川根真也さんの講演録(1)さいたま市の落ち葉は何ベクレル?

奈良市放射能測定室ブログより転載します。
測定所創立3年目の記念講演
 川根眞也さんによる『3.11から6年、被ばくの今と測定所の課題』  文字起こしです。
[ 川根眞也さんの講演〕
さいたま市の落ち葉は何ベクレル?
こんにちは。
今日は私の話を聞いていただいてありがとうございます。
最初に、私も身の回りでいろんなものを測っているので、これをお見せします。
さいたま市の落ち葉。私はさいたま市の中学校に勤務していますが、
浦和には「浦和」のつく名前の駅が四つあります。
浦和駅南浦和駅北浦和駅、そして東浦和駅
東浦和駅からバスでだいたい15分くらいのところです。
さて問題です。2012年5月。落ち葉を集めました。
何ベクレル/kgくらいあるでしょうか?
私の持っている線量計でずっと空間線量を測り続けて記録していますが、
そのノートは現在109冊目になりました。
私の行った場所はすべて、車で移動中も信号待ちのたびに記録をしています。

左にあります白い線量計。これはRADEXといいます。RADEX1503。
右側がTERRAのMKS-05というもので、
今はベータ線モードでベータ線だけを測っています。
さて、ビニール袋の上にRADEXを置きました。
空間線量が0.26マイクロシーベルト/時あります。
ところで0.23という数字をご存知ですか?
0.23マイクロシーベルト/時とは何の数字でしょうか。
国の除染の基準ですね。
国が、これは年間1ミリシーベルトに相当するから
これを超えたら除染をするということで、
さいたま市でも何か所もときどき除染をしています。
東京もそうです。
それを超えているんですね。
ときどき、0.45マイクロシーベルト/時ありました。
2013年に私はベラルーシに行ってきました。
そこで空間線量0.4マイクロシーベルト/時というのを測っています。
チェルノブイリ原発そのものはウクライナにあります。
その北側に拡がっているのがベラルーシ
その東側に広大に拡がっているのがロシアですね。
この三国が、チェルノブイリ原発事故で主に被災した国です。
この中でベラルーシが最も汚染されたと言われています。
その汚染地帯のゴメリにも行ってきました。
そこでは、空間線量が0.2や0.4マイクロシーベルト/時のところは廃村です。
村に住んではならないと決めています。
特に、「直ちに住民が避難しなければならない」という
40キュリー/k㎡という場所がありますが、
今使われている単位のベクレルに直しますと、
148万ベクレル/㎡、ということになります。
そこの空間線量を測りました。
本当は立ち入り禁止なんですが。
野呂美加さんは「私は何度も入ったからもういい」と言って
車から降りませんでした。
そこの空間線量が0.4マイクロシーベルト/時でした。
さて、さいたま市の落ち葉の線量は、
放射性セシウム合計5170ベクレル/kgです。
乾燥して、非常に濃縮しているわけですね。
落ち葉というのはだいたい前の年の葉が落ちたものを集めますから、
おそらく2011年の3、4、5月に青々としていたのが
乾燥したものが残っていたんだと思います。
「内部被ばくを考える市民研究会」のメンバーに、
さいたま市役所の目の前に住んでいる人がおりまして、
そのメンバーがジップロックに落ち葉を集めたものを持ってきました。
そのジップロックの上に線量計を置いたくらいで
その場の空間線量が上がるんですね。
じゃあ袋いっぱいに集めたら絶対に空間線量が上がるよ、と言って
大きなビニール袋に集めてもらった落ち葉です。
5170ベクレル/kg。
さいたま市の中心地、さいたま市役所の前がこんなレベルです。
林野庁の通達では
『調理加熱用の薪及び木炭の当面の指標値の設定について』という、
2011年11月2日付の林野庁の通達があります。
薪は、40ベクレル/kg以下でないと使ってはいけない。
木炭は280ベクレル/kg以下でないと使ってはいけない、と
いうことを言っています。
何を言いたいのかというと、
林野庁は、薪の放射性物質のうち、せいぜい2パーセント以下しか
食品に移行しない、と書いています。
しかし、さいたま市の落ち葉は5000ベクレル/kg超え。
まったく放射能汚染がない、ゼロベクレル/kgのサツマイモを、
このさいたま市の落ち葉で石焼き芋にすると、
5000の2%、つまり100ベクレル/kgの
放射能汚染石焼き芋の出来上がりです。
残念ながら、さいたま市でも
ボーイスカウトの人たちが2011年も普通に焼き芋をやっていました。
それが私たちの現状なんですね。

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1回目、以上です。
2012年に測定された落ち葉の話題でしたね。
落ち葉が1キロで5170ベクレル。。。
「さいたまラボ」さんのデータを川根先生はお見せくださいましたが、
グラフには恐ろしいほどのセシウムピークがそそり立つように
現れていました。
人々がそこで暮らしているということについて
2017年の今であっても 改めて思わずにはいられません。
川根先生と私たちは講演の日、測定所にてランチを一緒にいただいたのですが。。
川根先生は グレーの測定器TERRAを手に
どうやってベータ線モードにして ベータ線だけを測れるのかを
とても丁寧にわかりやすく教えてくださったのでした。
私はアホそのものに「どうやって空間のベータ線だけ測れるんですかあ?」などと
頭に浮かんだ疑問をそのまんま口に出してしまったのでしたが。
関東からの長旅の直後に席の温まる暇もなく
わからんやつに大切なことを語ってくださった。
そういう方の 大切な「授業」だと思います。
ご一緒に。
では、また次回に。。