NYタイムズやガーディアン紙は安倍首相の戦争志向を批判
31- NYタイムズやガーディアン紙は安倍首相の戦争志向を批判
米紙「ニューヨーク・タイムズ」は26日付で、独自の軍隊をもち国際的により大きな役割を担う「普通の国」に変えようという安倍首相の路線は、原爆ドームに象徴されるメッセージ、すなわち、広島の慰霊碑の石碑に刻まれた「過ちは繰返しませぬから」の言葉に反している、と伝えました。
英紙「ガーディアン」も27日付で、ロンドン大学のマーティン・スミス氏の「オバマ氏が謝罪しなかったことは、安倍政権の右翼志向を推し進めるのに利用されるでしょう。そして、むしろ東アジアでの日本の軍事的役割を強化し、後押しすることになるのでないか」とのコメントを伝えています。同紙はまた、前大阪市長の橋下徹氏が、オバマ氏の広島訪問に関連して、今月12日に中・韓国民を挑発するようなツイートをしたことを批判的に紹介している。
LITERAの記事を紹介します。
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NYタイムズが「安倍は広島の平和の教訓に反している」
ガーディアンは「安倍がオバマ訪問を右翼的に利用」と本質喝破
LITERA 2016年5月29日
だが、欧米のメディアはまったくちがう反応を見せている。といっても、ナショナリスティックな立場からオバマの訪問そのものを否定しているわけではない。彼らが問題にしているのは、そうではなく、日本のリーダーのほう。安倍首相がこのオバマ訪問とまったく逆の本質をもっていると指摘しているのだ。
たとえば米紙「ニューヨーク・タイムズ」(電子版)は5月26日付で、「日本のリーダーは広島の平和の教訓をほとんど活かすつもりがない」(Japan’s Leader Has Little Use for Hiroshima’s Lessons of Pacifism)という見出しで報じた。
記事では、戦後日本が憲法9条と日米同盟のもとで平和主義をとってきたと述べ、独自の軍隊をもち国際的により大きな役割を担う「普通の国」に変えようという安倍首相の路線は、原爆ドームに象徴されるメッセージ、すなわち、広島の慰霊碑の石碑に刻まれた「過ちは繰返しませぬから」の言葉に反している、と伝えられている。
また、安倍首相が強行した安保法制や、武器輸出の推進に触れて、こうした日本の変化はオバマ政権からは歓迎されたが、同時に、安倍首相の動静はいまだ日本による占領や植民地支配の記憶が生々しく残るアジア諸国、とりわけ中国に不安をもたらしてきた、と記す。
つまり、ニューヨーク・タイムズは、オバマの広島訪問をコーディネートしたと自慢げになっている安倍首相の政治的方針は、実のところ平和憲法の根幹である9条を形骸化し、また明らかな軍事的増長を見せていることに懸念を示しているのだ。そして、そのなかで最も強い安倍批判と言えるのが、記事の最後を、市民団体「核兵器廃絶をめざすヒロシマの会」共同代表である森瀧春子氏によるコメントで締めていることだ。森瀧春子氏の父親の故・市郎氏は広島で被爆し右目を失明、戦後、核廃絶と平和活動に従事してきた。
春子氏は、オバマ大統領の広島訪問を受け入れつつも、原爆投下は誤りだったと言ってほしいとニューヨーク・タイムズに語る。そして、最も残念なのは、オバマの訪広で安倍首相までもが脚光を浴びて、広島の物語る歴史の教訓が蝕まれてしまうことだと言う。
5月27日付電子版では、ロンドン大学SOAS・ジャパンリサーチセンターのシニアフェローであるマーティン・スミス氏が英報道局「Sky News」に語ったコメントを引用し、「オバマが謝罪しなかったことは、安倍政権の右翼志向を推し進めるのに利用されるでしょう。そして、むしろ東アジアでの日本の軍事的役割を強化し、1930年代から40年代に起こったことを忘却したい、いや、否定したいと思っている支配者層を後押しすることになるのでないか」と指摘している。
〈今回のオバマ大統領の広島訪問の最大の効果は、今後日本が中国・韓国に対して謝罪をしなくてもよくなること。過去の戦争について謝罪は不要。これをアメリカが示す。朝日や毎日その一派の自称インテリはもう終わり。安倍首相の大勝利だね〉
そして、欧米メディアはこれを見抜いて、率直に報じているのだ。これは「安倍首相はよくやった」との声で溢れかえっている日本国内とは対照的だ。
この国は被爆国であると同時に、侵略国家だ。だからこそ、世界に向け、声を大にして戦争反対を発信し続けなければならない。戦前・戦中日本の無謬性を主張し続け、戦後日本の非戦の誓いを骨抜きにし、憲法や非核三原則をひっくり返そうとしている安倍政権に騙されてはならない。(小杉みすず)