佐川くんへの手紙と公益通報について

佐川くん、よかったね

だって、今度の人事異動で、財務省の理財局長から国税庁長官に昇進するんでしょ

思えば、佐川くんの前に理財局長を務めてた迫田さんも、国税庁長官に昇進したんだったよね

これは偶然でたまたまなんだよ…

官房長官ならそう言うだろうけど、偶然にしちゃ、できすぎなんだよね

だって、前の理財局長の迫田さんは、森友学園に対する国有地格安売却を決裁した人だったでしょ

そして、その後を引き継いだ佐川くんも、「森友事件」に関する国会答弁では、「森友事件」が事件でないと頑張ってたわけだから

やっぱり、それなりのご褒美があって当然…って話なんでしょ

(佐川くんは「財務省の電子データは自然に消えるようになってる」なんていうウソまでついて頑張ったもんね…)

頑張る者は報われないとね

頑張りこそがこの国の至上の美徳さ

でもさ、この国では「頑張る」ことそれ自体が賞賛されてる一方で

その中身についてはなぜか問われることがないから不思議なんだよ

ぼくが見る限りでは、悪しきことを頑張った人の方が、正しきことを頑張った人よりご褒美が多いくらいなんだよ

だって、「政府が否定する文科省文書はある」って、正しきことを言ってた人は
ご褒美どころか、権力を利用した個人攻撃まで受ける始末じゃないか

(これじゃ、正しきことを頑張る人は、なかなか出てこないよね…)

でもさ、悪しきことを頑張ると、もれなくご褒美がついてくる…一方で、正しきことを頑張ると、もれなく(社会的あるいは法的)懲罰がついてくる…なんてのは、どう考えても倒錯してると思うんだよ

正邪の倒錯…

この国では、まさにそれが起きてるのさ
だから、これからの日本を生きていく子どもたちのためにも
そして、今の日本を生きるアナタ自身のためにも
正邪の倒錯を改めようじゃないか

…なんてことを、このたびの「佐川君のご昇進」から考える次第であります…

本題…

え~、世間では、公務員がその職務に基づいて知った情報を何らかの形で外部に伝えることを「秘密漏洩」だとして、悪しきことのように捉える向きもありますが
違法な行為を告発するために情報を外部に伝えることに関しては「公益通報者保護法」によって保護されます

では、(明確な)違法行為…とまでは言えないけども、悪しきことであるのは明白な事柄に関して、公務員がその職務上知り得た情報を外部に伝えると、その行為は一切保護されないのか…と言えば、そんなことはありません

…ということを説明してくれている専門家の論考が新聞に載ってたので紹介しておきます


(耕論)脅される内部告発 光前幸一さん(朝日:2017年6月30日)

 加計学園獣医学部新設を巡り、文部科学省の職員の告発で、政府は「総理のご意向」を記した文書の存在を認めざるを得なくなった。義家弘介・文科副大臣は、告発した職員の処分を示唆する。

告発者をどう守り、社会の自浄作用をどう働かせたらよいのだろうか。

 ■公益通報、保護する具体策を 公益通報制度に詳しい弁護士、光前幸一さん

 情報をだれがコントロールするかは情報化社会ではとても重要です。政治的あるいは経済的に権力を持っている人はその権力で情報をコントロールすることができます。それに対して、経済力もなく何の権力も持たない一般市民が使える武器は限られています。
最後の武器が公益通報です。一般市民にとって、政治に参加し、社会をより良い方向に持っていくための、有力な手段が公益通報です。

 不正を告発する仕組みは社会を変えられる公器です。閉塞(へいそく)した間接民主制において、一般市民がそれを打破できる武器となります。今回、それをおこなったのは、問題に関わっていた官僚でしたが、首相官邸に比べて力が限られている点では、市民に似ています。

 文部科学省の現旧職員による今回の内部告発は、隠された文書の存在を国民に知らせ、結局、大臣が公式発表を訂正しました。まさに公益通報として保護されるべき行動です。内部の問題に精通している人による告発が、政府全体の誤りを正したのです。

    *

 今の公益通報者保護法の対象にはならない、という指摘もあります。文書があるのに「確認できない」と発表するのは、国民への背信行為ですが、犯罪ではない。犯罪の存否を基準にしている、保護法上の「通報対象事実」に当たるかというと、そこは難しい。

