子供にとって大切な10の必要」(最終回)
I. 序論
A. 「子供にとって大切な10の必要」というテーマでお話をしています。
第1回では、愛情、受容、尊敬、承認という4つのことについてお話しました。この4つの必要が満たされるとき、子供は「自分は愛されている」という感覚を持つことができます。
第2回では、関心、安心、慰めの3つをお話しました。この3つの必要が満たされるとき、子供の中に「自分は価値のある、大切な存在だ」という感覚が育ち、自分と人とを大切にできる人へと育って行きます。
B. 今日は最終回ですが、これらの必要(ニーズ)は、子供の時代に満たされることはもちろん大切ですが、すべての大人にとっても大切な事柄です。人にはこれらの基本的な必要(あるいは欲求)があるということです。
C. 親は完ぺきではありません。間違いを犯すこともあります。十分な愛を与えることができないかもしれません。心身に危害を与えることすらあります。子供が幼い時に受けるべき愛情などを受けられずに育つとき、当然そこにはその人なりの生きづらさが生まれてきます。健全な人格が形成されなくなるのです。最近の事件などの犯人となった人たちの生い立ち、育った環境などをニュースで聞いたりすると、明らかにこのような必要が満たされていなかったんだろうなあということがわかります。幼い時に、親から何を受けるのか、本当に大切なんだと思います。
II. 子供は、支えてくれる人を必要としています。(Support)
A. サポートという言葉はもう日本語になっていますが、子供は、そしてすべての人は、自分を支えてくれる人、サポートを与えてくれる人を必要としています。
B. 支えるとは何でしょうか。当たり前のことですが、支えるとは、倒れそうなときに横で支えることです。 横で、傍らで、ということが大切です。遠くからではないんです。手を伸ばして支えるというよりも、すぐそばで体をはって支えることです。
C. さらに、支えるとは、重荷を一緒に負うことでもあります。
. ケニアで、あるスーパーマーケットに買い物に行きました。レジを済ませて、妻やヘルパー(男性でした)は持てる荷物を全部持って駐車場へ向かいました。駐車場まで結構距離があったんです。最後に残った私は、一番重たい荷物を持って行く羽目になりました。缶詰などがたくさん入った大きなプラスチックの買い物袋で、普通に持っても背が低い私ですと、底が地面についてしまいました。それが重いのなんの、、、あまりに重くて、途中から引きずり始めました。ですから当然底が破れて、缶詰などがぼとぼとと落ち始めました。私はその袋を地面に置いて、先に行ってしまったヘルパーを呼んできました。一人では重たい荷物も、二人ならば運ぶことができます。
. 今は、ストレスという言葉が使われますが、まさにそのストレスも含みます。ストレス値が高い出来事として、例えば配偶者の死、離婚は最もストレスが高くなる出来事だそうです。その他、家族の死、自分の病気、家族の病気、転職、借金、子供の悩み、卒業や入学、転校、引越などがあります。重荷を担うとは、相手のストレスに敏感になることも含むといえるのではないでしょうか。
D. また、支えるとは、弱さを担うことでもあります。
. 弱さを担うとは、弱さを責めないということ。裁かないことではないでしょうか。
a) なんでそう考えるの、とか、なんでそうするの?と言わない。子供が何かしでかした時に、なんでそうするの!?と親はついつい責めてしまうことがあります。
b) 暑くなってくると、扇風機を出します。小さいお子さんがいる場合、指突っ込んだら駄目よ、と教えます。しかし、それでも突っ込んでしまうのが子供、特に男の子ですね。私もやったことがあります。息子もやりました。息子は、指先が随分切れてしまって、その後医者に行って余計痛い目に合ってしまいました。こんなときに、何でやったの、と言っても、何の意味も効果もないですね。
c) 弱さを担うとは、そういう失敗も含めて、それを受けとめることではないでしょうか。そのような失敗が、何度かは繰り返されることを忍耐し、しばらくは変わんないだろうなあ、ということを受けとめることではないかと思います。
III. 子供は、励ましてくれる人を必要としている。(Encouragement)
A. 今日の2つ目のポイントは、子供は励ましてくれる人を必要としている、ということです。
B. 励ますとは
1. 勇気を与えることです。励ますという英語の単語はEncourageですが、Enは「中に」、Courageは「勇気」という意味です。つまり励ますとは、勇気を与えること。心の中に勇気を注入することなんです。
2. 自信を与えることです。
a) エレベータ-の法則というものがあります。エレベーターは上に上ったり、下に下がったりする。そのように、人には二種類ある。まず、人を励まし、引き上げる人。持ち上げる人。相手を元気にし、強くし、前進させる人。成長させる人です。
b) もう一種類は、人を引き降ろす人です。ダメだしばかり、批判ばかり、やる気を奪い、絶対無理だと信じ込ませる人。
3. 希望を与えることです。これは、先を見せる、明るい未来を示すということです。狭くなりがちな子どもの視野を広げてあげる。大きな視野で、人生の意味や目的を与える。先があるよ、見えない部分を示してあげることです。
4. 励まし、 成長を促すことです。
* ヘンリー・ゴダードの実験:エルゴグラフという機械を使って、子供達の体内にあるエネルギー(体力)を測る実験をしました。誉めたり、励ましたり、肯定的なことばをかけたとき、子供達のエルゴグラフの数値がぐっと上がりました。つまり、元気になったということです。
逆に、批判的なことば、相手ががっかりするようなことばをかけると、子供達のエネルギーの数値が急激に下がりました。ことばには力があります。どんな言葉をかけるかが大切だということです。
IV. 3つ目は、子供は、感謝(してくれる人)を必要としている。
A. 英語ではAppreciationです。これは、(感謝するとは、、、)
B. 相手の良さを理解して、称賛することです。
C. 相手が人の役に立つ、有用であると認めること。
その人の有用性を認めるだけでなく、その人が活躍することも期待するのです。
A. 以上、3つのことをお話しました。
サポート、励まし、そして感謝です。これらの必要が満たされるとき、子供のなかに「自分は誰かの役に立てる。自分も出来る」という自信あるいは有用感が育って行くはずです。
B. 3回にわたって、10の必要を学びました。ぜひ、この10のことをどこか目に見えるところに書き出したり貼ったりするのもいいかもしれません。
C. 子供も大人でも、家族や仲間同志でこれらの必要に心を留めて、受けること以上に「私」が「与える人」となっていけるようにと、心から願います。