講演録「新規制基準の欺瞞と問題点ー国民の安全を犠牲に暴走する原発政策」 (1)市川章人さん

講演録「新規制基準の欺瞞と問題点ー国民の安全を犠牲に暴走する原発政策」(1)市川章人さん

こんにちは。
去る3月27日に行いました 私たちの測定所3周年記念セレモニーでの
市川章人さんご講演記録の文字起こしです。
講演をいただいてから時間が経ってしまったのですが、
すでに動き出してしまった伊方原発川内原発
そして福井県美浜原発がこれから再稼動されるリスクを見据えると
とても重要な内容がぎっしり詰まっています。
10〜20回ほどに分割して随時連載させていただきます。
 
構成の読みにくい点などありましたらお許しください。
スタッフ・朝守双葉
市川章人さんプロフィール〜
京都大学理学部原子物理学専攻、日本科学者会議会員、
科学教育研究協議会会員、元京都府立高校教諭、
非核の政府を求める会常任世話人
福島第一原発事故以降、5 年間で 300 回の講演をこなす。
共著『原発ゼロへ─1から分かる原発問題』(京都民報社)、
『フクシマから学ぶ原発放射能』(かもがわ出版)、
原発放射能をどう教えるか』(京都教育センター)、
原発事故!その時どこへ?─避難計画の検証』(京都自治体問題研究所、2014)、
原発再稼働? どうする放射性廃棄物─新規制基準の検証─」(京都自治体問題研究所、2015)。
第1回
市川さんが講演活動を始められた経緯
奈良・市民放射能測定所 3周年記念セレモニー 2016年3月27日
市川章人さんによる記念講演
「新規制基準の欺瞞と問題点 ─国民の安全を犠牲に暴走する原発政策─」
日 時:2016 年3月 27 日
場 所:奈良・市民放射能測定所
講 師:市川章人さん

 おはようございます。市川です。
高校教師をずっとやっておりまして、物理を教えてますから
当然授業の中で核分裂の話をし、教科書にはほとんど載って
いないんですが原発事故の話をしてきました。
実は3.11の事故のあとですね、たまたま私の教えていた卒業生が
統一地方選挙で立候補するということで、原発事故のことを
知りたい人がいるから個人演説会で30分ほど話をしてくれ、と
いうことになりました。
パワーポイントを使ったこともなかったんですけども、とにかく
大きな紙に3枚も4枚も図を描いて用意して、個人演説会ですから
風呂屋さんの脱衣所とか神社の社務所とか喫茶店とか、
そういうところでやるわけです。そこで壁に紙を貼って、
そういう話をしました。残念ながら卒業生はそのときは当選しません
でしたが、今回京都市議選に通りました。議会の中でこれから
エースになってくれるだろうと期待しているんですが、3.11後の
その個人演説会で話したことがきっかけになりまして、そのあと
口コミで講演の依頼が多く来るようになりました。
今は残念ながら少ないんですが、やっぱり測定所が苦労しておられる
のと同じように、関心の度合いが下がってきています。
最初の頃は1日に3カ所行ったことがありました。平日は授業して、土日が全部 潰れます。定年後だから身が持たないということになって、本業の非常勤講師の時間を減らしました。・・・・・いつまで続けるんや、と元同僚から言われましたが、「死ぬまでチョークを離しませんでした」、これでいきたいなと思ってるんですが。
府立高校教組っていう組合の中でも最高齢の代議員として定期大会で
しょっ中発言させてもらっています。『組合のレジェンド』という
あだ名をもらいたいなと思っています(笑)。
【福
【地裁判断の分析を通じて】
原発事故で、本当にたくさんの人が被害に遭われました。
その不幸を我々の課題としながら、原発問題でできることをぜひやっていき
たいと思います。
パワーポイントで資料を作ってきましたが、全部お話しする時間がないので、
かいつまんでお話しさせていただきます。
原発問題で、特にどういうところに焦点をあてて考えていかなければ
ならないか、ということを更に考えました。2014年に福井地裁が大飯原発
運転差し止め判決を出しましたね。これは大変大きな反響を呼びまして、
非常に大事なことをいろいろ言っているんですが、ひとつはやはり
「人格権」は最高の価値がある、ということを高らかにうたっているという
点です。これは多くの人の感動を呼んだと思います。
もう一点は、「万が一の危険も許されない」、この観点が示されたことです。
これは、原発という技術を扱う場合に、どのレベルの安全性が求められるかと
いうことで、実は他の技術と違って原発は万が一の危険も犯してはいけない、
そういう技術なんだという結論を出しました。実はこれが、運転差し止めの
理由になるんですね。この点でですね、いろんな攻撃もあったんですが。
原発問題について、「では具体的にどこを問題にして解明するか」ということ
なんですが、これは何人かの仲間と議論しましたが、ひとつの論点は
「新規制基準そのものへの批判が重要だろう」ということです。
もう一つは、「避難計画」の問題が重要だろうという点です。
京都の自治労連の委員長で池田という人がいるんですが、彼と「じゃあ冊子を
作ろうか」という話になりました。もう一つの論点「避難計画」についての
冊子は2014年に作り、完売しました。昨年、「新規制基準」について
もっと突っ込んで解明しよう、ということで作ったのが
原発再稼働? どうする 放射性廃棄物─新規制基準の検証』です。(※)

この3月9日に、大津地裁で高浜3、4号機運転差し止めの仮処分決定が
出ました。本当に、読んでいて「我が意を得たり」とニンマリしたんですが。
これについてもいろんな意見が語られておりますが、稼働中の原発を止めた、
という画期的な快挙ですが、実は70km圏、という避難計画で避難指示が
出される予定の30km圏を超えた、そういう住民の訴えを認めたという点が、
全国でいろんな訴えが提起されていく流れをつくっただろうと思います。
3番目は人格権との関わりで、今回の決定で非常に画期的だと思ったのは、
安全性の立証責任を電力会社に求めた、という点です。これは大体、
訴えた側が立証しなければならないということで非常に困難だったんですが、
いろんなデータも全部電力会社が持っているんじゃないか、そちらが明らかに
すべきだということを示しました。これが非常に不十分だったということが
仮処分の一つの理由にはなっているんですが。
今回の仮処分命令で言っている非常に重要なことは、
「新規制基準に適合したということだけでは立証にならないよ」、という
ことを言い切ったんですね。つまり、その新規制基準そのものが問題を
はらんでいる、ということでもあります。
具体的にいうと。
「新規制基準で、どう変わったのか?」
「それに対してどうしたのか。結果、どういうふうになったのか」を
きちっと言いなさいと。そう裁判所に言われたんです。
関西電力はそれこそなめてたんですね。十分やらなかったということです。
ではその新規制基準に沿ってきちんと述べたら大丈夫だという話が出るのか。
出ない、ということも、裁判所は次に言ったんですね。それが、
「新規制基準が技術的な基準で安全性を徹底していない」と言い切ったということです。
これは後で具体的にお話ししたいと思います。
もう一点は、
「社会的な安全性についてまったく考慮していないような基準はおかしいじゃないか」
と言った点ですね。つまり避難計画の問題。
私たちがずっと言ってきた問題を取り上げてくれたということで、非常に意を強くしたんですね。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
第2回、終わります。
次回 は、【原発は本質的に危険な異質技術】。
こちらも非常なインパクトを持って、語っていただいています。
ではまた!次回をご期待ください。(スタッフ・朝守)
※ こちらの冊子を 当測定所で販売しております。
在庫わずかです。ご関心あればどうぞお問い合わせください。
井地裁、大津地裁判断の分析】