 しかし、公益通報者保護法の対象とならなくても、内部告発に関する判例の法理があります。内部告発で勤務先に損害を発生させたとしても、その告発が、「真実で」「公共性があり」「公益目的で」「手段が相当である」という四つの要件を満たしていれば、違法性はなくなります。2004年に保護法が制定されるより前から、裁判所はそうした内部告発を正当行為として免責してきていて、4要件は定着しています。

 文科省職員らの内部告発はこの4要件を完全に満たしています
。大臣が事実と異なる発表をしたのに政府の内部で自浄することができなかった。だから職員らは外部の報道機関に告発するしかなかった。守秘義務違反を理由に職員を懲戒処分にしても、それは無効です。萩生田光一官房副長官が「俺の名誉が毀損(きそん)された」と前川さんを訴えても勝てない。裁判所はそう判断するだろうと思います。

 3年ほど前に判決が確定した護衛艦「たちかぜ」いじめ自殺事件の例とよく似ています。海上自衛官の自殺の原因が問題となった訴訟で、防衛省は、同僚の自衛官に行ったアンケートの結果の文書が存在しないと言い続けていましたが、訴訟対応の担当官だった3等海佐がその存在を内部告発し、遺族が高裁で勝訴判決を得ました。この際、当初、防衛省は告発者の懲戒処分を予定していましたが、世論の批判を受け、「公益通報者保護の観点から保護すべき」と処分見送りを決めました。

 文科省職員らの告発は、この事件よりも、公共性、公益性が一層高い。国民の監視によって告発者を保護する必要性があります。

    *

 近年、内部告発が増えています。今回のような事件が起きると、私たちのところにも「同じような問題があるんです」と相談が来ます。これは参加型民主主義の表れだと私は思っています。

 公務員の人たちも市民として、役所という狭い組織でなく、社会全体の正義の実現に関わるという、大きな意識を持つべきです。

 内部告発する人は様々なリスクを背負っています。今の制度は「公益通報者を保護します」と言いつつ、具体的な保護措置がほとんどない。救済が認められたとしても微々たる損害賠償で、報復をした事業者の側への制裁は軽すぎる。社会は利益を得ているのに告発者だけにリスクを負わせる仕組みでは、制度が生きてこない。問題があれば自由に声を上げられる、風通しのいい環境を社会全体で作っていく必要があります。

    ◇

 こうぜんこういち 50年生まれ。判事補、判事を経て、91年に弁護士。東京弁護士会公益通報者保護特別委員会の元委員長。法廷で内部告発者の代理人も務める。

公益通報者保護法は形式上、違法行為の告発を対象としていますが

明確な違法行為とまではいかなくても、その告発が、

「真実で」「公共性があり」「公益目的で」「手段が相当である」という四つの要件を満たしていれば

その告発は保護に値する…と最高裁も認めている


そういう観点から、このたびの文科省の現旧職員たちの情報のメディアへの伝達を眺めるならば
それが賞賛されることがあっても非難される理由はない…とぼくは思います

※以前に書いたことと今回の内容とで、少し混乱する部分があるので、念のために整理しておきますと

まず、「公務員の守秘義務違反」という違法行為となるなるのは、
「漏らした情報が形式的に秘密として扱われていた(=「形式秘」)だけでなく
 実質的な秘密として保護するに値する場合(=「実質秘」)でなければならない」(最高裁判例

…という大前提がまずあります

この点、「加計事件」に関する文科省の文書やメールは省内で秘密文書に指定されていたわけではないので
「加計文書」は「形式秘」でもなく、その情報を外部に伝達しても守秘義務違反とはなりません

では、仮に、それが「形式秘」であった…と仮定すると
加計文書は秘密指定されることに合理的理由がない…どころか
それは秘密にしてはいけない情報でさえあると言えますので

仮に加計文書を形式的に秘密指定していた…としても、それは実質的な秘密(実質秘)とはいえない…ので
やはり、守秘義務違反の対象とはならない…ということに(裁判までいけば)なります

次に、今回の文書が「形式秘」ではなく「公務員の守秘義務違反」の対象にはならないにしろ、
公務員が職務上知り得た情報を外部に伝えてもええのか(それは批判されるべきではないのか)という意見に対しては

このたびの文科省現旧職員たちの外部への情報伝達は

「真実で」「公共性があり」「公益目的で」「手段が相当である」という四つの要件を明らかに満たしているので
それは保護される(=非難するような行為とちゃう)…ということを最高裁が認めている

…ということなので、いずれにしても、このたびの加計文書の外部への伝達行為は、
違法行為でもなければ、非難されるような行いでもない…ということです

(にも関わらず、非難してる人は、何かやましいことがある…と自供してるみたいなもんです)