安全審査の進み具合を踏まえて今後計画するとしている。 

2016年5月15日日曜日

浜岡立地 御前崎の正副議長系 原発関連工事10億円受注

 原発の立地自治体の首長や議会の有力議員の肉親などが、原発関連の仕事を大々的に受注しているケースが問題視されることがありますが、浜岡原発でも御前崎市議会の議長と副議長の実兄が2010年から5年間で合わせて10億円余りを受注していたことが分かりました。
 
 全面停止から丸5年を経過した浜岡原発の再稼働問題に関する記事も併せて紹介します。
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浜岡立地 御前崎の正副議長系 原発関連工事10億円受注
東京新聞 2016年5月14日 
 中部電力浜岡原発が立地する静岡県御前崎市で二〇一〇年からの五年間に、同市議会の増田雅伸議長(60)の実兄が経営する建設会社が、中部電の子会社などが発注する原発関連工事を少なくとも約三億四千九百万円分受注していたことが分かった。若杉泰彦副議長(67)の実兄が社長の建設会社も一〇年度からの二年間で、少なくとも約七億九百万円分受注していた。
 
 浜岡原発を巡っては、一九七〇~八〇年代の建設の際、地元住民組織に総額三十億円余りが渡ったとする文書の存在が今月判明。同原発は十四日に停止五年を迎えるが、この五年で進められた安全性向上工事などで「中部電マネー」が市議の親族企業に流れていた。
 静岡県の工事経歴書によると、増田議長の実兄が社長を務める増田建設(御前崎市)は、中部電の子会社、中電不動産(名古屋市)発注の原発構内の倉庫新築工事など、少なくとも二十二件を受注した。
 増田議長は増田建設で〇三年まで専務取締役だったが、〇四年の市議選出馬を機に退職し、〇五年に建築士事務所を設立。今年四月に議長に就いた。建築士事務所も原発関連の受注があったことを認めている。
 若杉副議長の実兄が社長を務めるのは若杉組(静岡県掛川市)。中部電から工事を請け負う大手ゼネコン鹿島などから防水扉の工事を受注するなど、東日本大震災以降は津波対策工事が増えた。常務取締役だった若杉副議長も〇四年の市議選出馬で退職している。
 浜岡原発は3、4号機の再稼働を目指し、安全性向上工事が九月にも完了する予定で、原子力規制委員会の審査を通過した場合、地元の同意を得る上で、議員は大きな影響力を持つ。
 増田議長は本紙の取材に「再稼働可否の判断に手心を加えるつもりはない」と説明。若杉副議長は「可否の判断は支援者の声を重視する」と話した。中部電の担当者は「取引内容の詳細については控える。契約先の下請け先の選定については関与していない」とした。 (小沢慧一) 
 
 
全面停止5年 浜岡再稼働には根強い慎重論
中日新聞  2016年5月14日
◆避難経路確保など課題
 中部電力浜岡原発御前崎市)が全面停止して十四日で五年を迎える。三月末に津波対策工事の柱となる防潮堤が完成し、九月には4号機の安全対策工事が完了する見込みだ。原発再稼働を巡る環境は変化を続けるが、周辺自治体の首長や住民の慎重論は依然として根強い。 
 
 二〇一一年三月の福島第一原発事故を受け、南海トラフ巨大地震の想定震源域に立地する危険性を重視した菅直人首相(当時)が、同じ年の五月六日に浜岡原発の運転停止を中電に要請。同十四日に全面停止に至った経緯がある。
 再稼働を目指す中電は同年九月から、津波対策として海抜十八メートルの防潮堤の建設工事を開始。計画変更を繰り返しながら、四年半の歳月をかけ、壁本体が海抜二十二メートル、延長二・四キロの防潮堤を造った。
 
 (静岡)県は今年三月、過酷事故を想定した広域避難計画を公表。原発から半径三十一キロ圏の「緊急防護措置区域(UPZ)」の住民約九十四万人静岡県内の他の自治体や、関東などの七都県に避難させる計画だが、受け入れ先の詳しい市町村は明示できず、避難経路の確保など課題も多い
 地元の御前崎市では四月に市長選があった。推進派の二候補が出馬し、石原茂雄前市長の後継指名を受けた柳沢重夫さん(69)が初当選。再稼働問題が争点にならなかったため、再稼働に反対ともとれる白票を含めた無効票が前回選の倍以上の六百四十八票もあった。
 
 UPZにある藤枝市などの七市町は、中電と県との安全協定案の内容に大筋で合意したが、再稼働の事前了解については明文化されない見通しだ。
 全国的には、昨年八月に九州電力川内(せんだい)原発1号機(鹿児島県薩摩川内市)が新規制基準下で初めて再稼働してから、川内原発2号機、関西電力高浜原発3、4号機(福井県高浜町)が再稼働。だが、大津地裁はこの三月に高浜原発3、4号機の再稼働差し止めの仮処分を決定。国と司法で、安全性評価に違いが出た。浜岡原発についても、住民団体が運転差し止めを求める訴訟が東京高裁などで係争中だ。
 熊本では四月、内陸直下型で震度7を二度記録する地震が発生。今も余震が続くが、川内原発は稼働を続けている。静岡県内でも複数の活断層が確認されており、対応策の見直しが迫られている。(小沢慧一)

15- 「川内原発避難計画見直す必要ない」熊本地震受け伊藤知事

南日本新聞 2016年5月14日
 熊本地震を受け、国内の原発で唯一稼働する九州電力川内原発薩摩川内市)の安全性や避難計画に不安が広がっていることについて、伊藤祐一郎知事は13日の定例会見で、川内原発周辺では今回のような地震は起きないとの考えを示し、「少なくとも文献上ないので少々安心。緊急性は感じなくていい」と述べ、避難計画などを見直す必要はないとの見解を明らかにした。
 熊本地震では、自宅倒壊で車中泊を余儀なくされる人が相次いだ。川内原発で重大事故が起きた場合の避難計画では、5キロ以遠の住民はひとまず屋内退避することになっており、地震との複合災害時の実効性に疑問や不安の声が上がっている。