安倍改憲論は健康体を手術しようとしている気の狂った医者のようなものだ
安倍改憲論は健康体にメスを入れようとするもので 早くも孤立
それが2006年に自民、民主、公明の3党の実務者が国民投票法案をまとめたとき、第一次政権時の安倍首相が ”改憲を参院選の争点にする” と発言したことに、民主の小沢一郎代表(当時)が反発して投票法案反対に回り、審査会の設置が大幅に遅れました。
第二次安倍政権になってからも、唐突に憲法改正の発議要件を緩和する96条改正を提起したり、個人的な諮問委員会を立ち上げ憲法解釈変更による集団的自衛権の行使容認と関連法案の制定を強行するなどして、審査会の議論を停滞させました。
11日に予定していた憲法審査会が野党の反発で開けなくなり、困った与党側の審査会理事は「安倍発言は党内向け」、「20202年施行には縛られない」旨を文書化して、ようやく18日の開催を取り決めることができました。春秋の筆法をもってすれば、安倍首相こそ実は護憲派の有能な遊撃手であるのかも知れません(^○^)。
岸田外相は明確に反対を表明しました。「加憲」による改憲を主張してきた公明党の井上幹事長も、「今ただちに明記しなければ安全保障に支障がある状況ではない。これまでの自民党の憲法改正草案とはかなり違った中身なので、自民党内の議論を見守りたい」と述べました。加憲であれば何でも賛成ということではないという訳です。
9条に「加憲」し、更に高等教育の無償化を盛り込めば公明と維新の賛同は固いだろうという浅はかな目論見は外れました。
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安倍改憲論は健康体を手術しようとしている気の狂った医者のようなものだ
五十嵐仁の転成仁語 2017年5月10日
世の中には、急ぎすぎたためにかえって遅れてしまうということが、えてしてあるものです。だから「急がば回れ」という格言が、それなりの説得力を持って信じられてきたのです。
急いだために、色々な齟齬や不都合が生じているからです。 (中 略)
このところ、安倍総裁は改憲問題について自制の姿勢を示してきました。(中 略)しかし、安保法制への反対運動の高揚などもあって憲法についての論議は進まず、次第に安倍さんに残された時間は少なくなってきました。
「急がば回れ」ということで回り続けてきたものの、一向にらちが明かないというわけです。次第に焦ってきたのではないでしょうか、安倍さんは。
来年、自民党総裁に3選されても、任期は2021年までです。来年末までには総選挙を実施しなければなりません。
それほど時間的な余裕はなく、総選挙をすれば衆院での3分の2という改憲勢力が失われてしまうことは確実です。国会での発議は来年の解散・総選挙前でなければならず、国民投票を経て施行するのは何としても21年までに完了させたい、と思いつめたのではないでしょうか。
「幸い」なことに、衆参両院では改憲発議に必要な改憲勢力が3分の2の多数を占めています。しかし、この中には、条文を書き換えるのではなく必要な部分を付け加えるにとどめるべきだと「加憲」を主張する公明党と独自の改憲路線を取る日本維新の会がいます。
この両党を引き込まなければ、3分の2を確保することは不可能です。どうすればそれが可能なのかと考えた末に思いついたのが、両党の案をそのまま盗んでしまえば良いという「盗人作戦」です。
こうして、9条に自衛隊の保持という3項を加える「加憲」、維新の会が主張していた教育費の無償化を入れるという提案でした。これで公明党と維新の会を引き込めれば、改憲発議は可能だと安倍首相、ではなく総裁は考えたのでしょう。
突然、「これでやる」と言われても、「はい、そうですか」というわけにはいきません。早速、「今まで積み重ねた党内議論の中では、なかった考え方だ」「自民党の議論って何だったの、ということがある」(石破さん)、「もう少し慎重であっていただきたかった」(船田元憲法改正推進本部長代行)、「党内手続きをとっていないものを公にするときは、党内の話をやっておくべきだった」(伊吹文明元衆院議長)、「首相が思ったような日程感で『とんとん』といくとは考えづらい」(竹下亘国対委員長)などの不平が漏れてきています。
でも、今の自民党は「安倍一強」ですから。結局は「右へ倣え」ということで尻尾を巻いてしまうのではないでしょうか。
(中 略)
まるで、新しい術式での手術で実績を残したいという功名心に駆られたマッド・ドクター(気の狂った医者)のようなものです。健康体で悪いところでなくても、どこでも良いから手術しやすいところを切らせてくれとメスを振り回しながら叫んでいるようなものなのですから。
安倍1強を倒す事になるかもしれない岸田文雄の何度目の正直
天木直人 2017-05-12
9条改正は当面不要であるという自身の考えは変わっていないと。
この考えとは、岸田外相が率いる宏池会会合(2015年10月)で述べた考えだという。
そこで述べた考えとは何か。
安倍首相の改憲発言に対する明らかな否定だ。
岸田文雄の何度目の正直だろうか。
しかし、ここでいう「何度目の正直」の意味は、石破茂の「何度目の正直」で書いた意味とは正反対だ。
確かに岸田文雄という政治家は、私から言わせれば、史上最悪の外相だ。
これまでも外務官僚の操り人形のような外相は数多くいたが、これほど外務官僚の言うままの外相はいなかった。
これまでも首相の積極外交の裏でその存在がかすんだ外務大臣は数多くいたが、これほど安倍首相の外交の前で霞んだままの外相はいなかった。
しかし、今度の岸田外相の発言は、宏池会の伝統が後押しした発言だ。
重みが違う。
おりから自民党内で派閥再編の動きが活発化してきた。
私はその動きに期待している。
しかし、自民党内での安倍、反安倍の争いが本格化すれば、安倍首相はそれどころではなくなる。
その後のどの首相も、憲法9条改正問題などに関わっている暇はないからだ。
どうやら安倍首相は本当に高転びしそうな様相になってきた。
そうなれば新党憲法9条も必要なくなるではないか、という声が聞こえて来そうだ。とんでもない。
憲法9条に手をつけないまま、日米同盟が無制限に強化されていく。
米軍の日本占領は固定化していく。新党憲法9条は、まさしくそれを阻止する政党だ。
憲法9条を日本の最強、最善の外交・安全保障政策であることを内外に宣言し、対米自立外交を目指す。
その必要性は安倍首相の改憲を阻止した後にこそ、ますます高まるだろう(了)
東京新聞 2017年5月12日
公明党の井上義久幹事長は十二日の記者会見で、憲法九条に自衛隊を明記するとした安倍晋三首相(自民党総裁)の提案に関し「今ただちに何かを憲法上、明記しなければ安全保障に支障がある状況ではない」と慎重な考えを示した。
井上氏は「国の存立を脅かすような明白な危険がある場合には、武力の行使ができることは安全保障法制の議論で明確になった。それを担う自衛隊がすでに存在している」と指摘した。